【書評:おすすめ本・名言・経営の神様】人生心得帖(著:松下幸之助・パナソニック創業者、PHP文庫)の感想・まとめ(要旨)
書籍情報
著者:松下幸之助 / パナソニック創業者、経営の神様
書籍:人生心得帖
値段:476円(税別)
発行所:PHP研究所
他書:「道を開く」、「人を活かす経営」、「物の見方考え方」など多数
購入経緯
経営の神様とも言われる松下幸之助氏の「人生観」を学べるのではないかと思い購入。ちなみに、6冊で構成される「心得帖シリーズ」は全巻購入済ですが、おそらくシリーズの中でも一番人気の本。
PHP研究所とは?
PHP研究所とは、パナソニック(旧・松下電器)の創業者である松下幸之助氏が創設した出版会社です。戦後間もない1946年に創設され、創業70年を超える会社です。PHP新書、PHP文庫といった形で出版されており、事業活動を通じてPHP(PHPの意味は下記見出し参照)の理念を普及することを目標としています。
PHPとは?
「PHP」とは、「Peace and Happiness through Prosperity」の頭文字を取ったものです。日本語では、繁栄によって平和と幸福を…という意味です。
感想
「人生心得帖」の中で印象に残った部分を5つ紹介したいと思います。
「人間の本質」
松下幸之助氏は、「人間というものは、ダイヤモンドの原石のような性質を持っている」と述べています。
ダイヤモンドではなく、ダイヤモンドの「原石」だと表現するのには理由があります。原石である以上、磨けば美しく輝く本質を持っているのは間違いありませんが、磨かなければ輝くことは出来ません。また、原石は見た目はただの石ころに見えるでしょうから、それが原石であることに気づく必要もあるということです。
つまり、人間誰しも何かしらの可能性を秘めているということを示唆しています。また、それを磨く方法も、自分自身の手で、或いは会社や組織、チームとして協力してといった方法となります。会社の人材育成に置き換えるならば、「信頼する」、「任せる」といった育成方法がその一例となるでしょう。
しかし、まず、多くの方に必要なことはまずは「人間はダイヤモンドの原石」だということを信じることからスタートすることになると思います。どうしても人間の弱さやダメな部分に目がいってしまい、人間が持つ可能性に目を背けがちです。
「あの人はどうせ●●だから」「あの人にこういった仕事は向いてない」或いは、「自分はこういう人間(性格)だからどうせダメだ」といった風に考えるのではなく、相手も自分自身にもダイヤモンドの原石である、可能性があるということを信じることから始めることが大切なのではないでしょうか。
「百聞百見は一験にしかず」
「百聞は一見にしかず」(100回聞くより1回実際にそのものを見た方が良い)という言葉がありますが、冒頭の「百聞百見は一験にしかず」とは見たり聞いたりだけでなく自らの体験を通して初めてものの本質を掴み、理解することができるということを表した言葉として紹介されています。
成功も失敗も含めて、体験することは大切だというのは勿論ですが、松下幸之助氏は何も「大きな経験」、「特別な経験」でなくとも、日々の中での小さな成功と失敗をよく味わい、反省・改善を繰り返すことで人生の糧となって生きてくると述べています。
つまりは、自分の気の持ちよう次第で、普段の日常の出来事であっても、何かしらの反省・改善に気づき、己を高め経験を積むことが出来ると仰っているのだと思います。
「人事を尽くして天命を待つ」
松下幸之助氏は、「運命」というものを信じている方です。
「運命」というのは、人の手の及ばない超越したものです。しかし、そうはいっても生きかた次第で、自分に与えられた運命をより生かし、活用できる余地があるのではないかと述べています。そして、その余地は10%から20%ぐらいあるのではないかと。大切なのは、その10%なり20%の範囲において、精一杯の人事を尽くすということです。
「熱意と誠意」
「知識も知恵も才能も大事。しかし何より大事なのは熱意と誠意である。この二つがあれば何事も成し遂げられる」と著書の中で述べられています。
つまり、熱心さと誠実さを持って仕事に取り組むことは、創意工夫につながります。仕事そのものを今より良くしようとする、また失敗したならば、次はどうやれば成功に繋がるのか、どうやったらお客さんに喜んでもらえるかといったことを考え、工夫を続けます。そうした工夫を続けるからこそ、より良い仕事や成功に繋がると仰っています。
何かを成し遂げようとする際に、鍵となるのが「熱意と誠意」。そのことを忘れないようにしたいものです。
「成功とは成功するまで続けること」
松下幸之助氏の代名詞ともなっている名言中の名言です。
本書の中でも、「物事というものは、すぐに上手くいくということは滅多にあるものではない。根気強く辛抱強く地道な努力を続けていくことによって、初めてそれなりの成果が上がる」と述べています。
しかし、努力や辛抱が大事とは言っても、やっていることが「自然の摂理」や「道」に反するような場合は、どれほど取り組んでも成果は出ないということは忘れないようにしましょう。
松下幸之助氏の凄いところ!
経営の神様と呼ばれる松下幸之助氏ですが、どんな所が凄かったのでしょうか。私は、「謙虚さ」と「熱心さ」、そして「達観」だと思います。
「謙虚さ」
「謙虚さ」に関しては、分からないこと、知らないことはどんどん質問し、時に相手が新入社員や事務員さんであっても遠慮なく尋ねていたと言います。また、下や周りからの意見でも即座に否定することなく「いい考えだね」「そういう考え方もあるね」と言った肯定的な言葉で返したそうです。
また、仕事に関しても「従業員に仕事を任せる」ということを実践しています。勿論、「従業員を信頼すること」を大前提にしているのですが、その反面、自分よりも優れた才能や知識を持っていることを素直に受け入れ、自分がやるよりもその従業員にやらせた方が上手くということを理解していたからこそ任せた訳です。そして、本書の中で「自己観照」という言葉を紹介しているように、自分自身を外から冷静に観察すると言った姿勢も忘れていません。
「熱心さ」
「熱心さ」に関しては、「成功とは成功するまで続けること」という言葉に代表されるように、根気強く辛抱強く努力を続けています。
また、常に気づきや改善を心がけ、従業員教育の際も、本気で(3時間ぐらい)叱っていたそうです。つまり、1日1日を自分の天分に従い、一生懸命生きておられたということです。
「達観」
「達観」とは、細かい事に迷わされず、道理・真理を見きわめること。また、物事にこだわらず、どうなろうとも動じない心境になるという意味です。
「運命」や「自然の理」「人事を尽くして天命を待つ」と言った言葉に代表されるように、自分ではどうしようも無い力がこの世にはあることを理解した上で、自分の力の及ぶ範囲で今出来ることを精一杯やるということを実践されています。病に対する付き合い方も、病気と仲良く親しんで積極的に近づけばそのうち向こうが逃げていくといった考え方を紹介しています。「ミクロとマクロ」というか、そうしたバランス感覚を持たれていたことも経営の神様と呼ばれる所以だと思います。
(おまけ)平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)の名言
「今やらねばいつできる。俺がやらねば誰がやる」
平櫛田中氏は、108歳でご逝去されましたが、死の直前まで彫刻を続けたと言われています。その証拠に、同氏のアトリエには30年分の木材が置かれていたそうです。
今という時は、その瞬間しかない。その一瞬一瞬を精一杯生きる積み重ねが、充実した人生を作り、若さを生み出すのです。
引用:人生心得帖(「人生を生きる」より)/著・松下幸之助、PHP文庫
まとめ
本書は、「人生観を学ぶ」という意味では、非常に参考となる本だと思います。
文字も大きく文量も少なめなので、読書に慣れていない人でも読みやすいのが特徴です(大体1〜2時間弱で読み終えることが出来るはず)。ともかく一生懸命、希望と勇気を持って人生を歩み続けていこうと思わせてくれるオススメの一冊です。
また、今回紹介した「人生心得帖」は、心得帖シリーズの中の一冊です。他に「商売心得帖」「経営心得帖」「社員心得帖」「実践経営哲学」「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」というタイトルで5冊出版されています。
この機会に他の5冊も手に取ってみては如何でしょうか?