就業規則の作成は、HOP CONSULTINGにお任せ!相談・依頼は「お問合せ(メール)」より

心に働きかけ、行動に変化を。

5月10日はミスチルの誕生日(30周年)名言歌詞紹介ページはこちら!

【書評レビューおすすめ本】「10年先の自分」をつくる(著:工藤公康・ホークス監督)の感想

 
書評「『10年先の自分』をつくる」の表紙
この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
詳しいプロフィールはこちら

2020年6月19日にプロ野球の2020年シーズンが開幕したことを受けて…という訳ではありませんが、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスの現監督でもある工藤公康氏の著書「『10年先の自分』をつくる」という本(2013年出版)をたまたま古本屋で見つけて読んだので、その書評を紹介したいと思います。

【福岡ソフトバンクホークス関連記事】

元プロ野球選手、現・ソフトバンクホークス監督でもある工藤公康氏とは?

現役時代

工藤公康氏(以下、工藤監督という)は、1963年5月5日生まれの57歳(投稿時点)。
現役生活はなんと29年(1982年シーズンから2010年シーズンまで)で、47歳まで日本プロ野球界でプレーしています(最終的な現役引退表明は2011年12月)。
近年では絶滅危惧種とまで言われつつある「200勝投手(2004年に達成、現役通算224勝)」としても有名ですが、現役生活の中で14度のリーグ優勝、11度の日本一を経験、また3チームに渡って日本一を経験したことから「優勝請負人」とも呼ばれています。
「出身高校が愛工大名電」と言えば、イチロー選手と工藤監督の名前が思い浮かんでしまうのは野球ファンならではかもしれませんね。
【主なタイトル】最優秀防御率4回、最多奪三振2回、最高勝率4回など。実働29年、23年連続勝利は歴代1位タイの記録を持つ。

監督時代

2015年シーズンから前任の秋山幸二氏の後を受けて、福岡に本拠地を置く「福岡ソフトバンクホークス」の監督を務めています。
2015年から2019年までの5年間でリーグ優勝2回、リーグ2位3回、日本一4回という成績です。現役時代から優勝請負人と呼ばれていましたが、監督になってからもそれは変わっていないようです。
常勝ソフトバンクホークスを率いていることも関係していますが、この5年間での勝率.608と過去の名将と比較してもズバ抜けた成績を残しています(500勝以上した監督の中で、工藤監督の勝率を超えるのは鶴岡一人監督(勝率.609)のみ)。
地元福岡から応援している身としては、CSで下克上を果たし過去のリベンジを果たすなど、短期決戦にめっぽう強い印象です(実際、日本シリーズの勝率はなんと8割。2019年は球界の盟主・巨人相手に四タテ(四連勝)

)。
ちなみに、5月5日(こどもの日)が工藤監督の誕生日でその日はこれまで5戦5勝で選手(柳田選手や武田選手、周東選手など)がお立ち台でハッピーバースデーソングを歌う光景も見られます。

(※詳細は「工藤公康-Wikipedia」へどうぞ!)

著書「『10年先の自分』をつくる」について

さて、いよいよ本題(「『10年先の自分』をつくる」の書評)に移りたいと思います。

工藤監督が実践してきたこと → 自ら考え、自ら動くこと

工藤監督が本書の中で一貫して述べていることは「自ら考えて、そして動きなさい」ということです。
言い換えれば「主体的であれ」ということ。

本書の中でも「やらされる」と「やる」とでは大きく違うと述べられています。
これはプロ野球に限らず仕事でも同じことで、前向きに自ら望んでやることで、仕事の効率化(工夫)や質の向上にも繋がります。将来的にみた成長曲線も大きく変わってくるでしょう。

似たような話として、「働き方の教科書(著:新 将命)」(→書評へ)の中で、何かに取り組む時は「FUN」を持つことが大事だと述べられています。
どうせやるなら楽しみながらやって、そうした姿勢でやれば自ずと結果も付いてくるという考え方です。

いずれにしろ、言われたから、命令されたからではなく、自分のこととして捉え取り組むことが姿勢が自己の成長へと繋がることは間違いありません。

プロで長く活躍する人の特徴 → 変化を恐れない

工藤監督曰く、「1シーズンなら誰でも活躍できる」そうです。
しかし、その選手の情報(特徴や弱点等)が行き渡り、対策が取られれば今まで通りの活躍はできなくなります。
ですが、活躍した本人は、成功体験ができてしまったり、過去の栄光にしがみついたりして、「今までと同じ練習方法で問題ない」と思い込み、自らを変えられない状態に陥る選手も多いそうです。

一方で、長く結果を出し続けている人は、更に良くなるために新いことを学び、試して、そして変化していく。それを繰り返し続けられる人が、長きに渡って活躍できるという訳です。

この書籍の中でも「変化を恐るな」という言葉がしばしば出てきます。

変化には「不安」や「危機感」も大事

変わらなければまずいと思う発端は、「不安」や「危機感」だと本書では述べてあります。
工藤監督自身、「今は結果を出せていても、このまま現状維持ではいずれ打たれてしまうという『不安』が常にあった」と述べています。

「主体的に取り組むこと」もそうですが、こうした「不安や危機感を持つこと」も変化や行動を起こすための原動力となります。

人間の身体は25歳がピーク → 限界は自分が思う遥か先。常識を疑え

工藤監督がお世話になったスポーツ医学の先生曰く、「自分が限界だと思っているところは、たかが知れている。人に引き出してもらうことが出来れば、限界ははるか先にある」と仰ったそうです。

その昔、プロの世界では「人間の身体は25歳がピークであとは衰えるばかりだ」と言われていたそうで、いわゆる、「常識や慣習」「固定観念」と言ったものです。

工藤監督自身も、その常識に囚われていたそうですが、29歳の時に前述したスポーツ医学の先生との出会いをきっかけに、厳しいトレーニングを続けたことで、30代になっても筋力や50m走のタイム(6.3秒→5.7秒)も上がったそうです。また、40代になっても20代の若手選手より運動能力のある身体を作ることが出来たそうです。
こうした経験もあり、「自分があきらめない限り、限界はない」と思えるようになったそうです。

この話には2つのメッセージがあります。

一つは、「限界は自分が思うより遥か先」ということ。
そもそも限界を自分自身では掴みにくい上、自分の限界を低く見積もりがちだと思います(トレーニングなど大変できついものは余計に…)。
だからこそ、前述のスポーツ医学の先生が言うように、時には人に引き出してもらったり、自分の可能性や能力を客観的に見てくれる人を頼るのも悪くないと多います。
いずれにしろ、我々のような一般人であれば、「自分が思う限界なんてたかが知れている。限界と思ってからが本番(まだまだ先がある…)」と思った方が良いでしょう。

二つ目は、「25歳が身体のピーク説」という常識や固定観念への対応です。
ビジネスの世界でも、その業界独特の慣習や会社ならではの風習・文化があります。「常識を疑ってかかれ」と言われますが、そのためには過去にブレイクスルーした経験や常識・固定観念を疑う心を持つ必要があります。
そして、疑うためには様々なことを学ぶ必要もあります。
というのも、疑ってそれの真偽を確かめるためには「何故?」「どうして?」「その理由は?」といった疑問に対して答えを探し続けなければならず、必然的に様々な知識を学ぶことにもなるからです。

あとは、常識・固定観念に抗うには、0ベースで考える姿勢と周りに流されない意志も必要です。最初は疑問に思っていても、周りが「そういうものだよ。考え過ぎ」といった環境であれば、次第にそれに染まっていってしまうからです。

こう言ったことは常識や固定観念だけでなく、今やっている手段や方法などにも当てはまります。本当にこれが正しいのか?と疑問に思うことでよりカスタマイズされ成長にも繋がるはずです。

プロに入ればうまくなる訳ではない → 結局は本人の努力次第

なんとなく我々一般人からすれば「プロに入れば上手くなる」と思ってしまいますよね。

もちろん、アマチュア時代と比べれば、監督やコーチ、ストレーナー、グラウンドなど野球に打ち込める最高の環境がプロの世界には揃っています。

しかし、用意されているのはあくまで環境だけです。
それを活かすも殺すも本人次第という訳です。
プロに入ることが「ゴール」になってしまっている人も多いそうですが、スタートラインに立っただけに過ぎず、そのスタートラインから、レギュラーや先輩達を見ながら、自分に足りないものを見つけ何をすべきかを考え、行動していくことが必要になります。

大企業で働いているからと言って、必ずしもすごい人、尊敬できる人、仕事のできる人と言う訳ではないのと同じですね。やはり本人のやる気や努力が物凄く関係してくるものです。

プロは特殊な練習をしている → 基本の繰り返しが大事。自信に繋がる

野球通であれば「特殊な練習なんてしていない」ということは分かってらっしゃると思いますが…。

結果を出し続ける一番の近道は「基本」を繰り返すことです。
また、基本を繰り返すことが自信にも繋がります。何故なら、「自分の方が練習している」という気持ちが自信になるからです。
そして、プロ野球において「ここ一番」で勝てる選手というのは、この絶対的な自信を持っていて、「あれだけ練習をしてきたのだからと、ある種の肝が座った状態でいられる」からです。

このことは資格勉強にも言えます。しっかりと勉強を積み上げてきた受験生は、「これだけやったんだから、何が出題されても大丈夫。仮に知らない問題が出ても私が分からなければ、他のみんなも分からない」と腹が据わっているものです。

それ以外でも、例えば会社でのプレゼン発表でも、しっかりと準備をし予行演習や想定問答を準備しておけば、本番でも落ち着いてこなすことが出来ます。
特別なことをやるのではなく、成果を出すために必要なこと(しっかりとした準備)を愚直にやることが自信となり成果に繋がる訳です。

監督・コーチの愚痴を言う選手で活躍した姿を見たことがない → プロである以上やることは変わらない、結果を出せ

監督やコーチについて愚痴を言う選手というのは、監督やコーチがいい戦い方やいいアドバイスをしないから活躍できないと言っているのと同じことなのだそうです。

プロである以上、監督やコーチが誰であれやることは変わりません。
それは「結果を出すこと」です。
そして、結果に拘るということは自らが責任を取るということでもあります。

あなたがサラリーマンではなく、本物のビジネスマンであれば結果を出すことにこだわるべきです。
「社長が…、上司・部下が…」と嘆くのではなく、どうしたら結果が出せるかということを突き詰めなければなりません。
だからといって、社長や上司は関係ないかとそういう訳でもありません。
何故なら、ビジネスの世界はプロ野球のように「結果」が分かりやすいものばかりではないからです。
営業の結果は「営業成績(売上や契約件数等)」かも知れませんが、職種(経理・管理・人事、事務)によっては分かりづらいものもあります。
だからこそ、自分の役割(自分が何をやらなければならないか)、或いは会社として何を期待しているのかをハッキリさせてあげるのも社長や上司の役割です。

モチベーションを高めるには → 監督の意図をしっかり選手に伝える(具体的な指示や役割を示す)

工藤監督は試合前に「今から戦う試合がどれだけ大事か」を語っても意味がないと言っています。何故なら、選手自身もそれは分かっているからです。

それよりも、今日の試合をいかに戦うか具体的に話す方が迷いもなくなりモチベーションも上がると述べています。

例えば、「こういう展開になったらバント(スクイズ)もあるよ」とか「相手が良い投手だから狙い球はこれでいこう」「終盤、代打で出すかもしれないから準備をしておけ」と言った具合です。
選手も、この試合での方針や具体的な場面を想定しておくことで動きやすくなります。
本書では「監督の意図が選手に伝われば選手のモチベーションアップに繋がる」と述べています、これは一つ前の見出しの中でも触れましたが、社長や上司が、部下に対して、具体的な指示や役割を示すことと同義でもあります。

欠点を論う(あげつらう)よりも → 自分で足りない点に気づき、欠点を超える何かを生み出す

本書の中で、ドラフト1位指名された某選手が伸び悩んだ要因の一つが、マスコミがその選手のビッチングフォームの欠点を大きく報じられたことにあると書かれています。

長所短所、美点欠点。それは考え方次第なところがあります。

例えば、「ストレートがシュート回転する」
これを「ストレートは本来真っ直ぐ進むものだから、意図せずシュート回転するのは良くない」と捉えるのか、「シュート回転をツーシームと考える」かどうかで全然違ってくると言った説明があります。
ものの見方、考え方を変えることで短所を長所(のように)考えることも出来ます。人間で言えば「神経質・細かい人=慎重・丁寧な人」と考えるかどうかと同じことです。

その中で、「否定」から入ると、それまでの長所を消すことになり、意味のあることではないと述べられています。

人の可能性を広げるには、「あれはダメ、これはダメ」と否定することから始めないことが大切です。
ピッチングフォームに関して言えば、悪いと思って指摘していることが実はパフォーマンスを発揮できている要因である可能性もあるからです。
つまり、育てる側が修正してあげているつもりでも、そこに意識を向けすぎると結果的に成長を妨げることにもなるからです。

だからこそ、他人が見つけた欠点を修正するよりも、自分で自分の足りない点に気づき、どうすれば良いのかを考え、行動する方が大切です。
(もちろん、長期的に見て他人が指摘した欠点を改善した方が良い場合もありますが…)

だって教えてもらっていない → □+□=□

基本(1+1=2)が大事

「だって教えてもらってないし…」
本書に載っていた言葉です。
いるんですね、プロでも。
「教えてもらっていない」と言い訳をする選手が…(ちょっと吃驚でした)。
この言葉の裏には、決まった方法でなければ、目的が達成できないと思うから、誰かにその方法を教わらないと何も出来なくなってしまうという意味が込められています。また、仮に教えてもらったとしても、自分で工夫したり、改良したりしようとしないとも言えます。

さて、見出しにある
「□+□=□」

当HPの投稿記事を読んだことがある方は、上の計算式を見てどこか既視感を覚えた人もいるかも知れませんね。実は、元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏の講演会の中で「2=□?」という計算式が登場しています。

教育関係のCMでも似たようなことが謳われていましたが、日本は「1+1=□」という教え方で答えは一つ。
一方で、欧米は「□+□=5」という教え方なので、答えは複数あります。

何が言いたいかと言うと、日本は「こうしなさい、あれをしなさい」と言う教え方で、欧米は、答えを導き出すプロセス(過程)が複数あるので、自分なりの方法や答えを見つけることができるし、そうしたトライアンドエラーに慣れていると言うことが言えます。

そして、工藤監督の言う「□+□=□」が究極系だと思います。
これは、プロセスも一つと言う訳でなく、正解が一つと言う訳でもないことを表しています。

人間は一人一人違う生き物なので、プロセスも答えも違います。従って、プロセスも答えも自分で考えさせ、作り出させると言うことです。
冒頭の見出しで述べた「自ら考え、自ら動くこと」の計算式版とも言えます。

ちなみに、落合博満氏の講演会でも工藤監督が仰ることと似たような話があります。例えば、現役時代名選手だったコーチの練習方法やアドバイスが、そのまま現役選手に当てはまる訳でないし、仮にコーチの考え方と違ったり、コーチの言ったことに従わなくとも、結果が出ればプロセスは問わない。但し、本人が自分で考えることをやめてしまうような指導法はダメだと言ったことが語られています。

新人の鼻っぱしをへし折る → それを乗り越えてきた者がプロであり生き残る

ドラフトで指名された新人は鼻高々(鼻が伸びた状態)で入ってきます。

何故なら、ドラフト下位指名であっても、スカウトからは「将来の四番候補として」「先発ローテーションに入れる」といった具合に高い評価ばかりを聞かされて入ってくるからです。

しかし、入団1、2年目に味わうのはプロ野球界という社会の厳しさです。
伸びていた鼻はことごとく折られる訳です。
(入団1年目から活躍した西武の松坂選手や清原選手などは例外と言えます)

鼻をへし折られ、失意のどん底に落とされ、それでも自分でなんとかしようとする精神力とこれまでの成功体験を捨て何でも貪欲に取り入れよう、吸収しようとする選手こそがプロで生き残ると言う訳です。

これはプロ野球だけでなく、我々ビジネスマンにも当てはまります。

上記書評の中でも述べていますが、最近の若者は子供のままの自己愛を引きずり根拠なき万能感を抱いたまま入社してきます。
これは漠然たる自己愛をもち、どこかですぐにでも輝かしく活躍できると思っており、うまくいかない場合は他人(会社や上司・同僚等)のせい、仕事が合わないからだと思ってしまうような傾向のことを言います。

ですが、そうした万能感を抱いていても、やはり社会は厳しいものです。
実際には理不尽なことも起こりますし、仕事が思うようにいかず叱られることもあります。
そうしたときに、なんとかしてやろう、見返してやろうと思えるかどうかと言うのは非常に大事なことです。
フォローは必要だと思いますが、「あえて厳しく接すことで、新人の足りない部分を認識させたり、自分自身を見つめ直す機会を与えること」もOJTの上では大切だと思います。「□+□=□」で触れた通り、直ぐに答えを教えるのではなく、自分で考えさせることも忘れてはいけません。
でも、厳しいとは言っても、プロ野球の世界よりよっぽど優しいと思いますけどね。

工藤監督のチーム論(組織論)

書き始めるとキリがないので、簡単に紹介しておきます。
野球に限らずチームスポーツではフォア・ザ・チーム(for the team)という考えがあります。

フォア・ザ・チームに関して工藤監督は、以下のように述べています。

・チームワークよりも、個のプレーが大事。
・個のプレーとは、自分勝手なプレーをするのではなく、自分が何をすべきかを自覚し最善の結果を残すために個々人がしっかりプレーすること。
・チームワークよりも個々が何をすべきかを理解していることの方が大事。それこそが本当のフォア・ザ・チームである。

チームの一人一人が勝つために何をすべきかを考え、実践するチームこそが強いチームであるという訳です。

2020年2月にご逝去した元プロ野球選手でヤクルトや阪神、楽天で監督を務めた野村克也氏も「(フォア・ザ・チームとは)『チームのために自分はどのように役立てばいいのか』を常に念頭におき実践すること。それができる人間が多ければ多いほど、組織は強くなる」と述べています。
ちなみに、ラグビーなどで使われる「One for all.All for one.」は「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」という意味らしいです。

また、プロ野球における組織論について以下のように述べています。

個人の成績を伸ばすことだけを考えている人が一人でもいればチームは絶対に強くならないし、どれだけ個人評価をあげることに専念しても、チームが優勝し日本一にならなければ評価されない世界である。
したがって、個人成績が重視されるチームは良くならない(強くならない)と述べています。

これはビジネスの世界でも当てはまるものだと思います。
何故か、営業は稼いでいるから他の職種(経理、人事・事務)よりも偉くて、給料が良いのが当たり前という考え方があります。
私は営業も管理も経験したことがあるので、この考えに物凄く違和感を覚えます。
そもそも、企業活動とは、会社の理念のもと、個人がその役割(営業、経理、人事等)を果たし、共通の目標(プロ野球で言えば日本一)を達成することです。
そこに職種の貴賎はないはずです。
営業が稼いでいるから偉いと言いますが、では、営業が経理や人事の仕事をできるのですか?営業は全く経理や人事等のお世話になっていないのですか?彼らの持つ専門知識で助けもらったりしていませんか?
つまり、会社における役割の違いがあるだけで、会社に貢献しているという点ではみんな同じなのです。

ちなみに、元・ZOZOTOWN社長である前澤氏も「全社員基本給は一律で、ボーナスも全員同じ」「いい時はみんなで分け合い、悪い時は共同責任」という考え方で経営されていますので、私の持論とも非常に近いものがあります。

さて、ここで経営者の皆様に質問です。
・あなたの会社の人事評価はどのようになっていますか?
・売上高のような目に見える成績ばかりが判断材料となって、評価していませんか?
・外回りをして汗を書くから頑張っているなと思うのですか?であれば、他の従業員は頑張っていないのですか?
・きっとあなたが気づいていないだけで、会社として従業員に仕事を与え、その仕事を求めるレベルでこなしているのであれば、例外なく全ての従業員が会社の目標達成に貢献しているはずですよ。

おまけ:タイトルだけを見ると自己啓発本だが、人を育てる意識が高い工藤監督の著書なので人材育成、組織運営の面でも十分役に立つ

メジャーリーガー・城島健司選手を育てたのは工藤監督

工藤監督がダイエー(現・ソフトバンクホークス)時代に、のちにメジャーリーガーとなった城島健司氏を、一人前のキャッチャーに育てたというのはファンでなくとも知っている有名なお話です。

リアルタイムで見ていた世代の人であれば、グラウンドやベンチで、工藤監督と城島選手が「配球に関する激論(?)」を交わしている様子をテレビで何度も見た覚えがあるのではないでしょうか?

具体的には、
工藤監督:「なぜ、あのボールを要求したのか?」
城島選手:「初球は外角からはいるというセオリーだから」
こんな会話がなされた時には、「そんな単純な理由でなげさせるな」と伝えていたそうです。なぜなら、データを見ると、そのバッターは初球の外角(アウトコース)をほとんど強振するかもしれないからです。そうなると「セオリー」だからという理由は通じなくなります。
だからこそ、試合で学ばせ、考えさせるように指導したとのこと。そのように仮説検証を繰り返すことがキャッチャーとしての糧になり、リードする際の引き出しも増えていったという訳です。

ちなみに、本書では城島選手について「彼(城島選手)の成長は周囲が想像する以上に早かったと思いますが、それは「性格」による部分が大きかった。彼は反骨心を行動に変えられるタイプで、「1を言われたら、3くらい覚える」ようになった。怒れば怒るほど伸びるタイプで、かなりきついことを言ってもすぐに返してくるので心置きなく怒鳴れる。だから、私も真剣に向き合った」と述べています。ちなみに、Wikipediaには「僕(工藤監督)が育てたんじゃなくて彼(城島選手)が自分で育った」「どれだけ厳しく叱っても食らいついてくる強靭な精神力が彼にはありました」と言うコメントが載せられていました。

この話を聞いて、この工藤監督と城島選手の(師弟)関係は、下記関連記事の中でも触れている「叱られ方が上手い部下、叱りやすい部下」が良いという内容に合致するなと思いました。

工藤監督が言うように、城島選手自身が貪欲に学ぶ姿勢があったということは勿論ですが、お互い表向きは色々言っていますが(笑)、心の奥底ではしっかりと信頼しているのだと思います。

工藤監督の苦言をしっかり受け止めつつ、自分の意見もいうという、まさに侃々諤々かんかんがくがくの議論が出来ていたという訳です。そうしたことは信頼関係がなければ出来ないはずです。現に2020年シーズンから、城島選手がソフトバンク球団会長付特別アドバイザーに就任していますが、キャッチャー・甲斐選手に「アドバイスをしてあげてくれ」といまだに全幅の信頼を寄せているようです。

城島選手だけではなく、若手選手を連れて自主トレをしたりと、現役時代から「人を育てよう」とする意識が強かった工藤監督の著書なので、自己啓発のみならず、人材育成、組織運営(チームマネジメント)という観点からでも、十分役に立つ本だと思います。

まとめ

本書冒頭の「はじめに」の中で工藤監督が言いたいことの全てが詰まっている

自ら考えて、行動し、どういう結果になったのか。
うまくいったのか、失敗したのか。
失敗でも成功でもなかったのか。
それが、その先にどうつながったのか。

成功から、自信につなげていったのか。
失敗から、謙虚さに気付き、学んでいったのか。
失敗でも成功でもないところから、工夫することを覚えていったのか。

答えのないものに答えを出していくことが、大きな成功へとつながっているように思う。

「10年先の自分がどうありたいか」で今すべきこと、
1年後、2年後、3年後の自分が見えてくるように思う。

何度つまずいても、何度転んでも、どんな壁にぶつかっても、
その経験が自分の肥やしになる。

前を向いて歩いていこう。
目の前に道はなくても、
自分の歩いたあとには道ができているのだから

引用:「『10年先の自分』をつくる」-はじめに-より

工藤監督は、現役時代の1986年に清原選手と渡辺久信らと共に「新人類」と言うワードで流行語大賞(金賞)に選ばれています。
新人類とは、「当時(1986年)の若者を「従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている」と規定し、否定的にも肯定的にも(要するに、都合良く)扱った言葉とのこと(Wikipediaより)。
それに伴う、逸話は沢山あるようで、優勝時の胴上げに混ざらず、バックスクリーン側を向いてバンザイのジャンプしたり、「優勝するためにやってるわけじゃない。来年投げられなくなったら終わりでしょ」と言った発言をしたりと、やはり一線を画していたようです。

ですが、そうした工藤監督だからこそ、従来のやり方や常識に囚われず、現状に満足せず、自ら考え次々と新しいことに挑戦したり、スポーツ医学の専門家と対等に話せるように筋肉や身体の仕組みを学ぶと言ったことが実践出来たのだと思います。そうした結果、実働29年(歴代1位タイ)で、14度のリーグ優勝、11度の日本一、投手として224勝という偉大な記録が打ち立てられた訳です。

以前、講演会の内容を紹介した「落合博満氏」と同様に、現役としても監督としても活躍している工藤監督の著書です。野球ファンの方はもちろん、本の内容に興味のある方は、手に取って頂ければと思います。読みやすい本なので、あっという間に読み終えることが出来ると思います。

【福岡ソフトバンクホークス関連記事】

この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© HOP CONSULTING , 2020 All Rights Reserved.