20年1月ハローワークのシステム変更で何が変わる?求人申込の書き方を工夫し差別化を!
2020年1月6日より、ハローワーク(公共職業安定所)の求人システムが変更されるのをご存知でしょうか?
今回は、この求人システムの変更内容や、変更による事業主への影響を見ていきたいと思います。
・ハローワークの求人システム変更の内容
・変更に伴い、事業主にどんな影響(メリット・デメリット)があるのか?
ハローワーク求人システムの変更
2020年(令和2年)1月6日からハローワーク(公共職業安定所)の求人システムとインターネットサービスが刷新されます。
大きな変更と点としては以下の3つです。
求人情報を閲覧出来る「ハローワークインターネットサービス」のWEBサイトが「スマートフォン」や「タブレット」にも対応。いつでもどこでも快適に閲覧することが出来るようになります。(ネット上のアクセスの利便性向上)
【変更点2】「ハローワークインターネットサービス」上に「マイページ」を開設出来るようになります。
【変更点3】「充実した求人情報」と「マッチング支援」
求人票が刷新され、掲載量が増加。求人(募集)企業の情報をより詳しく知れるようになります。
特に注目したいのは、【変更点2】と【変更点3】です。
【変更点2】について
「マイページの開設」って何?と思うかもしれませんが、求職者側・求人者側双方にメリットのあるものです。求人者側(事業主側)が「マイページ」を開設する事で、例えば、ネット上で求人の申込が出来たり、ハローワークから紹介された求職者(応募者)の選考結果(採用可否)の登録(連絡)が出来るようになります。
【変更点3】について
求人票の刷新による掲載量の増加により、自社の情報をより正確に伝えることが出来るようになります。その分、求職者側とのミスマッチの防止に繋がるでしょう。
(どちらも後で詳しく見ていきますので、ここでは簡単に触れておきます)
ハローワーク求人システムの変更に伴い、事業主にどんな影響(メリット・デメリット)があるのか?
ハローワークの「求人システム」と「インターネットサービス」が変更されることで、事業主にどんな影響(メリット・デメリット)があるのかを整理したいと思います。
厚生労働省が発表しているリーフレットには次のように掲載されています。
新サービス「求人者マイページ」で、会社のパソコンから求人の申込みができるようになる
【ポイント2】
新しい求人票で、より詳細な情報を求職者に提供できるようになる
【メリットその1】「求人者マイページ」を開設することで様々なサービスが利用可能になる!
自社の「マイページを開設」することで、会社のパソコンから求人申込が出来るようになります。(但し、一定の要件(例えば初めて求人を申込むなど)に該当する場合は、仮登録(申込)後、本手続きのためハローワークに出向く必要があります)。
もちろん、募集している求人内容の変更や、求人募集の停止、事業所情報の変更なども可能です。
また、メッセージ機能を利用してハローワークから紹介された求職者とやりとりすることが出来たり、紹介された求職者の紹介状の確認や選考結果(採用可否)の登録(ハローワークに連絡)、求職者情報の検索(求職者に対して直接リクエスト(求人への応募依頼)すること はできませんが、ハローワークにご相談下さいとのこと)をすることも出来るようになります。
その他にもハローワーク内のパソコンだけでなく、ハローワークインターネットサービス上でも事業所の外観や職場風景、取扱商品などの画像情報を登録・公開することが出来るようになったりします。
マイページの開設により、総じて求人者側(事業主側)の利便性が向上することが何よりのメリットだと言えるでしょう。
また、利便性が向上したおかげで、募集状況が悪ければ、求人内容を見直したり、求職者に自社を良く知ってもらえるように事業所情報を変更するといったことを行うことで求人(採用)に役立てることが出来そうです。
【メリットその2】求人票の様式変更で掲載できる情報量が増えて、より詳しい情報を提供可能に!
求人票の様式変更により掲載できる情報量が増え、より詳細な情報を求職者に提供できるようになるので、求職者・求人者間のミスマッチ(情報の非対称性)の防止に繋がる事でしょう。
詳細は別途案内を見て頂いた方が良いので、ここでは様式変更の概要と新設項目にだけ簡単に触れておきます。
厚生労働省HP内:記事「2020年1月6日からハローワークのサービスが充実します!」
変更概要としては、従来の求人票から消える項目(項目は消えるが、同様の内容を別の「特記事項欄」に書く形に変更となるものもあります)や表示可能字数が削減される項目(例えば、「学歴」や「必要となる資格」などの字数)や表示内容を集約するもありますが、基本的には事業主側が提供(掲載)できる情報が増えます。
(求人票の様式が「A4片面」から「A4両面」に変わるので、単純に考えれば情報量は2倍!)
ちなみに新設項目としては、次のようなものがあります。
パッと記載しただけでも、これだけの項目があるのでハローワークの求人システムがいかに大幅な変更を行うかということはご理解頂けると思います。
(以下には、これまでも登録していたが、欄を新設した項目も含まれます)
・復職制度
・就業場所における屋内の受動喫煙対策
・賃金−固定残業代
・昇給制度の有無
・賞与制度の有無
・時間外労働−36協定における特別条項の有無、特別な事情・期間等
・選考方法(面接予定回数の掲載)
・育児休業取得実績、介護休業取得実績、看護休業取得実績(「該当者なし」という項目を新設)
・必要なPCスキル
・在宅勤務(欄新設)
・UIJターン歓迎(求人票に掲載可能)
・外国人雇用の実績(求人票に掲載可能)
他にも、【メリット1】のマイページ開設の中でも触れた会社の外観写真や、職場の風景、取扱商品の画像の登録。
また、求人票には掲載されませんが、ハローワーク内に設置されたパソコンやハローワークインターネットサービス上に掲載される情報として「事業所PR」「事業所からのメッセージ」といったものもあります(どちらも窓口で求職者に配布する「求人・事業所PRシート」に掲載)。
新設される項目も含め、公開情報を増やすことで、自社をより正確に求職者に知ってもらうことが出来ます。
例えば会社の外観や職場の風景写真があれば、一度くらい中身をチェックしてみようかな?という心理になるのが人間です。「写真1枚」といってバカにしてはいけません。
【デメリット1】公開範囲の設定次第では悪影響も!?
今回のハローワークの求人システムとインターネットサービスの変更の中で、事業主に関係する重要なものとして、公開範囲の設定の方法が変わるというものがあります。
イメージとしては、SNS上で自分の投稿を「自分の友達まで公開する」のか「友達の友達まで公開するのか」といった公開設定のことを想像してもらうと分かりやすいと思います。
今回のケースで言えば、求人情報や事業所名等の公開範囲をどのように設定するかということになります。
【公開範囲2】:ハローワークに登録している求職者限定して、事業所名等を含む情報を公開する(求職者以外には事業所名等を含まない求人情報を提供する)
【公開範囲3】:事業所名等を含まない求人情報を公開する
【公開範囲4】:求人情報を公開しない
基本的にほとんどの事業主(事業所)が【公開範囲1】か【公開範囲2】を選択すると思いますので、その二つの違いを比べておきます。
・ハローワークに登録している求職者をはじめ、より多くの応募が期待できる
・ハローワークに登録している求職者以外から問い合わせが来る可能性がある
・事業所名等を確認できるのがハローワークの求職者に限られるため、公開範囲1に比べ応募者数が少なくなる可能性がある
求人の公開範囲はいつでも変更できますが、こうした違いがあることには留意しておく必要があるでしょう。
特に公開範囲1の場合は、より多くの応募が期待できる反面、ハローワークに登録している求職者以外からの問い合わせが来る可能性もあるので、その点に関してはある意味デメリットとなることも考えられます。
【デメリット2】既に求人を出している場合は、更新や条件変更の場合は追加登録が必要になる
デメリットという訳ではありませんが、2020年1月6日からハローワークの求人システムが刷新されますので、それ以前に求人を出していた場合にどう対応するのかという話です。
基本的には、変更(1月6日)前に登録した情報は、新求人票に掲載されますが、前述したような新設する情報欄は空欄となります。
従って、2020年1月6日以降に、以下を行う場合は事業所・求人情報の追加登録手続きを行う必要があります。
(1)現在申し込んでいる求人の更新や条件変更を行う場合
(2)現在申し込んでいる求人について、新設する情報欄の追加登録を希望する場合
デメリットと言っても、追加登録手続の手間がかかると言った程度ですので、ご安心下さい。(ただ、事業所によっては新設項目などに何を記載するかの検討に時間がかかるかもしれませんが…)
システム変更を上手く活用し、求人申込で自社をアピールし他社との差別化を図る!
現在は、有効求人率が高く採用難
2020年(令和元年)10月の全国の有効求人倍率は1.57(季節調整済有効求人倍率(新規学卒者を除きパートタイムを含む))とバブル期を超える水準で非常に高い数値となっています。
参考までに福岡県の有効求人倍率((受理地別・季節調整値)(新規学卒者を除きパートタイムを含む))は1.51です。
有効求人倍率が高いということは売り手市場(求職者側が有利)ということです。(少子高齢化、人口減の影響でそもそもの労働力が減少している影響もあると思いますが…)
企業側(事業主側)にとってみれば、人材不足という経営環境の中、数ある求人企業の中からいかにして求職者に自社を選んでもらうかが鍵となります。採用難をいかに克服するかということです。
求人票の新設項目や登録情報から見えてくるもの
さて、現在は、有効求人倍率が高く採用難の状態にあることは理解できたと思います。
ここで先ほど【メリット2】の中で紹介した新設項目をもう一度見てみましょう。
・復職制度
・就業場所における屋内の受動喫煙対策
・賃金−固定残業代
・昇給制度の有無
・賞与制度の有無
・時間外労働−36協定における特別条項の有無、特別な事情・期間等
・選考方法(面接予定回数の掲載)
・育児休業取得実績、介護休業取得実績、看護休業取得実績(「該当者なし」という項目を新設)
・必要なPCスキル
・在宅勤務(欄新設)
・UIJターン歓迎(求人票に掲載可能)
・外国人雇用の実績(求人票に掲載可能)
これを見て事業主(事業所)の皆さんは、何を感じますか?
最近の世相や労働者の要求を反映している項目ばかりだと思いませんか?
「受動喫煙対策」や「育児休業取得実績」「賃金−固定残業代」「36協定の特別条項の有無」など、受動喫煙問題や育休問題、長時間労働(残業代)などいずれも世間でも関心の高い項目が目につきます。
あとは、これらに含まれていないもので、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」と言ったハラスメントの問題有無も関心が高いのではないでしょうか?
求人の申込でなぜこんな細かい項目まで聞かれるのか?と思う事業主もいるかもしれませんが、逆にこうした項目に対してきちんと回答・対応出来る企業(事業所)でないと求職者から選んでもらえないということの裏返しだと捉えることも出来ます。
求人票の掲載項目が増えるということは、自社の情報をより正確に求職者に伝える事ができる、さらに一歩進んで考えれば、自社を上手くPRすることにも繋がると言うわけです。
そのためには、例えば、自社の強みを再発見し、それを求人票に上手く反映させたり、逆に弱みの部分(職場環境や各種制度など)を改善し、少しでも求職者が応募しやすい職場に変えていくなど(勿論、一朝一夕でできるものばかりではありませんが)、求人システム変更をチャンスとして捉えていく姿勢が大切です。
難しく考え込む必要はなく例えば、
・自社のSWOT分析を行う(強みや弱みの洗い出し)
・経営者や人事部門の意見のみならず、一般社員にも自社に対する意見(会社の良いところ悪いところ、働きがいを感じるところなど)を聴く
・求職者の関心が高く面接時などに質問を受けそうな部分を明確化しきちんと説明できるようにしておく
など、手を付けられそうな所からまずはやってみる感じで良いと思います。
ちなみに、求職者の関心が高く質問されやすそうなものとして、将来設計(会社で働くとどのような成長ができ、どのような人生プランが描けるのか)、労働時間(残業の有無、およびその時間なども含む)、休日・有給(育児休業なども含む)に関すること、昇給や退職金などお金に関すること、人材教育(入社後きちんと教育してもらえるのか)、職場環境(人間関係、パワハラ、セクハラ、マタハラの有無など)などが考えられるでしょう。
勿論、働く上で何を重要とするかは労働者によって異なりますが、どのような質問が来てもきちんと説明できるように社内で整理し準備しておく事が肝要です。
まとめ
本記事では以下の事が、理解出来たと思います。
・求人システム変更による事業主のメリットとデメリット
・求人システム変更に伴い、求人申込の書き方を工夫するなどして自社のアピールに役立て他社との差別化を図る
今から約1ヶ月後の2020年1月6日から、新しいハローワークの求人システムが始まります。
特に、年明けから求人を予定している会社(事業主)などは、求人システムの変更内容を踏まえて、今のうちからどのような求人情報を登録するかを考えておきましょう。
また、もう既に求人を出している会社であれば、システム変更後に追加登録はやっておくべきです。掲載されている情報が多い方が求職者の目につきやすく、興味を持たれやすいのは明らかですから(求職者の申し込みが既に十分多ければ別ですが)。