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【書評レビュー・カズレーザー推し本】ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治)要約と感想

 
書評「ケーキの切れない非行少年たち」の表紙
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HOP CONSULTING
人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)、経営コンサルタント(中小企業診断士)。福岡生まれだが熊本育ちのため、性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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2019年7月の発売以降、売れ続け今や45万部を超えるベストセラーとなっている「ケーキの切れない非行少年たち」

一時期、売上ランキングでも上位に位置していましたし、割とインパクトのあるタイトルなので皆さんも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

この本は、児童精神科医である著者の宮口幸治(みやぐち こうじ)氏が、精神科医病院や医療少年院での勤務体験をもとに書かれたものです。

なお、少年院などの矯正施設では女性も少年と呼ぶことから、全て「少年」という表現にしております(本書の形式に倣った形)。

「ケーキの切れない」とはどういうことか?(まずはこの図形をご覧下さい)

著者が医療少年院でショックを受けたことは、

・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない

といった少年が大勢いたことだったそうです。

本書で紹介されている、具体例を以下に紹介しておきます。

まずは本書のタイトルにもある「ケーキ」の話からです。
以下の絵は、医療少年院の子たち(少年ら)に、「ケーキを3等分なり、5等分にするにはどのように切ればよい?」という質問をして、彼らから出た答えです。

3等分の図
5等分の図
(著書に例示されている図形をパワーポイントを使って写したもの)

もちろん、ただ単に3個、5個に分ければ良いということではなく「等分」に切らなければ質問の正しい答えにはなりません。
この絵を見て、「まさか!?」「冗談だろ?」と思う方も多いと思いますが、著者が実際に体験した話をもとに再現したものだそうです。

ちなみに、それぞれの答えですが、3等分は、「ベンツのマーク」みたいな切り方で、5等分は「五芒星」の先端から中心に向かって切る切り方です。

世の中のことが全て歪んで見えている?

他にも医療少年院の子に、複雑図形を見ながら、紙に写すという課題をやらせたときに少年が描いた絵が以下のものです。

Rey複雑図形検査の図
(著書に例示された図形をパワーポイントを用いて写したもの)

上図のお手本となる図はレイ複雑図形検査に用いられる図で、それを少年院の少年が写したものが右側の図となります。

右側の少年が書いた図形見るとを「どうしてそうなった!?」と首を傾げてしまう方も多いと思います。

この課題は、個人のセンスや独創性を問う美術・芸術と言ったものではなく、目の前に出された図形を同じように写し取る問題な訳ですから、少年の書いた絵を見て、著者は「世の中のこと全てが歪んで見えている可能性がある」と思われたそうです。そして、これが彼の非行の原因になっているのではないかと直感したそうです。

小学生レベルの計算問題が出来ず、漢字も読めない

こうした課題の他にも、少年らに簡単な計算問題を出したそうです。

例えば、

Q1:「100-7=?」
Q2:「1/2+1/3=?」

と言った問題です。








さて、答えはお分かりの通り、

Q1:「93」
Q2:「5/6」

となります。

ですが、少年らの答えは、

Q1の場合は、
「993」、「3」、「107」と言った答えで、正しく答えられたのは半数ぐらいだったそうです。
「93」と正しく答えられた少年らに「さらにそこから7を引くと?」と尋ねると、ほとんどの方が答えることが出来なかったそうです。(尚、答えは「86」)

Q2の場合は、
やはりというか想像通り、「2/5」という答えが返ってきたそうです。

実はこうした計算問題だけではなく、読み書きの問題もあり、少年院での教材は、「漢字が読めないことを前提」に全て「ふりがな」が振ってあるそうです。そして、漢字や計算ができない少年らには、施設内で漢字ドリルや計算ドリルをさせるそうですが、多くの場合、小学校低学年レベルからのスタートで、最初から小学6年レベルの計算ができればかなり優秀だそうです。

非行少年に共通する特徴(5点セット+1)

こうした課題や面談などから、著者は非行少年に共通する特徴として「5点セット+1」を紹介しています。

【非行少年に共通する5点セット+1】
(1)認知機能の弱さ・・・見たり聞いたり想像する力が弱い
(2)感情統制の弱さ・・・感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
(3)融通の利かなさ・・・何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
(4)不適切な自己評価・・・自分の問題点が分からない。自信がありすぎる
(5)対人スキルの乏しさ・・・人とのコミュニケーションが苦手
(+1)身体的不器用さ・・・力加減ができない、身体の使い方が不器用

一般の人が「非行少年」という言葉を聞いてなんとなく想像してしまう特徴は、(2)「感情統制の弱さ(ex.すぐキレる)」や(+1)の身体的不器用さ(ex.力加減が出来ない)当りではないかと思います。

認知機能とは?

「5点セット+1」の中で、分かりづらいと思うのが「認知機能」だと思います。本書の中でもかなり重要な部分(機能)なので、ここで説明しておきます。
認知機能について、本書では以下のように書かれています。

「認知機能」とは、記憶、知覚、注意、言語理解、判断、推論と言ったいくつかの要素が含まれた知的機能のこと。
人間には五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を通じて外部環境から情報を得ています。そして、得られた情報を整理し、それをもとに計画を立て、実行し、様々な結果を作り出して行く過程で必要な能力が認知機能です。
つまり、認知機能は、受動・能動を問わず、全ての行動の基盤でもあり、教育・支援を受ける土台でもある

引用:ケーキの切れない非行少年たち(P.49)

イメージとしては以下のような感じです。
→図を挿入(p 51)
(本書掲載内容をパワーポイントで再現)

この図から分かる通り、もし五感から入った情報が既に間違っていたり、受け取った情報を誤って整理したり、情報の一部しか受け取らない(意図的にしろ無意識にしろ)ような状態になっていたら、不適切な行動や結果に繋がってしまう恐れがあるということです。

非行少年らが見せた認知機能の弱さ

五感の中でも、「見る力」「聞く力」、そして「見る力、聞く力」を補う「想像する力」は大切です。
何故なら、学校生活では五感のうち、「見る」「聞く」で情報を伝えることがほとんどだからです。(ex.授業を聞いたり先生の言うことを聞いたり、教科書を見たり、黒板を見たり)

例えば、「聞く力」が弱ければ、先生の言っている言葉が聞き取れなかったり、言ってることが理解できないことになります(授業の理解度にも影響するでしょう)。また、聞き取れないからと何度も聞き返せば先生や周りから何か言われるのが嫌と思うようになり、ついつい分かったフリをしてしまいます。
そうなると、先生が求める結果(行動)とは違う結果(行動)に繋がってしまい、あいつは「話を聞いていない、やる気がない、ふざけている」と言った評価になりかねません。

また、「見る力」が弱いと、文章の読み飛ばしや漢字が覚えられない、黒板が写せないといった学習面の弱さが生じることに繋がります。加えて、「見る力」「聞く力」を補う「想像する力」が弱ければ、それらを修正することもうまくいきません。

また、読み書きといったものだけではなく、見る力や聞く力、想像する力と言った認知機能が弱いと、相手の表情や不快感が読めない、その場の雰囲気が読めない、話の背景が理解出来ず会話についていけない、会話が続かない、行動した先のことが予想できない、と言ったようなことが起こり得ます。周囲の状況や空気を読めないことで、自分は周りから嫌われている、自分だけ損をしていると言った被害感や不公平感を募らせることにもなるそうです。
(詳しい具体例は本書に載せてあるのでそちらを参考にして下さい)

つまり、冒頭で紹介したように著者が驚いたこととして列挙した

・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない

と言った事項は、まさに「認知機能の弱さ」から来るものと言えるでしょう。

想像する力の弱さは不適切な行動につながる

見えないものを想像する力の中で大切なものに「時間の概念」があるそうです。
時間の概念が弱い子供には、「昨日」「今日」「明日」の3日間くらいの世界で生きているそうです。こうした子供は、具体的な目標を立てるのが苦手だそうです。

そして、目標が立てられなければ、人は努力しなくなります。

努力しないとどうなるのでしょうか?
一つは、努力しないと成功体験や自己達成感が得られないため、いつまでも自己評価が低い状態から抜け出せないとのこと。
もう一つは、努力しないと「他人の努力が理解出来ない」ことです。

極端な例かもしれませんが、友人(A)がお金を貯めてゲームやおもちゃを買ったとします。
それを見た人(B)は、「いいな。自分も欲しいな」と思うかもしれません。
そこで、Bもお金を貯めて同じものを購入すれば良いのですが、他人の努力が理解出来ないと、簡単に盗んでしまったりするのです。
(私も、小さい頃にプラモデルが流行っていて、自分の部屋に飾っていましたが、遊びに来た友人に盗られたことがあります。帰った後、「あれ?おかしいな。プラモデルがない…」と気付いたのですが(勿論、後で返してもらえましたけど)。そのとき、友人もやることが、短絡的だな、普通盗むか?バレるだろ?って思ったものです。)

想像力が弱いと「今これをしたらこの先どうなるだろう」と言った予想も立てられず、その時が良ければそれでいいと、後先考えずに周りに流されてしまったりするのです。

つまり、認知機能の弱さは、勉強が苦手ということだけではなく、様々な不適切な行動(犯罪行為含む)に繋がる可能性があるということです。

計画が立てられない、見通しが持てない

「あと先のことを考える力」は計画力であり、「実行機能」と呼ばれるそうですが、この機能が弱いと、なんでも思いつきで行動しているかのような状態になるそうです。
実行機能が弱いと、例えば、「一ヶ月後までに10万円用意しなければならない」という状況になった時、普通であればアルバイトをしたり、親族から借りたりと言った方法が思いつくと思いますが、「どうしてそんな馬鹿なことするのか」と思いたくなるような「強盗する、騙し取る」と言った非合理的な方法を選んでしまう訳です。
そうした(強盗や騙し取った)後、自分がどういう状況に陥るか、という視点が欠落していて、まさにその場の思いつきで行動していることが分かります。(そもそも、普通なら犯罪を犯すという考えはしませんし、仮に考えても、強盗や詐欺みたいな方法がそう簡単に成功する訳ないと判断しますからね)

非行少年たちの反省以前の問題

事件を起こした加害者(犯人)が、実は前科のある再犯者だったと報じられるニュースを見かけることがあると思います。

そうした時に、「刑務所なり少年院なりで、再犯防止のための教育を受け、自分の罪を反省したから、出所できたんじゃないの?」と思う方も多いと思います。

本書では、非行少年らに行う矯正教育の問題点にも触れています。

著者曰く、まず、更生するためには、自分のやった非行としっかりと向き合うこと、被害者のことも考えて内省すること、自己観察などが必要になるということですが、そもそもそうした力がないので、反省以前の問題となっているようです。

例えば、性加害者への治療プログラムの根幹となっているものに「認知行動療法」と呼ばれるものがあるそうです。これは、思考の歪みを修正することで適切な行動・思考・感情を増やし、不適切な行為、思考、感情を減らすことや対人関係スキルの改善などを図る治療法の一つです。
考え方を変えることで、より好ましい行動につなげていく認知行動療法ですが、あくまで「認知機能という能力に問題がないこと」を前提に考えられた手法です。認知機能に問題がある場合、効果ははっきりとは証明されていないそうです。

認知機能が弱い少年に矯正教育を行っても、そもそも教材や被害者の手記の文字をきちんと読めないかもしれませんし、読めても意味がわからないかもしれません。また、異なる理解をしている可能性もあります。
つまり、日本語の分からない外国人に、延々と日本語で語りかけているようなものです(逆も然り)。

矯正教育で反省を促す前段階として、何が悪かったのかを理解できる力があるのか、これからどうしたら良いかを考える力(計画力など)を確かめる必要があり、認知機能に問題があるようであれば、本人の認知力を鍛えなければ矯正教育の効果がないという訳です。
こうした骨折り損のくたびれ儲けのようなやり方では、折角一定の効果があると証明されている認知行動療法を行っても無駄に終わってしまう訳です。
全然反省をしていないのに口だけは反省したと言って、少年院から出てきてしまい、またしばらくすれば再犯をするようなループ状態を作ることに繋がってしまう可能性もあります。

障害があることに気づかれない子供たち

【ここからは少々センシティブな内容を含み、また、若干内容を割愛しているので、詳細が気になる方は本書をご一読下さい】

ここまで「認知機能」の重要性を中心にまとめてきました。

では、「認知機能に問題がある」というのはどういう子供たちなのでしょうか。
本書では、発達障害や知的障害を持った子供たちが該当すると述べています。

著者曰く、病院を受診している発達障害や知的障害は恵まれた環境にある子供といえます。その一方で、問題があっても病院に連れてこられず、障害に気づかれず、学校生活が上手くいかず、非行にはしり加害者となり少年院に入って初めて「障害があった」と気づかされるという現実もあるそうです。

また、障害があることに気づかれないことにも様々な原因があります。
例えば、小学校で問題となるような子供の振る舞いに以下のようなものがあります。

(本書より一部抜粋)
「集団行動が出来ない」
「集中力がない」
「忘れ物が多い」
「嘘をつく」
「人のせいにする」

皆さんも、自分自身や友人などの言動を振り返ると、多少なりとも該当しそうな項目があるのではないでしょうか?
実は、こうした項目は、普通の学校で困っている子供たちの特徴でもあり、非行少年たちの小学校時代の特徴ともほぼ同じなんだそうです。
つまり、少年院に入る少年たちが折角出しているサインも、普通の小学校の子供たちが抱える問題と類似しているため、十把一絡げとなってしまい(障害があることに)気づかれにくいということが言えます。

気づかない教師が悪いのではなく、一番身近な親、働く場(社会)でも気づかれないのです。社会での例を挙げると「言われた仕事がうまく出来ない、覚えられない、職場の人間関係がうまくいかない」などの問題を起こすため、非行に理解はあっても発達障害や知的障害についての十分な理解がない雇用主から叱責を受け、嫌になり辞めてしまうといったことがあります。

知的障害と判断される基準(IQ値)の問題

ついで、発達障害や知的障害という言葉から、「IQ検査、知能検査」を連想さる方もいると思います。

本書の内容によれば、現在、知的障害は一般的にIQが70未満で、社会的にも障害があれば診断されるそうです。

しかし、1950年代の一時期、「知的障害はIQ85未満とする」とされたことがあったそうです。IQ70〜84は現在では「境界知能」と言われる範囲にあたり、この定義に従うと知的障害と判定される人が全体の16%くらいになり、あまりに人数が多過ぎる、支援現場の実態に合わないなど様々な理由からIQ85未満からIQ70未満に下げられたそうです。

境界知能とは…
ネット調べ(発達協会HP内、石崎朝世氏の記事)によると「明らかな知的障害とはいえず、環境を選べば、自立して社会生活ができると考えられるが、状況によっては理解と支援が必要なレベルである」と言われるそうです。

大切なことは知的障害のIQ基準が変わったとしても、IQ70〜84の子供たち(境界知能の子供たち)は確かに存在するという事実です。

ちなみに、知能分布から判断するとおよそ14%いることになるそうで、1クラス35名で考えると約5人いることになり、クラスだと下から5人程度はかつての定義なら知的障害に相当していた可能性もあったということです。

知的障害者の数は平成30年度版の障害者白書で108万人程度いるとされていますが、平成25年は約55万人だったそうです。つまり、この5年で倍に増えたことになり、知的障害に対する認知度が高まったと言えます。
その一方で、依然として「支援が必要なのに気づかれていない知的障害者がまだかなりの割合でいること」が想定されます。

この他にも気づかれない要因として、「集団式のIQテストで実際のIQより高く見積もられてしまう可能性」なども指摘されています。
(集団式IQテストでは、検査の特性もあり、正式な知能検査(WAIS)と比べると正確な値が出せないとのこと)

またその逆で、佐世保の女子高生による同級生殺害事件や名古屋大学の女子学生による知人殺害事件のように、IQが高くて勉強が出来ても、「これをやればどうなるか?」と言ったことが予想できない子供たちがいることも忘れてはなりません。

「障害がある」と気づかれないと何がまずい?

(障害があると)気づかれないと、どうしてまずいのかと言えば、それは一般に大人になるに連れ自立を求められるため、周りに目をかけたり面倒を見てくれる人(先生や保護者など)が次第にいなくなり、本来支援を受ける必要がある人が受けられていないため、環境の変化や仕事などについていけなくなり、最悪の場合犯罪に手を染めることにもなるのです。

ここでいう「大人」とは何も仕事をする社会人のことを指すわけではありません。
本書では、「中一ギャップ」の事例をもとに説明をしてあります。
例えば、小学校では何とか先生に支えられて卒業できても、中学校に進学すると様々な環境の変化が待ち受けています。
もし、いくつかの校区から集まる中学校であれば、同級生であっても最初は見知らぬ人たちと接しなければなりません。加えて、思春期特有の感情の不安定さ(後は中2病もありますが、笑)と、学習難易度のアップ、定期テストやクラブ活動、先輩後輩の関係、異性との関係など様々な環境の変化に直面することになります。

しかし、支援が必要な子供たちが、これらの変化に自分のみの力で対応していくことはとても困難です。そこでかなりのストレスを感じてしまいます。
通常は、まず不登校になります。また学校に来てもエネルギーを持て余しているので、教師に暴力をふるったり、物を壊したり、不良仲間とつるんだり、夜間徘徊、タバコを吸うといった不良行為、問題行動を繰り返すので、学校ではお手上げ状態となります。こうなると後は警察に補導されたり、逮捕されたりと言った具合なので、そうなる前の小学生のうちにいかにサインを早くキャッチするかが大切になるのです。

もし、こうした子供たちがそのまま大人になれば、それこそ、目をかけてくれる学校の先生もいない訳ですから、社会の厳しい現実に晒されることとなります。
仕事の覚えが悪かったり仕事でミスが目立ったり、人間関係がうまくいかないなどで、離職や転職を繰り返したり、場合によってはうつ病や犯罪を犯し刑務所にお世話になったりといった可能性もある訳です。

どうすれば良いのか?

「少年院に入ることは教育の敗北」だと、著者は述べています。

であれば、少年院に入ってしまうような子供らが出ないよう、「教育」を見直さなければならないはずです。
そこで、反省以前の問題だった少年や反省しているように見せかけていた少年らが「変わろうと思ったきっかけ」を知ることで、子供の学校教育へのヒントを掴もうとしています。

彼ら変わろうと思ったきっかけは、以下のようなものです。

「家族のありがた味、苦しみを知った時」
「被害者の視点に立てた時」
「将来の目標が決まった時」
「信用できる人に出会えた時」
「人と話す自信がついた時」
「勉強が分かった時」
「大切な役割を任された時」
「物事に集中して取り組めるようになった時」
「最後まで諦めずにやろうと思った時」
「集団生活の中で自分の姿に気が付いた時」

と言った声が上がったそうです。
著者曰く、彼らが挙げた項目は大きく二つに分けることができると言います。

一つは、「自己への気づき」。そして、二つ目は「自己評価の向上」です。
これら2つに関して、本書では以下のように述べています。

人が自分の不適切なところをなんとか直したいと考える時は、「適切な自己評価」がスタートとなります。
行動変容には、まず悪いことをしてしまう現実の自分に気づくこと、そして、自己洞察や葛藤を持つことが必要です。

「適切な自己評価」ができるからこそ、「悪いことをする自分」に気づき、「また悪いことをやってしまった」「自分って何て駄目な奴なんだろう」「いつまでもこんなことしていられない。もっといい人になりたい」などと言った自己洞察、自己内省が行えるのです。

そして理想と現実の間で揺れ動きながらも、自分の中に「正しい規範」を作り、それを参照しながら、「今度から頑張ろう」と努力し、理想の自分に近づいていくのです。
そのためには、自己を適切に評価できる力、つまり、「自分はどんな人間なのか」を理解できることが大前提となります。

(・・・一部略・・・)

また、自己に注意を向けること(*)で自己洞察や自己内省が生じる背景に、自覚状態理論というものがあります。自己に注意が向くと、自分にとってとても気になっている事柄に強く関心がいくようになります。
(*:自己に注意を向けさせる方法として、他人から見られている、自分の姿を鏡でみる、自分の声を聴くなどがあるそうです。)

その際、自己規範に照らし合わせ、その事柄が自己規範にそぐわないと不快感が生じます。この不快な感情を減らしたいという思いが、行動変容するための動機付けになるというものです。

引用:「ケーキの切れない非行少年たち」より(p.150−151)

例えば、ある少年が万引きをしようと考えた時、自己に注意を向ける機会があると、「万引き」という行為自体についても関心を向けるようになります。「万引きは悪いことだ」と言った規範をその少年が持っていれば、そんな自分を不快に感じ、万引きを止めるきっかけになるそうです。

ただ、子供が「正しい規範」を持つためには周りにいる大人が「正しい規範(ルールやマナーなども含む)」を見せ続けなければなりません。子供自身だけでなく、我々大人も子供に影響を与えていることを自覚しておく必要があります。
昔は、ご近所の大人が、子供が悪いことをしていたら遠慮なく叱ってくれたものですが、最近はご近所関係の希薄さや何かと事件になる世の中なので、そうしたこ光景も随分減ってきましたね。

さて、この「行動変容の考え方」は、我々大人にも十分役立つものです。
自分の生活や習慣などに目を向け、あるべき姿、望む姿(規範)を持つことで、これまでの生活や習慣などを変えることも可能です。
また、会社では、不快感とは逆の感情に働きかけることで組織改革などに利用すすることもあります。例えば、「(ある行動を取ることで)快感、他人から褒められる、認められる」ということを従業員が理解することで、会社が望む行動を従業員に取らせることが出来ます。

特に、自己への気づきは、自分自身自らが気づきのスイッチを入れなければなりません。
本書で、ある方が「子供の心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていないと仰ったそうです。
子供自身が初とする気づきの体験が最も大切であり、我々大人の役割は説教や叱責などによって無理やり扉を開けさせることではなく、子供自身に出来るだけ多くの気づきの場を提供することです。

1日5分で出来るコグトレ(認知機能強化トレーニング)のすすめ!

最後に、認知機能の大切さは先に述べた通りです。
認知機能に問題があると分かっても、学校の先生方にはどうやって認知機能を向上させることができるのか?という具体的な方法がわからない、あるいは時間がないというのが現実な問題でした。
そこで、著者は、認知機能の強化への支援として「コグトレ(認知機能強化トレーニング)」を紹介しています。

「コグトレ」とは、認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)に対応する、「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」の5つのトレーニングからなるそうです。
詳しくは、「宮口幸治著:コグトレーみる・聞く・想像図るための認知機能強化トレーニング(三輪書店)」をご参照いただければと思います。1日5分からでも出来、また遊び感覚(パズルやゲーム感覚)で出来るそうなので、学校のカリキュラムを気にすることなく取り組めるのも魅力のようです。

まとめ(感想)

著者の体験と視点を通じて、非行少年たちの特徴や考え方、置かれた状況などに加え、学校教育などの問題をも伺い知ることが出来る一冊。
少年院、非行、矯正教育などと日頃縁遠い人にはほぼ未知の世界なので、本書を通じて新たな見識を深める良い機会になると思います。
本書にもありましたが、雇用主や学校の先生などは、非行に対する理解のみならず、発達障害、知的障害に対する理解にもつながるし、(発達障害、知的障害を抱えていることに)気づかれていない子供を発見し必要な支援をすることができるようになるかもしれません。そうした意味でも、引き出しとして知っておくと良い知識だと思います。

特に、認知機能の弱さが、様々な問題に繋がるため、著者が紹介した「コグトレ」と言った認知機能向上のためのトレーニングが大切なのは勿論ですが、発達障害や知的障害など本当は支援が必要な人が支援を受けられるように、自分が認知機能の弱さを抱えていることや発達障害、知的障害であるということを気づく機会を得られる環境作りも大切です。そのためには、小学生と言った段階での早期の発見や、IQテストの特性も踏まえた結果の正確な見極めなども、非行少年を生み出さないために必要なことと言えます。

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