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残業代削減対策のはじめの一歩は、労働時間の把握と管理である(労働基準法:労働時間とは)

 
仕事中の写真
この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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「昼休みの電話当番は休憩時間?、それとも仕事?(労働基準法:休憩時間とは)」で休憩時間について説明しましたので、今回は、労働時間について紹介したいと思います。

法定労働時間と所定労働時間について

まず最初に法律(労働基準法)上は、どうなっているのかを見てみたいと思います。

労働基準法第32条
1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法より

この条文から、労働時間に関しては「1日8時間」「週40時間」という制限があることが分かります。これが所謂「法定労働時間」です。

一方、「所定労働時間」というものも存在します。
こちらは、会社が定めた就業時間のことで、就業規則などに書かれている「始業及び終業の時刻」と呼ばれるものが該当します。当然ながら、所定労働時間は法定労働時間の範囲内で定めることとなります。

法定労働時間と所定労働時間の違いは?

この二つの違いは、割増賃金の有無に表れます。
所定労働時間を超えて働いてもらったとしても、必ずしも割増賃金は発生しませんが(例えば、所定労働時間が7時間で、30分時間外労働した場合)、通常の賃金の支払い必要です。
一方、法定労働時間を超える場合は、(変形労働時間制などを採用していなければ)原則割増賃金を支払わなければなりません。

そもそも労働時間って何(定義)?

オフィスの写真

労働時間とは、労働者が使用者の指揮・命令下に置かれ、労働に服さなければならない時間のことです。
また同時に、指揮命令下に置かれるということは、労働者は使用者に拘束され、労働者の行動は大きく制限されることになります。
制限の一例としては、例えば、別の記事で、「休憩時間は労働者が自由に利用できなければならない(参考:「昼休みの電話当番は休憩時間?、それとも仕事」)」と述べていますが、一定の条件下で、会社の外に出る際は許可制にするといったことも可能となります。

労働時間の管理が重要なのには訳がある!!

とは言っても、会社で働いていると労働時間として扱うべき時間なのか、そうではない時間なのか。判断に迷うケースも出てきます。

まぁまぁ、そんな細かいことは考えずに、「会社にいる時間=仕事=労働時間」とすれば良いじゃない?という声が聞こえてきそうですが、安易に玉石混淆に扱ってはいけません。

それはなぜかと言えば、「ノーワーク・ノーペイの原則」が存在するからです。日本語だと、「働いていない時間は、給料を支払わなくても良い」ということですが、労務管理の基本となるのがこの原則です。

例えば、皆さんにとって「サービス残業」というのは「労働しているのに、会社が給料を支払わないこと」という意味で浸透していることばだと思います。
一方で、労働者と使用者の関係はある種「表裏一体」ですから、使用者側からみれば「仕事をしていない人に給料を支払いたくない、または、残業代欲しさにわざと残っている人には給料を支払いたくない」という見方もある訳です。

つまり、使用者側(経営者)から言えば、払わなくてもよい給料を払っている可能性もあるということです。こういったこともあるので、労働者の労働時間をしっかりと把握する必要があります。
他にも、労働時間を把握は、労働者の長時間労働による過労死や自殺、うつ病発症などが起きないようにするということもあります。

労働時間として扱うべきケースとそうではないケース

掃除中の写真

先ほど、「労働時間とは、労働者が使用者の指揮・命令下に置かれ、労働に服さなければならない時間のこと」と説明しました。

ここでポイントとなるのは、
・労働者が会社の指揮命令下に置かれていること。
・労働に服していること(労務を提供していること)。
という2点です。
これを一つの基準として労働時間の判断を行っていきます。

ここからは、具体例としていくつか見ていきましょう!
Q1:研修の時間
A1:中小企業の場合だと社内研修を行う機会はあまりないかもしれませんが、研修への出席が義務付けられている場合は、労働時間となります。
就業時間中はできれば仕事をさせたいと思うのが経営者の常ですので、どうしても就業時間後(所定労働時間以外)に研修などを行うケースが多くなります。その研修への出席が義務付けられているような場合や、例え明確な指示がなくても黙示的に出席を強制させられるような場合や一定の要件(例えば出席しないと人事評価に影響するなど)に該当すれば、労働時間とみなされますので注意(割増賃金の支払いや36協定の締結など)が必要です。

Q2:健康診断の受診に要した時間の賃金について
A2:まず、定期健康診断について述べておきます。定期健康診断は、労働安全衛生法第66条でその実施を義務付けているものです。そして、健康診断の費用については当然会社が負担すべきものとされています。

では、健康診断の受診に要した時間の賃金についてはどうなのでしょうか?
行政通達によれば、受診に要した時間については、当然に会社が負担すべきものではない(労働時間ではない、無給でもOK)としています。但し、「労働者の健康=事業の円滑な運営に不可欠であること」を考えると、その受診に要した時間の賃金についても会社が負担することが望ましいとしています。

Q3:朝礼の時間や開店前の掃除や片付けの時間など
A3:就業時間開始の30分前には出社して掃除して、就業時間(あるいは就業時間前)になったら朝礼して・・・、という光景は、接客業などのサービス業ではよく見られる光景です。もはや会社内で慣例化していて労働者も疑問にすら思っていないことが多いですが、これって実質強制参加のことが多いですよね?朝礼も開店前の掃除も完全自由参加、かつ評価には一切影響しないというのであれば、労働時間として扱わなくても良いかもしれませんが、現実の対応を見る限りそんなケースはほとんどありません。
朝礼や掃除は、業務関連性もありますし、きちんと労働時間として扱うべきものだと言えます。

Q4:作業服、制服などの着替えの時間
A4:労働者に対してそれら(制服など)の着用が義務付けられているような場合は、労働時間として扱います。

Q5:労働者が勝手に早く出社している
A5:会社からの指示・命令がないのに、労働者が勝手に早く会社に来ている(あるいは仕事をしている)ような場合は、原則、労働時間とはなりません。労働者が自主的な時間外労働をしているだけだからです(時間外手当は出ません)。

経営者が認めたくない残業のケース

タイムカードを打刻する写真

ここまでは、どちらかと言えば労働者目線で、職場で起こる様々なケースにおいて労働時間として扱えるか否かということを見てきました。

ここからは、経営者(使用者)目線で見ていきたいと思います。
経営者から残業に関してよく聞かれることは、
「別に今日やらなくても良い仕事を、勝手に残って仕事をしている」
「仕事が終わったのに社員同士でおしゃべりをしていたり、仕事が残っている人がいるからといって一緒に居残っていたり・・・(その後タイムカードを押している)」
「明らかに残業代目当てでは?と思われる社員がいる。例えば、昼間はおしゃべりをしたり、席を外したりしてサボりがちに仕事をしている(サボタージュに近い)のに、残業時間に突入したら真面目に仕事に取り掛かっているようなケース」
などです。
こういうことが職場で常態化しないためにも、労働時間の管理が必要となる訳です。
経営者がこのように嘆く背景には、何かあればパワハラ、セクハラと訴えられるような時代になったことで、注意すべきことを注意できない使用者や管理職が増加しているのも、こういった事態が蔓延するようになった理由にあるのかもしれません。

そもそも労働者の義務とは何

労働者の義務は、「所定労働時間に労務を提供すること」です。その対価として使用者から給料が支払われる訳です。(簡潔に言えば、真面目に働く義務がある)
従って、時間外労働の命令があって初めて、労働者は所定労働時間外に労務を提供する義務が生じることとなります。
言い替えると、「労働者が勝手に残業する権利はない」ということです。

実際には、そのような運営がなされていないのが現状です。
管理の手間もあって、残業に関しては労働者の裁量に委ねているケースが多いものです。また、例え使用者からの指示・命令がなかったとしても、使用者が労働者の時間外労働(残業)を認識しながら、止めなかった、注意しなかった場合は黙示的に業務命令があったものとして判断されています。

どうやって無駄な残業代を減らすのか?

コミュニケーションが良好で、使用者と労働者の信頼関係が強固なものであれば、労働者の自主性に任せつつ、適宜、「報・連・相」を用いた労務管理で良いでしょう。そういった環境が整っていれば、労働者に一々指示命令を与えなくとも、必要があれば残業をするというスタンスで効率的に仕事をしてくれるでしょう。

ですが、そうもいかないのが現代の世の中です。
やはり、初心にかえって「時間外労働(残業)をする場合は、使用者・管理者の許可を得て行うこと。そして、認めていない残業については時間外手当(残業代)を支払わない」というルールを設けるのが良いでしょう。それを就業規則に定めることは勿論ですが、いつの間にかルールが形骸化してしまわないように、適切な運用を心掛けることが肝要です。

「実際の運用を考えると面倒だ」という意見が聞かれますが、そもそも使用者には労働時間を管理する義務があります。先般、働き方改革関連法案が施行され、ますます労働時間の適切な把握が求められる時代ですから、(面倒だとしても)会社も社員も時流に乗った対応が求められています。

労働時間の把握にはマネジメント力が不可欠

マネジメント力を表す写真

実際、労働者の労働時間を適正に把握するには、

・労働者がどのような仕事を担当しているのか
・年、月、週単位で、繁忙期、閑散期があるのか
・ある仕事を行うのにどの程度の時間を要しているのか。また、それは他人(例えばベテラン)と比較するとどうなのか(仕事のスピードや質の比較)
・担当者が休んだ場合、他の社員が代わって行うことができるのか

など、様々なことを把握しておかなければなりません。こういったことをもとに労働者をマネジメントしていく訳です。

例えば、所定労働時間内に終わらない業務量を使用者が与えていたような場合に、残業をするなというのは理論的に不可能なことです。そういったマネジメントすら出来ていないのに、「残業を許可制にする」あるいは「残業をするな」、「早く帰れ」なんてことを会社や管理職が言う資格はありません。

また、「残業をするな」と言っていても、先ほどの例のように日頃から所定労働時間内に終わらない業務量を与えていたような場合は、黙示的な業務命令があったと判断され残業させていたとみなされる可能性があります。

しかし、多くの会社で社歴順や営業成績などで順次管理職に昇格させていくのが慣例となっているので、いつまでも営業職(プレイヤー)だった頃の癖が抜けず、部下やチームを放ったらかしにしている管理職が多いのも事実です。
そのような状況だと、せっかくのチームなのに個人での行動に終始してしまい、最悪の場合、営業マン同士が売上を巡ってお互いの足を引っ張り合う事態にもなりかねません。

「何故、一人ではなくチームを組むのか?」
「何故、組織化するのか?」
その意味をしっかりと理解させておく必要があります。
それは、チームの力を結集することで個人では成し遂げられなほどの大きな成果をあげられるからです。

近年、労働者の権利意識は強くなっており、何かと理由をつけて自分の権利を主張したがるもの風潮がありますが、そもそも、あなたが仕事が出来るのは会社の看板を背負っているから、会社がいろんな設備(携帯、パソコン)を揃えてくれているから、影でサポートしてくれる社員(事務職のアシスタントやパートさんなど)がいるからです。
会社が存在して当たり前、仕事があって当たり前だと思わせないように、会社とは?チームとは?という意識を労働者に浸透させるのも使用者、管理職の仕事ではないでしょうか?

まとめ

最後は少し話が脱線してしまいましたが、本来、残業とは使用者の指示・命令があってはじめて労働者が時間外労働をすることが出来る訳です。その表裏一体として、労働者が勝手に残業をする権利というのはありません。
ただし、記事でもお伝えした通り、残業の指示・命令がなくとも残業をしているのを会社が黙認している場合はそれは労働時間とみなされ、時間外手当(残業代)が発生してしまいます。

経営者にとって不要な残業代を発生させないためには、労働者が残業を行う際は使用者・管理職の許可制にするとともに、それ以外の不必要な残業は認めない(残業を黙認しない)という姿勢を貫き続ける必要があります。
また、折角ルールを決めたのにいつの間にか曖昧な態度になってしまうと「残業を黙認していた」という事態にもなり兼ねないので、PDCAを回しながら厳格にルールを運用していきましょう。

最後に補足として、労働時間で揉めないためには、入社時やその他一定のタイミング(年に一回)で結構なので、労働時間や昼休みの過ごし方、時間外労働(早出や残業)について説明会開催しておくことも大切です。労働者は入社してから時間が経てば、自然と仕事は覚えますが、それ以外のこと(労働基準法などの法律や、通常では使わない会社のルールなど)はあまり覚えようとしませんし、下手をすると自分勝手に都合の良い解釈をしてしまうこともあります。そういったことも踏まえて、定期的に説明会を行うことも大切です。

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経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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