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スマホ利用は赤ちゃん幼児・学生若者の成長・学習(集中/記憶)や精神(不安/鬱)に影響?

 
スマートフォンをおもちゃ代りにする赤ちゃんの写真
この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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先日、「【書評レビュー】スマホ脳のまとめ感想-スマホの影響・症状や予防・改善(回復)方法とは?」という記事で、スマホ等を長時間利用した際に起こりうる影響(睡眠障害、精神不調、集中力・記憶力の低下)を書評レビューとして紹介しました。

日本でも、香川県が「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」という子供がゲームやスマホを使う時間を制限する条例が施行されたことは先の記事でも触れた通りですが、著書「スマホ脳」では我々大人のみならず、子供(ティーンエイジャー)に対する影響に関しても言及しています。

「スマホ脳」で紹介されている研究の多くは「学生」を対象としたものが多いので、むしろ、赤ちゃんや幼児を子育て中の親御さんや勉強が仕事ともいうべき学生、或いは学生を子に持つ親御さんにこそ、読んで欲しい一冊とも言えます。

そこで今回は書籍「スマホ脳」の中から、「幼児や学生、若者」にスマホがどのような影響を与える可能性があるのかに焦点を当てた内容を紹介したいと思います。

幼児の頃からスマホやインターネットを利用している

赤ちゃんや幼児がスマホやタブレットをおもちゃ代りにいじっている光景は日本でもそれほど珍しいものではありません。

特に子育てをする側の立場からすれば、赤ちゃんや幼児にバスや電車などの公共の場で騒がず静かに過ごしてもらうにはうってつけのツールだと思います。

実際スウェーデン(スマホ脳の著者アンデシュ・ハンセン氏の出身地)では、2~3歳の子供の内、3人に一人が毎日タブレットを使っているというデータがあるそうです。また、インターネットの利用に関しても、一歳未満(月齢12ヵ月まで)の4人に1人(25%)がインターネットを使っていて、2歳児は半数以上がインターネットを毎日使っているそうです。

そして、学齢期以上になると、各グラフの線が天井に届いて100%になり、7歳児のほとんどがインターネットを毎日利用し、11歳は実質全員(98%)が自分のスマホを持っていて、ティーンエイジャーは一日に3~4時間をスマホに費やしているといった調査結果が得られたそうです。

このように日本やスウェーデンのみならず他の国々でも同様の傾向があると考えられますので、いかに幼児や子供の頃からスマホやインターネットの利用が行われ、日常生活においてなくてはならないものになっていることが伺えます。

さて、あなたのお子さんには何歳からスマホやタブレット等を触らせていますか?

一方でiPhoneやWindowsの生みの親はスマホやタブレットの利用に慎重(子供たちの利用時間を制限)

日本で絶大な人気を誇るiPhoneやiPadの生みの親であるスティーブ・ジョブズ氏には子供がいましたが、「(子供たちに対して)iPadを傍に置くことすらせず、スクリーンタイムを厳しく制限していた」という有名な話があります。

また、日本でパソコンといえばWindowsですが(最近はMacユーザーも増えましたが…)、その開発者であるビル・ゲイツ氏もまた、子供が14歳になるまではスマホを持たせなかったそうです。

前述したように、スウェーデン(著者の出身地)では11歳児の98%が自分のスマホを持っている訳ですから、ビル・ゲイツ氏の子供はこの2%に属していたという訳です(対象国は違いますが、それほど珍しいということ)。

このように、スティーブ・ジョブズ氏やビル・ゲイツ氏といった世界のIT企業のトップがスマホやタブレットの利用に慎重な姿勢を見せていた訳です。
おそらく(IT機器の)開発者側だからこそ分かるスマホやタブレットの魔性の魅力(危険性や中毒性)や影響を懸念していたからだと思われます。

うちでは、子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している

引用:スティーブ・ジョブズ氏の言葉(スマホ脳p.170より)

おまけ:スティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業式でのスピーチ

残念ながら、私が和訳が綺麗でよく見ていたスピーチ動画は現在は削除されていましたので、別の方がアップしている動画を掲載しておきます。自分が知っているものと、微妙に和訳が違うようです。こちらもいずれ削除されるかもしれません。

動画ではなく、文章(日本語訳)で読みたい方は、こちら(2011年10月9日付の日本経済新聞の記事、タイトル「ハングリーであれ。愚か者であれ ジョブズ氏スピーチ全訳 -米スタンフォード大卒業式(2005年6月にて)」を参照下さい。

スマホやタブレットが持つ魔性の魅力(危険性・中毒性)に取り憑かれた人間たち

寝転がってスマートフォンを見る女性の写真

上の写真のように、「気がつけばスマホを何時間も触っていた」なんて経験は誰もがお持ちだと思います。

スマホ脳に紹介されているデータによると、

スウェーデンのティーンエイジャーは一日に3~4時間をスマホに費やしているそうです。
スウェーデン以外にも英国では子供とティーンエイジャーは毎日6時間半スマホやタブレット端末、若しくはPCやテレビを見ていたり、アメリカのティーンエイジャーは毎日9時間をインターネットに費やしているそうです。

子供(ティーンエイジャー)の可処分時間(*)から考えてみると、かなりの時間をスマホやインターネットに費やしていることが見えてきます。

(*)可処分時間とは、仕事(子供の場合は学校)や通勤時間、食事や睡眠時間といった生活する上で必ず必要な時間を差し引いた時間で、本人が自由に使える時間をいう。

本書では子供の可処分時間は10〜12時間程度(或いは8〜9時間)と述べられおり、一日3〜4時間をスマホに費やしているとすれば、3分の1以上はスマホの画面を見ている計算になります。

他にも、若者がスマホに費やす時間は4〜5時間、12〜16歳の若者の7人に1人(14%)がSNSに1日最低6時間費やしている、更には8〜9時間もスマホに費やすティーンエイジャーが2割もいたなど、かなりショッキングな調査結果が数多く紹介されています。(数字のズレは調査方法や対象国、調査対象の年代等によると推察されます)

何時間、何割といった細かなデータを気にするのではなく、若者の多くが1日のうちの自由に使える時間の多くをスマホやインターネットに費やしていて、人によっては起きている間の自由時間のほとんど全てをスマホやタブレット等のスクリーンを見ることに費やしているということです。

こうして数値(データ)で改めて表されると驚く方も多いと思いますが、ご自身や周りの様子を改めて意識して観察してみれば、確かにそうだなぁと納得するはずです。

例えば、
道端を見渡せば歩きスマホで我が物顔で歩く姿が見て取れます。また、横断歩道(或いは横断歩道のない道路)を渡る時ですらスマホを見ながら渡っています。とうに信号が赤に変わっていたり、迫り来る自動車がいることにも気づかずに。

また、バスや電車に乗っている時、或いはバスや電車待ち、信号待ちをしているとき、待ち合わせをしている時など、足が一旦止まれば、おもむろにカバンやポケットからスマホを取り出し画面に見入っています。
いつの間にかバスや電車が到着していたり、信号が青に変わっていることにも気づかずに。

そして、自転車や自動車などを運転する際にも、スマホが見られるように取り付けている始末です。安全かつ危険回避のために常に前方確認が必須であるにも関わらず。

このように、多くの人々が一分一秒を惜しむが如く、まるで取り憑かれたかのようにスマートフォンを眺め夢中になっているのです。

流石におかしい、或いは異常だとは思いませんか?

アルコールや煙草は20歳まで禁止。では、スマートフォンは?

前述したように気がつけばスマホを触っているなんてことが日常茶飯事で起きている訳ですが、流石にいくらなんでも使用過多だと感じる方が増えてきたこともあり、昨今では「デジタルデトックス」という言葉が流行っています。
心の健康のために、スマホやタブレットといったデジタル端末から意識的に離れようとする動きです。
(デジタルデバイスを使うことに、何らかのストレスを感じていることを暗に示しているとも言えます)

しかし、(本書によればデジタルデトックスを)したほうが良いと思っていても、実際に実行した人は30%にも満たないそうです。

このように「やめられない、とまらない」かっぱえびせんのような魅力を持つスマートフォンですが、何かに似ていると思いませんか?

そう。それは「アルコール依存症」です。アルコールを飲めない若者であっても、名称や症状などはある程度想像できるかと思います。

本書によれば、「依存症」とは、自分に害を及ぼすとわかっていても何度も繰り返してしまう症状だと述べられています。

ちなみにWikipediaによればアルコール依存症には、以下のような症状が現れるそうです。

  • 目が覚めている間、常にアルコールに対する強い渇望感が生じる
  • 自分の意志で飲酒をコントロールできない
  • 飲酒で様々なトラブルを起こし後で激しく後悔するも、それを忘れようとまた飲酒を続ける
  • 離脱症状(退薬・禁断症状が出る
    (禁断症状としては、頭痛、不眠、イライラ感、発汗、手指や全身の震え、眩暈、吐き気、幻覚、妄想、痙攣発作など)
  • その他身体的疾患
    (例えば、高血圧、不整脈、癌、アルコール性肝疾患(肝臓の炎症、肝硬変、肝臓癌など)

本書の定義通り、アルコール依存症は、「自分に害を及ぼす」という部分が明確に存在していることが分かります。
肝硬変なんてその典型ですよね。
だからこそ、病院にかかり医者の助言のもと治療する必要がありますし、こうした悪影響(害)を加味して年齢制限も設けられています。

Wikipediaには、「スマホ依存症(スマートフォン依存症)」という項目もありますが、調べたところによると「スマホ依存症」は公的に認められた「病気」ではないそうです。

依存症の定義に「自分に害を及ぼすと分かっていて何度も繰り返すこと」という部分がありましたが、世間一般として、スマホを使う事による「害」って何?って感じでしょうし、スマホが自分に何らかの害を及ぼしているという感覚もないのではないでしょうか。

その結果、アルコール依存症や他の依存症(ニコチン依存症、コカイン依存症)ほど、(公的に認められた病気ではないとは言え)スマホ依存症に対する危機感を抱きにくいのが現状だと思います。

しかし、我々の認識に関わらず、研究では悲惨な結果が出ています。

著書「スマホ脳」の中では、10か国の学生1,000人を集め、スマホを無くせばどんな影響があるのかを調べようとした実験が紹介されています。

結果は、半数以上が実験を中断することになったそうです。

しかも理由は全員が禁断症状のせいだということでした。
簡単にいえば(スマホがない暮らしに)我慢できなかった訳です。
中断した理由が「禁断症状」ってことですが、「禁断症状」という言葉自体が、普段アルコール依存症やニコチン依存症という言葉とセットで使われる用語ですからね、もはやスマホ依存症といってもおかしくはありません(笑)。

調査によれば、実際、若者の5割は自分がスマホ依存症だと感じているそうで、女子の場合は更に高く約6割に及ぶそうです

自覚のあるなしに関わらず、もはや多くの人がスマホ依存症に罹患しているのは間違いないですが、アルコール依存症やニコチン依存症と違って治療や克服しようとする人は少ないのが現状です。

それは前述したように、スマホによる害が何かということが良く分かっていないからですが、残念なことに研究には時間がかかるもので、通常4~5年は月日を要するようです。
ですから、現在発表されている研究は2013、2014年頃に計画され始まったものになる訳ですが、その頃(2013、2014年)に比べ、現在は更に多くの時間をスマホ(SNS、動画、ネットニュース)に費やしているので、スマホによる影響を調べようにも、研究が追いついていないと言えます
実際、計画された年以降に、TwitterやFacebook、インスタグラム等の登録者数が急増しているので、研究の計画段階からこの辺りを上手く盛り込めておらず、現在発表されている研究は一部不完全さが残る結果になっている可能性もあります。

おまけ:なぜ年齢制限があるのか

日本人であれば「アルコールや煙草は20歳以上から」ということは誰もが知っていることだと思います。

では、なぜ20歳以上からなのでしょうか。
専門的な説明はひとまず置いておいて、市井では「成長期のまだ身体が出来上がっていない段階でこれらを摂取すると、身体や成長に悪影響を及ぼすから」といった理由を聞かされながら育ったのではないでしょうか。

本書では、また違った視点で述べられています。

それはドーパミンと若者(年齢)の関係です。
ちなみに、「ドーパミン」は報酬物質と呼ばれ、満足感を感じさせ、それをしたいと思わせる物質のことです。

ドーパミンが一番活発なのはティーンエイジャーの頃と言われており、大人よりも若者(ティーンエイジャー)の方が依存症になるリスクが高い訳です(アルコールの年齢制限もこうしたことが要因の一つと言えます)。

しかし、アルコールだけでなく、スマホにもそれ相応の依存性(中毒性)があるのは先に説明した通りです。

(若者の方が)依存症になるリスクが高いにも関わらず、実際には大人よりも若者の方がスマホを使う時間が長くなっているため、むしろ依存症に拍車をかける組み合わせ(若者とスマホ)が出来上がっているような形ですから、より一層スマホ依存症(スマホ中毒)に罹る若者が増加していくだろうと推察されます。
(ex.スマホに費やす時間:大人4時間/日、10代の若者4~5時間)

赤ちゃんや幼児に与える影響

さて、前置きが長くなりましたが、ここからはスマホやタブレットといったデジタル端末がどのような影響を与えるのかを、みていきたいと思います。

概ね上記関連記事の中で紹介したように、精神不調や睡眠障害、集中力・記憶力の低下といったことがスマホによる影響だと言えますが、著書スマホ脳に掲載されている研究結果の中でも、赤ちゃんや幼児、学生や若者に関係するものを重点的に紹介したいと思います。

本書では、アプリ(仮想)と本物(リアル)の差が、幼児たちの成長に影響を与える可能性があることに言及しています。

例えば、幼児が遊ぶようなもの。
アプリのパズル(或いは積み木)と本物(実物)のパズルを比較してみましょう。
大人にとって、アプリでやるパズルも、実物でやるパズルも大きな違いはないと感じると思います。

ですが、幼児にとっては違います。
本物のパズルに触ることで、指の運動能力に加えて、形や材質の感覚を身に付けるそうです。
こうした感覚は、画面越しでは決して得られないものです。

手のみならず、実物であれば、足や皮膚、さらには口(で噛んだり)で触れるといった行動もとれます。
(良い例えではないので、あくまで仮定の話ですが)パズルや積み木を誤って口に含んでしまったりすれば、そうした行為が危険だということを学ぶことにもなります。

その他にも、紙とペンで書くという運動能力が文字を読む能力とも深くかかわっていたり、普通に遊ぶ代わりにタブレット端末やスマホを長時間使っている子供は、のちのち算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できないといった研究も報告されているそうです。
加えて、タブレット端末ばかりで遊んでいる子供たちだと、そもそも身体を動かす機会が少ないので運動能力自体が向上しにくいと考えられます。

大人にとっては、アプリ(架空)と本物(リアル)もたいして変わらないと思うことでも、幼児にとっては大きな差になる可能性があるということです。
アプリ(架空)は「場所を問わずに出来る、お金をかけずに済む」など便利ですが、しかし本物(リアル)との差があるということ、そしてその差が幼児などの成長段階の子たちには影響を与える可能性があるということを覚えておく必要があります。
また、そうした差がパズルや積み木に関わらず、色んなケースで起こりうるということを想像できるような頭(子育て脳)を養っておくことも親御さんたちには必要なのだと思います。

学生や若者に与える影響

学生と言えば「勉強」「学習」が仕事のようなものですから、まずはその点から見ていきたいと思います。

人間にはマルチタスクは出来ない

資格学校の自習室や有料自習室等で学生や(資格の)受験生の勉強する姿を見る機会がありましたが、概ね以下のような2タイプに分かれると思います。

1つ目は、勉強とスマホの時間(兼休憩)が区別できているタイプです。

(一定時間)勉強
→休憩もかねてスマホを見る
→勉強
→休憩兼スマホ
→勉強
→休憩兼スマホ
→勉強・・・続く
(そして、気が付けば、勉強→スマホ→スマホ→スマホになっていたりすることも(笑))
といった感じで勉強しているパターンで、メリハリが付いているので一見良さそうに見えますね。

2つ目は、「携帯片手に勉強(ながら勉強)」というタイプです。

これは勉強しつつも、LINEやフェイスブック、TwitterといったSNSの通知が届くたびに勉強を止めて、スマホを覗きに行き、必要があれば返信やイイね、コメント等を残し、また勉強に戻るといったパターンです。

おそらく現在の若者のスマホ事情(即レス)を考えると、この「携帯片手に勉強(ながら勉強)」のスタイルの方が大多数ではないかと思います。

まぁ、どちらのタイプの方にしろ、知っておいて欲しい言葉があります。

それは、

人間はマルチタスクが苦手だ。得意だという人は、自分を騙しているだけ!

引用:アール・ミラー(マサチューセッツ工科大学神経科学教授、スマホ脳より)

と言う言葉です。

「マルチタスク」
言葉だけ聞けば耳障りがよく、しかも出来る感もあります。マルチタスクはその名の通り、複数のことを同時にしようとすることを意味します。

ですが、著書「スマホ脳」によれば、実際にマルチタスクが可能な方は人口の1~2%に過ぎなく、大勢の人の脳はそんな風(マルチタスク)には働かないと述べています。

「いやいや、そんなことはない。実際にマルチタスクをしながらみんなやっているではないか」と反論する方もいるでしょう。
ですが、集中力を測定するテストでは、マルチタスク派の人の方が悪い結果(集中が苦手)になっています。

その理由は以下の通りです。(詳細は著書「スマホ脳」をご確認下さい)

  • 知能の処理能力(脳)には著しく限定された領域が一つあり、それは集中(という領域)である。
    私たちは、一度に一つのことにしか集中できない。
  • 複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際にやっていることは作業の間を行ったり来たりしているだけである。言うなれば、集中の対象をパッパッと変えているだけ。
  • (前述より)集中の対象を変えるだけなら、確かにコンマ1秒程度しかかからない。しかし、問題は、脳がさっきまでの作業の方に残っていることである。脳には切替時間が必要で、集中する先を切り替えた後、再び元の作業に100%集中できるまでには何分も時間がかかる

こうしたことを踏まえて、先ほど挙げた学生が取りやすい勉強パターンに当てはめて考えてみたいと思います。

どちらのパターンにしろ、勉強からスマホという2つの作業を行ったり来たりしている訳です。
特に2つ目のタイプの「携帯片手に勉強(ながら勉強)」の場合には、行ったり来たりする頻度が頻繁に行われる可能性が高いです。

携帯を置いて勉強に移ったとしても、脳の処理能力の一部はさっきまでやっていた作業(LINEやSNSでのやり取りや、その内容)に残ってしまっていて、勉強に集中できていないという訳です。
しかも、100%の集中に切り替わるためには何分も時間がかかる訳ですから、スマホを見る頻度が短ければ短いほどより一層集中するのが困難になっているということです。
(例えば、LINEを返信して、数分以内に返信が来てまた通知を確認してしまえばいつまでたっても勉強の方に集中することは出来ないという具合です)

スマホがそこにあるだけで集中力を乱す

勉強と休憩兼スマホの時間をきちんと区分(メリハリ)している方にしろ、「携帯片手に勉強(ながら勉強)」という方にしろ、おそらくスマホは手の届く範囲に置かれているのではないでしょうか。それこそ、多くの方が勉強机の上にスマホを置いているはずです。

しかし、スマホの魅力は強力です。

本書で紹介されている研究によれば、モニター上に隠された文字を素早くいくつも見つけ出す、そんな集中力を要する課題をさせる実験の際、自分のではないスマホをモニターの横に置かせた場合と、デスクの上に小さなノートを置かせた場合では、ノートを与えられた被験者の方が課題を良く解けていたそうです。

つまり、そこにスマホがあるというだけで、集中力を奪われてしまうということです。

そんなスマホの魅力について、本書では以下のように述べています。

何かを無視するというのは、脳に働くということを強いる能動的な行為だ。
・・・(中略)・・・
一日に何百回もドーパミン(*1)を少しずつ放出してくれる存在(*スマホのこと)を無視するために、脳は知能の容量を割かなければならないのだ。
スマホの魔力に抗うために脳が全力を尽くしていると、他の作業をするための容量が減る。

(*1:ドーパミンは、報酬物質と呼ばれ、満足感を感じさせ、それをしたいと思わせる物質のこと)

引用:スマホ脳(p.94-95)より

この実験では自分のではないスマホですが、勉強中に机の上に置いくのは自分のスマホです。その分、スマホを気にする力は強い訳ですから、脳的に言えば、「スマホを無視しようとより多くの容量は割かなければならない」はずです。

したがって、「勉強の途中にスマホを見ないようにしている」「いやいや通知が気にならないように、マナーモードにしているから大丈夫だ」といっても、無意識下で「スマホを触らないようにすること、無視しようとすること」に脳の容量を使っているという訳です。

おまけ:休憩中のスマホは、脳的には休憩出来ていない

また、著書:「神・時間術(著:樺沢紫苑)」の中で、休憩中にスマホを見ることについて述べられた箇所があります。うろ覚えですが、「折角、脳を休めようと休憩時間を取ったにも関わらず、スマホでニュースやSNSなどに触れてしまうと、脳が情報を浴びて疲れてしまって、結果的に脳が休まらない」といったことが書かれていました。

ですので、休憩中にスマホを触るということは、脳的には休んでいるように見えて休めておらず、全然脳(集中力)を回復させることにはなっていないということです。

さきほど、学生や資格受験生の勉強のタイプを2つ挙げましたが、「勉強する」という点においてはどちらのタイプも宜しくないということになりそうです。

【その他、参考まで】

集中出来ていなければ、当然記憶にも残りづらい(長期記憶化しづらい)

「記憶力」に関しては、「集中力」と「睡眠時間」が関係するというのは、 「【書評レビュー】スマホ脳のまとめ感想-スマホの影響・症状や予防・改善(回復)方法とは?」で述べた通りです。

改めて、以下に本書記載の記憶のメカニズムを紹介しておきますが、そもそも第一段階の「集中」の時点で躓いている訳ですから、当然長期記憶への移行もしにくくなるでしょう。

  1. 私たちはまず「何か」に集中する必要があります
  2. 集中することで脳に「これは大事な事だ」と語り掛け、エネルギーを費やす価値、長期記憶を作る価値があるのだと認識させるわけです
  3. そして睡眠中に短期記憶から長期記憶への移動が行われ、眠っている間に脳はその日の出来事からどれを保存して長期記憶を作るかを選り分けています

スマホによる精神不調

スマホと精神不調の関係について、本書では以下のような事実や調査結果や考察等が挙げられています。

  • 10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者の割合はここ10年で倍になった。
    もっとも増加したのは強い不安とうつで、一番の被害者は若い女性。
    アメリカでもうつの診断を受けたティーンエイジャーは7年で6割増えた。
  • 一日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高めている。時間が長くなればなるほど、リスクは高まる。
  • スマホを良く使うと答えた人ほど、その後睡眠障害やうつ、ストレスを感じる率が高い
  • SNSは私たちの精神状態に影響を及ぼす、常に他人と比較することがストレスになり、心に不調をきたす
  • スクリーンタイムと聞いて思い浮かぶすべてが精神的な不調に繋がっていた。
    PC、スマホ、タブレット等を週に10時間以上使うティーンエイジャーがもっとも「幸せではない」と感じている。その次が6~9時間使用する若者だ。

ここに挙げた内容は本書の一部ですが、スクリーンタイムと訊いて浮かぶ全てが精神的な不調に繋がっていたという結果や考察は無視できないものです。

特に若者の多くは、Twitter、インスタグラムといったSNSやYoutube、TikTokといったサービスを多く利用しているのだと思いますが、こうしたサービスが好まれる理由には「承認欲求を満たせる」という心理が働いていることが有名です。FacebookやTwitter等の機能である「イイね」や「(称賛する)コメント」などがその典型です。

と同時に、他人との「比較や競争」に晒されているとも言えます。
他人と自分とを比較し、或いは第三者から批評されることが続くことで、ストレスを抱え心に不調をきたす可能性があるというのが本書での考察の一つとなっています。

例えば、SNSを使っていれば、現実の知り合いのみならず、フォロワー(趣味が共通、有名人等)などの投稿が次々と流れてきます。
しかもその投稿内容のほとんどが他の人から「イイね」を貰えるように、厳選・吟味されたものです(嘘か本当かに関わらず)。

そして、人間は、自分が持っていないものに惹かれたり、ないものねだりをしがちな生き物ですから、そうした内容ばかりが流れていれば、色々と思うこともあると思います。しかも、「尊敬(憧れ)と嫉妬は紙一重」とも言うように、最初は憧れのような気持ちを持っていても、何かの拍子で嫉妬や妬みといった負の感情に変わることもあります(例えば自分より優れた要因(物やお金や立場、外見等)に嫉妬するなど)。

また「炎上」や「悪意のコメント(コメ主(コメントした側)に悪意がなくても、受け取る側(コメントされた側)が傷つく場合もある)」に晒されれば、傷ついたり悲しんだりすることも出てきます。

そもそも、SNSといったものに時間を使えば使うほど、友人知人に会ったり、運動をしたりといった時間が減少することになります。本当の人間関係に時間を使うほど、つまり「現実に(リアルに)」人と会う人ほど幸福感が増すという調査結果もあるので、SNS上の比較・競争に限らず、リアルではなくスマホに時間を費やすことでも、心に影響を与える可能性がある訳です。

まとめ

さて、今回は 「【書評レビュー】スマホ脳のまとめ感想-スマホの影響・症状や予防・改善(回復)方法とは?」の続編のような形で、スマホが赤ちゃんや幼児、学生や若者にどのような影響を与えるのか、ということに焦点を当てて紹介しました。

「スマホ依存症」と言う言葉は公的には認められた病気ではないこともあり、アルコール依存症のように「過度に摂取すると体に悪い、病気になる。場合によっては医者にかかって治療が必要な事態になる」といった意識をスマホに対して持ちにくいのが現状です。
ですが、その魅力自体はアルコールやニコチンといった認知度の高い「依存症」に匹敵する中毒性や依存性が見てとれます。(スマホを無くしたと思って、あたふたした経験を思い出してもらえば納得できると思います)
スマートフォンが与える影響に関する研究はまだまだ道半ばですが、これからは「スマホがあれば便利で楽しい」という目に見える一面のみならず、スマホを使いすぎることによる影響(精神不調(ストレス・鬱)、睡眠障害、集中力・記憶力の低下)も考慮し、使用制限や使い方(勉強する時は手元にスマホを置かないなど)を工夫するといったことも必要になると思います。

気付かないうちに、スマホ依存症になっていませんか?


【本記事のまとめ】
・幼児の頃から、スマホ或いはインターネットに触れている
・一方でIT企業のトップは自らの子供たちにスマホやタブレットの使用を制限していた。それはスマホやタブレットが持つ魅力や影響を懸念し、慎重になっていたからだと思われる。
・「スマホ依存症」という言葉を作り出すほど、「スマホはやめられない、とまらない魅力を持つ。そして多くの人(若者の5割)がスマホ依存症に罹患しているような状況である。
・赤ちゃんや幼児にとって、アプリ(仮想)と本物(リアル)の違いは大人が考えるほど大きい。育児をする親御さんはこうした差異があることを理解し、上手くアプリと本物を使い分ける(子育て脳を養う)必要がある
・勉強と休憩(兼スマホ)でメリハリをつけるにしろ、携帯(スマホ)片手に勉強(ながら勉強)するにしろ、集中力という点ではどちらのやり方も悪影響である。
・記憶のメカニズムからすれば、折角勉強しても、集中して勉強出来ていなければ長期記憶にはつながりにくい。
・スマホやSNS等に費やす時間が長ければ、不安やうつに繋がりやすい。
・SNS等では常に比較され、批評されるため、ストレスや不安を抱え心に不調をきたしやすい。
この記事を書いている人 - WRITER -
経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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