「仕事・業務のマニュアル化標準化」とは最短最善の方法で誰がやっても同じ成果が上がること
OJTの関連記事の中でマニュアル(標準化)について触れているのですが、今回はもう少しマニュアル作成の極意(?)に関して掘り下げた内容を紹介したいと思います。
最近は技術を伝道する目的で動画などで作業風景を残しておくケースも増えて最悪、手書きのマニュアルでもなんら問題はないと思います。
マニュアルに関して大事なのは、作る際の考え方であったり、マニュアルに何を書くのかと言ったことであり、綺麗なテンプレートを使って見栄えが良いと言ったことは、あまり重要ではありません。
(手書きゆえに修正追記が容易であり、最初は手書き、かつ箇条書きレベルで始めて、ある程度固まった段階でWordや写真等を使ってまとめる方が良い場合もあります)
マニュアルとは「最短の時間と最善のやり方で誰もが同じ成果(効果)が上がるもの」
「マニュアル」というと「アレをして、次はこれをして」と言った「作業手順書」みたいなイメージを持たれる方もいると思います。
それはそれで効果がない訳ではありませんが、作成にあたって意識したいことはそのマニュアルを見れば「最短の時間と最善のやり方で」「誰もが」「同じ成果(出来れば最大の成果)が上がる」かどうかということです。
このほかにも、マニュアル化や標準化をすることで、属人化の解消はもとより、サービス業などであれば、笑顔や挨拶、お辞儀などをマニュアル化することで、顧客へ提供するサービスの品質を一定に保てるといった効果もあります。
マニュアルは一人で作ってはならない
「最短の時間と最善のやり方で」という観点から見た場合、マニュアル作成を一人で行うのは好ましくありません。
何故なら、「その人ならでは」というやり方が反映されてしまいますし、その人のやり方が最善・最短の方法とは限らないからです。
例えば、Xさんは、「A→B→C→D」というやり方で10という成果を出しているかもしれませんが、より効率的なやり方を知っているYさんは、「A→E→D」というやり方で同じ10という成果を出している可能性もあります。
作業手順が少なければ自ずと作業に要す時間もYさんの方が少なくなりますし、成果が同じ10であったとしても、他の作業により多くの時間が費やせるYさんの方がTotalの作業効果は高くなるでしょう。
仮にXさん一人でマニュアルを作成し、他の担当者に引き継いだり、新入社員に教え伝えていくとするならば、会社全体としてみた場合、相応の無駄が生じてしまう訳です。
従って、よほど特異な業務ではない限り、同じ業務、或いは類似する業務を行う関係者を集めて、マニュアルに落とし込んでいった方が効果的です。
こういうことを言うと、自分のノウハウを他者に提供したくないと言う方もいますが、個人が突出するよりも従業員全体の底上げが出来た方がより会社としての生産性が高くなるのは言うまでもありません。
(そもそも本人が囲い込んでおきたいと考えるノウハウ自体が大した価値のないものであったり、他者の方がもっと他に良いやり方が知っているといった可能性もあります)
複数人によるマニュアル作成を通じて経験値の集積・共有、暗黙知から形式知へ変換が期待できる
前の見出しでマニュアルを一人で作ってはいけないと言いましたが、何人かで作り上げることで、経験値の集積・共有や暗黙知の形式知化が期待できます。
経験値(ノウハウ)の集積・共有とは、例えばこれまでの業務や作業の中で、どんなミスや間違いが起こったとか、それを防ぐためにはこうした点に注意しなければならないと言った経験値が集まることで対処法などが体系化されたり、従業員間で共有されることを意味します。
そうしたことから、「今使っている書類のフォーマット(書式)のここが修正されれば、ミスや間違いは起きにくくなるね」といった改善提案に繋がる場合もあります。
また、関係者同士のやり方を見聞きすることで、関係者全員に最善最短への道筋が共有されていきます。先ほどの「XさんとYさんの例」のようにXさんがYさんのやり方を取り入れることで、社員の生産性も向上するといった具合です。
もう一つは、暗黙知からの形式知化です。
自分のやり方やノウハウを周りに情報共有していない場合もあります。
個人の性格の問題(秘匿したがる方)であったり、組織風土の問題だったり理由は様々ですが、いずれにせよ、そうした暗黙知であった情報を、明文化するなどして形式知へ変換しておくことは、引継ぎ時や病気・退職等で急に担当者がいなくなるといった場合に備えても必要なことです。
「誰もが同じ成果が上がるもの」とは新人であっても同じ成果が上がるということ
「誰もが同じ成果が上がるもの」とは、仮に新人であっても同様の成果が上がるということです。
つまり、多少作業スピードが辿々しくとも、マニュアルに書いてある注意事項を守り要所を押さえながら作業をすれば、入社したばかりの新人であっても先輩やベテラン方と同じような成果を上られるマニュアルであるということです。
そのためには、これまで述べたような最短・最善のやり方を発見したり、暗黙知を形式知へといったことが必要となりますが、重要なことは、作業手順を一つ一つ分解し成果につながるだろうと思われる「要点」を絞り出していくことが必要です。
具体的にあ「何故この作業をやるのか」と言った意味・目的の確認から、「この作業をやるにあたっての注意点」など一つ一つ分解し、分析していく必要があります。
中でも大事なのが「要点(勘所)」です。
「ここは作業をする上で必ず押さえておかなければならない」「この箇所は注意が必要」とか「営業トークの中でこのセリフは必ず言っておくべき」、「この商品の説明の場合は、ここの部分(例えばメリット)を念押ししておく」「実は『あること』をやることで成果が上がるようになった」など、社員の皆さんが意識的にしろ無意識にしろやっている中には「成果を上げるためのポイント」(=要点)というものが存在しているはずです。
そうしたものも、マニュアル作成の際にその効果を含めて検証し、取捨選択しながら落とし込んでいく必要があります。
ほとんどの場合、各々独自のやり方でやって、同じような成果を出している訳です。結果として同じ成果であったとしてもかかった時間は全然違うということもあります。
従って、こうしたマニュアル化作業を通じて、仕事の標準化も行うことで、新入社員であっても同じような成果が得られる図式が出来上がっていく訳です。
マニュアル化、標準化は創造性を失わせる!?
しばしば、「マニュアル化や標準化」といった言葉を聞くと、そういうことをすると創造性を失わせることにもなるから、やらない方が良いのでは?という声が上がります。
しかし、マニュアル化や標準化と創造性(クリエイティブ)とは別けて考えるべきです。
マニュアル化や標準化の意味するところは、「マニュアルや標準化によって無駄な時間を減らし、その代わりに本来必要となることに時間を費やす」ということです。
簡単に言えば「時間をかける必要のない部分には極力時間をかけず、やるべきこと、作業において鍵(キー)となるような部分に十分時間が掛けられるようにする」というのが本来のマニュアルや標準化の役割なのです。
ですから、それ以外の創造性が必要だと思われる部分(業種や会社の方針によって様々)に時間をかけ、逆にそうではない部分は何も考えずに淡々と作業ができるようにマニュアル化、標準化しておくことで、作業の時間と質に相乗効果が生まれる訳です。
但し、ここで注意をしたいのが、「創造性を発揮するにはそれだけ沢山の時間が必要だ」という固定概念(思い込み)です。
確かに創造性を発揮するような仕事は、一朝一夕で成果が出るようなものではないと思いますが、生産性という観点から考えると「一定の期日や時間、締め切りを設ける」といったルール(マニュアル化)を作っておくことが望ましいです。
人間は、いくらでも時間があると思うとついつい必要以上に期限を伸ばしたり、あれやこれやと理由をつけてさらに時間を費やしたりしてしまうので、例えば、デザインなどのアイデアを考える場合は、「○時間以内、或いは○日以内まで」と言ったルールを設けたり、更に「期限を迎えた場合は、先輩や同僚、上司からも助言やアイデアを募る」と言ったところまでルール化しておくと、より効率的な作業が可能となります。
少なくとも新入社員や入社歴が浅い社員などはこうした公のルールがある方が、必要に応じて周りを頼るということを覚えますし、肝心の作業スピードや出来上がりの質も安定すると思います。
(補足:新入社員の頃は、勝手が分からずついつい出来上がりまでに時間を掛けてしまったり、また周りの先輩方が忙しそうにしていて質問しにくいといった場合もあるので、チームや部としてこうしたルールを設けておくと、新入社員でも周りを頼りやすくなるといった効果もあります)
OJTやマニュアルに関する関連記事
その他、本HPで紹介している新人教育やOJTの関連記事を紹介しておきます。
まとめ
・マニュアルとは「最短の時間と最善のやり方で」「誰もが」「同じ成果(出来れば最大の成果)が上がるもの」
・マニュアル化・標準化は、複数人で行うこと。(一人では作らない)
・マニュアル作成にあたっては作業手順を分解・分析し、その作業の意味や目的、作業の際に注意すべきポイント、成果が上がる(成果に繋がる)ポイントなどの効果を検証しながらマニュアルに落とし込んでいくこと。
・マニュアル化、標準化の本来の目的は、無駄な作業時間を減らし、本来かけるべき部分(営業、創造性、品質)に時間を掛けられるようにすること。