就業規則の作成は、HOP CONSULTINGにお任せ!相談・依頼は「お問合せ(メール)」より

心に働きかけ、行動に変化を。

5月10日はミスチルの誕生日(30周年)名言歌詞紹介ページはこちら!

管理職に休日出勤手当や残業代が出ないは間違い!?名ばかり管理職と監督管理者の違いと対策

 
管理職の写真
この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
詳しいプロフィールはこちら

「管理職にすれば、残業代を出さなくて良いんでしょ?」
そういった質問をまだまだ経営者から受けることがあります。

法律に詳しくないと思われる一般の社員の方などでも、「管理職だと残業代が出ないから、管理職にはなりたくない。平社員のままの方が良い」という不満・不安を抱えていますよね。

「管理職=残業代が出ない」というフレーズ自体は、本当に社会人の皆さんに浸透していると思います。

日本マクドナルド事件(いわゆる名ばかり管理職事件)などで、徐々に本当の意味が理解されつつありますが、本当の意味を理解している方はまだまだ少ないようです。(私も、社会保険労務士の勉強をする迄、誤解していました(笑))

今回は、この「管理職=残業代が出ない」というテーマを取り上げていきたいと思います。

「管理職=残業代が出ない(残業代を出さなくて良い)」は本当か!?

疑問がある人の写真

物事について考える際には、何事も基本、本質を理解することが大切です。
今回のようなテーマにおける基本とは「法律」です。
早速、労働基準法を覗いてみましょう。

労働基準法第41条によれば、

(労働時間等に関する規定の適用除外) 
第41条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第1第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

(労働基準法第41条より)

と定められています。

第41条第2項の「監督若しくは管理の地位にある者」という部分が、今回のポイントです。

第41条には、各号(1〜3号)に該当する者は、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないと定めています。これは、各号に該当する者は、事業の種類や労働者の地位、労働の態様により、労働時間や休憩などの規定の適用が不適当であると考えられるため除外しようとするものです。

(補足説明)
労働時間(労働基準法第32条):一日8時間、週40時間超えて労働させてはならない
休憩(同法第34条):労働時間が6時間を越える時は少なくとも45分、8時間を越える場合には少なくとも1時間の休憩時間を与える
休日(同法第35条)):毎週少なくとも1回の休日を与える。もしくは、4週間を通じ4日以上の休日を与える

・労働時間についての記事:「残業代削減対策のはじめの一歩は、労働時間の把握と管理である(労働基準法:労働時間とは)」
・休憩時間についての記事:「昼休みの電話当番は休憩時間?、それとも仕事?(労働基準法:休憩時間とは)」
・休日についての記事:「振替休日と代休の意味とその違いを分かりやすく解説!」

残業代が出ない理由(条文的解釈)

ネット上では、「労働基準法第41条を法的根拠として残業代が出ない」と結構簡単に結論づけられていますが、一般の人にも分かりやすい考え方を説明しておきますね(私が社会保険労務士試験を勉強している時にメモ書きしていた内容(笑))。

そもそも残業代とは「時間外」手当とも読み替える事ができます。
では、「何の時間外」なのかと言えば「労働時間」の時間外手当ということになります。「休日出勤手当」も「休日」に働いたことに対しての手当となります。

ですが、労働基準法第41条では、この「労働時間」、「休日」が適用されないと定めている訳です。
割増賃金の元(ベース)となるべき「労働時間」や「休日」が存在しないため、残業代(あるいは休日出勤手当)が出ないという結論に至っていると考えてもらうと分かりやすいかと思います。(法定労働時間(1日8時間労働)という適用があって初めて「時間外」という概念が存在するということです)
また、後述している管理監督官の要件に、勤務時間について自由裁量が認められていることが挙げられます。この勤務時間が自由裁量である以上、残業代を支払う必要がないという解釈にもつながっています。

但し、年次有給休暇(同法第39条)や深夜業の割増賃金(同法第37条第3項)の規定は適用される点には要注意です。「残業」がいっしょくたになってしまい、深夜(午後10時から午前5時まで)残業代を出していない場合もあります。この点を勘違いしている会社も多いです。

年次有給休暇についての記事:「【事例から学ぶ】有給休暇の制度、有給の理由を尋ねることや有給の拒否や許可制について」

労働基準法第41条第2項に定める「監督若しくは管理の地位にある者」の要件って何??

この労働基準法第41条第2項で定める、「監督若しくは管理の地位にある者(以下、監督管理者という)」に該当する要件は、判例や行政通達などを見る限り結構厳しい要件となっています。

行政からの発表によれば

・経営者と一体的な立場で仕事をしている
(例えば、指揮管理権、採用権限などがあること)
・出社や退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
(例えば、労働時間に関して自由裁量があること)
・その地位に相応しい待遇がなされている
(例えば、賃金が一般の労働者に比べて優遇されてことなど)

といった要件を総合的に判断して、監督管理者に該当するか否かを見極めるというものです。

監督管理者に該当すれば、先ほど述べた通り、労働時間、休日及び休憩の規定の適用を受けません。
監督管理者として認められないとされた判例もありますし、中でも出社や退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないという要件を満たすのはなかなか困難のようです。(多くの場合、会社の就業時間に従って仕事をさせているため)

この要件を見て頂いた上で改めてお聞きますが、あなたの会社の管理職はこの要件を満たしていますか?

専門家(社会保険労務士)や行政からお墨付きをもらっているなどできちんと要件を満たしていれば問題はないかもしれませんが、もしそうではないのであれば「名ばかり管理職」として様々なリスク(残業代未払いなど)を抱えてしまっている可能性もあります。
是非、この機会に自社を見直してみましょう。

勘違いの原因は、会社で用いる「管理職」と、法律上の「監督管理者」は異なることを理解していない為

条文に「監督若しくは管理の地位にある者」と書かれているため、一般的な会社だと「管理職」をこれに安易に当てはめてしまいがちです。

NGを出す女性の写真

この誤解が「管理職=労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を受けない=残業代、休日出勤手当などを出さなくて良い」という結論に導かれてしまっているようです。

ですが、実際は会社の役職付きに用いている「管理職」と労基法第41条の「監督管理者」は異なります。

つまり、「管理職≠監督管理者」ということです。

ここを履き違えてしまうと、名ばかり管理職に一直線です。
もちろん、前述の要件をきちんと満たしていれば、「管理職=監督管理者」と判断されるケースもあります。

しかし、多くの中小企業ではそうではないのが実態です。
ネット上のWiki系でも、この第41条第2項が「管理職適用除外の根拠」と説明されていて、ちょっとびっくりでした。専門家からすれば、色々と要件もあるし「一概には言えないよ」と言いたいところです。

名ばかり管理職の弊害

モチベーションが低下した管理職の写真

「名ばかり管理職」に関しては、残業代未払いなどの法的な問題もありますが、もう一つ忘れてはならないのは管理職のモチベーションの低下です。

課長・係長などの管理職に就いたとしても、その分の見返りがなければ折角の昇進も無駄になってしまいます。

モチベーションの要因としてお金が全てとは言いませんが、きちんと賃金制度などが整備されていないために、昇進したのに実質給料が減ったというケースは中小企業では珍しくありません。
つまり、管理職になったことで残業代が出なくなり、代わりに管理職手当が数万円ついたけど、結局手取りで見ると平社員の方が良かったなんていうコメントがその象徴とも言えるでしょう。

そして、給料はあまり変わらないのに仕事量は増え、結果、労働時間(特に残業時間)も増加(しかし、残業代は出ない)、そして責任も重くなるとすれば、「管理職だと残業代が出ないから、管理職にはなりたくない。平社員のままの方が良い」という冒頭で紹介したコメントが出てくるのも無理のないことです。

こうしたことも懸念されるので、経営者の方は安易に管理職にしないように注意して下さい。少なくとも、役職と責任に見合った給料を準備するのは、最低限と言えます。

名ばかり管理職に対する対策

管理職であっても、労働基準法で定める監督管理者に該当しないのであれば、適用外にはならないので、一般の社員と同じように残業代、休日出勤手当等を出さなければなりません。

もし、労基法に定める監督管理者として扱いたいのであれば、行政通達に則り、相応の対応・待遇が求められてきます。
ですが、出退勤の自由(遅刻早退などで賃金をカットされないなど)などその要件を満たすのは中々難しいかもしれません。

特に、行政の判断と司法の判断は異なると言われています。つまり、監督管理者か否かの判断に関しては、司法の方がより厳しく見られます。勿論、民事裁判などになった場合でも、大丈夫なように処遇改善をするのがベストですが、現実には中小企業には難しい面もあります。であれば、民事訴訟のような大ごとにならないように努力すべきだと思います。

つまり、従業員に不満を持たせない、あるいは不満を減らす工夫をし続けなければならないということです。管理職になれた人は、不満はありながらもその会社で働いていたいと思っている部分が多かれ少なかれあるということです。であれば、その愛社精神を高める、くすぐるような施策を実施していく姿勢が大事です。
最初から全てを満足させることができないとしても、その姿勢を見せ続けることがトラブル防止の第一歩だと言えます。

この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© HOP CONSULTING , 2019 All Rights Reserved.