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【天才・羽生善治氏講演会】決断力を磨く-永世七冠タイトル通算99期伝説の強さ凄さの名言

 
将棋の写真
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経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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先日、藤井聡太八段(タイトル獲得時は七段)が棋聖のタイトルを獲得しました。現役最強棋士と言われる渡辺明二冠(タイトル戦当時は三冠)を破っての勝利、かつ最年少でのタイトル獲得だったので特に話題になりましたね。

さて、今回は「将棋繋がり」で羽生善治九段(以下、羽生九段、又は同氏という)の講演会の内容を紹介したい思います。

【注意事項】
この講演会は2013年頃のお話ですが、2018年あたりまで同一テーマでお話をされているようなので、今でも役立つ普遍的な内容だと思います。

今の若い人達は「羽生さん」と言う文字を見ると、フィギアスケート選手の 「羽生結弦」さんを想像する方も多いと思いますが、私の時代は「羽生さん」と言えば「将棋!」「天才棋士=羽生善治」でした。

とは言え、「はぶ(さん)」と「はにゅう(さん)」どちらも三冠を達成していたり(フィギアの三冠は、オリンピック、世界選手権、グランプリファイナルを制すること)、お互いが国民栄誉賞を受賞していたりして、字面が同じ「羽生」だけに、ややこしかったりするようです(笑、ピクシブ百科事典より)。

羽生善治九段とは?

さて、羽生善治氏と言えば、

・「史上初の七冠独占」
・「永世七冠」(名誉NHK杯選手権者を含むと永世8冠)
・「国民栄誉賞(受賞者)」

などが頭に思い浮かぶのではないでしょうか?

あとは、寝癖を付けたまま対局するのも有名でしたよね。
そんな天才棋士でありながら、どこか変わった?抜けた?ところも相まって、知名度・好感度共に高い羽生九段ですが、その実績も天才棋士の名に恥じないものです。

・タイトル獲得 99期
・最高同時タイトル 7冠
・歴代勝利数1位 1434勝(現在も更新中)
・最多永世称号獲得 8冠
・連続タイトル保持 27年9ヶ月

ここにあげたのはほんの一例ですが…、もっと分かりやすくその「凄さ」を端的に表現した話があります(2016年度以前の有名な例え話)。
それがこちらのやり取り↓

友A:羽生(善治)はどれくらい凄いの? 
友B:簡単に言うと日本の将棋には7つのタイトルがある 
友A:うん 
友B:過去10年間だと、延べ70人のタイトルホルダーがいるわけだ 
友A:うんうん 
友B:その70人のうち、半分の35人が羽生だ
友A:( ゚д゚ ) 

引用:羽生善治の「凄さ」を表した有名なコピペ

1つタイトルを獲得するだけでも難しい」と云われる将棋界です。
それを一度や二度ならず通算で99期(99回)、同時に7タイトルを独占したこともあります。また約27年間に渡って何らかのタイトルを保持していたことを考えれば、いかに長きに渡り第一線で活躍しているかが理解できると思います。

ちなみに、羽生九段はチェスも嗜んでいて、フランスチャンピオンと引き分けるなど日本国内屈指の実力があります。日本一になったこともあります。
(現在では選手としての大会出場は少なくなったようですが…)
しかも、チェスの大会に出場するために多忙な中、英語も勉強し英語のインタビューに応じられるほどのレベルです。

講演会の内容

注意書き
2013年頃にお聴きした羽生善治氏の講演会のメモをもとに記事を書いています。
記憶が曖昧な部分もありますので、一部講演内容と異なる部分や聞き違えている部分もあると思いますので、その点ご了承下さい。
また、本記事内容については、同氏著書「決断力」の内容の一部を補足として取り入れております。

「直感」「読み」「大局観」の3つを駆使して決断する

一般に将棋を指すときは、ある局面において約80通りの指し手があるそうで、そこから2、3手に絞り、最終的な1手を指していく訳ですが、この過程の中で以下の①〜③の3つを駆使して戦っているそうです(羽生九段に限った話じゃなく、プロ棋士はみんなこの3つを用いているとのこと)。

①「直感」…経験則で一瞬で判断。ピントを合わせるような作業
②「読み」…所謂、シミュレーション
③「大局観」(木を見て森を見ずの逆バージョン、方針や方向性を捉える、全体を判断する目)

少し補足すると、80通りの差し手から3手に絞ったとして、その3つの候補から更に3つ候補があるとすれば、その時点で9つ(3×3)。
仮に10手先まで考えると3の10乗となり、59,049通りとなります。
流石にその全てを読むことは難しいので、直感と大局観を駆使して選択肢(指し手)を絞るという感じです。

羽生九段曰く、その中でも10代は勢いもあり瞬発もあるので「読み」が中心、年齢が上がるにつれて「直感」と「大局観」の比重が大きくなっていくそうです。
ちなみに、「直感」に関しては、「思いきりや取捨選択することが大事」。大局観に関しては「方針や方向性に沿って考えることで無駄が省ける」との説明がありました。

羽生善治氏の教え
「直感」「読み」「大局観」を駆使して決断する

長考に好手なし。調子の良し悪しが良い決断に繋がる

将棋の中では「長考」というものがあります。その名の通り、「長く考える」ということです(一般に1時間以上を長考扱い?)。

そして、棋士は100〜1,000手先まで読めるそうです。
羽生九段も1時間あれば、500手とか、1,000、2,000手読むことが出来ると仰っています。
「では、長考すればそれだけ良い手が打てるのではないか?」と素人考えで思ってしまいますが、どうやらそんなに簡単なものでもないようです。
羽生九段曰く「長考に好手なし」とのこと。
つまり、長く考えたといって必ずしも正しい判断が出来るとは限らないそうです。「何時間も考えて選んだ手と数分で考えた手が、結局同じ手を選択する」ということもあるそうです。

著書「決断力」によれば、これまでの経験を踏まえると「直感の7割は正しい」と思えるそうです。
そもそも、1時間以上考えている時は、考えているというよりもむしろ迷っている状態なんだそうです。
しかも、ある手筋を考えていてこの手筋はダメだと判断した際に、長く考えた手筋だと情(愛着)が移ってしまって捨て去るのが逆に難しくなるそうです。

そうした中、最終的な1手を決める時、「A」か「B」か悩まずに割り切れるかどうかを左右するのは「調子の良し悪し」なんだそうです。
羽生九段の講演時のニュアンスとしては、A,Bどちらが正解かは分からないけれど、適当なところで見切りとか踏ん切りが付けられる時を「調子が良い」と表現されていたように感じました。

一方で、いかにも勝負を左右しそうな「運」とか「ツキ」「バイオリズム」といったものについては次のように述べています。

それら(運とかツキ)は、確かに人を惹きつける魅力の言葉です。
ですが、それに固執すると、自分なりのベストがお座なりになる。そうした運やツキに左右されず、自分の実力や地力をつけることが何よりも大切だとおっしゃっていました。要は運とかツキとかに惑わされず自分のベストを尽くせということです。

羽生善治氏の教え
「長考に好手なし」。調子の良し悪しが良い決断に繋がる。
また運やツキにすがらず、自分のベストを尽くせ

おまけ:3手先の読み

羽生九段の大先輩にあたる、藤田泰夫棋士という方が「3手先の読み」ということを仰ったそうです。
3手先とは「1手目:自分→2手目:相手→3手目:自分」という流れになります。

1手目と3手目は自分(の意志)ですから、重要なのは「2手目」の相手の指し手です。これをどれだけ正確に予想出来るかが鍵となります。
自分の手番で差す際には、「自分がこう指したら、相手はこう来るだろう、それなら3手目にはこうしよう」といった読みを踏まえて指す訳ですから、2手目の相手の差し手が自分の予想と外れればそれまで何百手読んでいたとしても、その読みは無駄(失敗)となる訳です。

では、2手目をどう考えれば上手くいくかについて、「相手の立場に立って、尚且つ相手の価値観で判断すべき」だと述べています。
しかし、良くやる間違いが、「相手の立場に立って、自分の価値観で考えてしまうこと」です。
これは将棋に限らず、職場や家庭、友人関係などでも当てはめることが出来るのではないでしょうか。

羽生善治氏の教え
「自分の価値観ではなく、相手の価値観で考えなければならない」

結果が出ない時は「不調」なのか「実力」なのかを見極める

我々サラリーマンの世界ではあまり使わないと思いますが、勝負の世界で言うところの「不調」のときの考え方です。

羽生九段曰く、「結果が出ない時(負けが続いている時)は、それが「不調」なのか「実力」なのかを見極めることが大事」とのこと。

そして、将棋界には「不調も三年続けば実力」という言葉もあるそうです。
つまり、不調だから負けていたのではなく実力が足らなかったということです。
そうした時は、自分の努力が足りない訳なので、研鑽し次のチャンスを伺う姿勢が大切になります。

同氏の著書「決断力」の中で、「名人戦での勝利を掴む為、これまでの成功体験を捨て、一から学び直しフルモデルチェンジした米長邦雄先生の名人戦獲得の話」を載せています。
米長邦雄先生はそれまで名人戦に6度挑戦するも勝てずにいたとは言え、米長先生は最後となった名人戦のタイトル獲得前に、棋聖や棋王など通算18期獲得する名棋士です。そんな中でも若手に教えを乞うて、最先端の将棋を学び7度目の挑戦で名人位を獲得されたのです。

これは、実力不足であれば勝てるようになるまで研鑽しなさいという事例でもあり、また過去の成功体験にしがみつき「これでよし」と満足してしまい消極的な姿勢になってはならない。常に前へ進む姿勢でいなければ、そこで立ち止まってしまい後退が始まるということを伝えています。

一方で、本当に「不調」のケースもあります。
やっていることは間違っていないが、結果が出ていない状態(表面に現れていない状態)です。
本来、努力や頑張りというのは年月をかけて実を結ぶもの。だから、やっていることは変える必要はない訳です。ただ、モチベーションが落ちやすいので生活に変化を与えたり気分を変えたりするようにしているそうです。例えば、何かを始めたり、逆に今までやっていたことを止めたりといった具合です。

確かに、結果を出すべくやってきたことを変えてしまうと、今まで積み重ねた努力が水の泡になる可能性もあります。
とは言え、結果が出ていない時に自分のやっていることが間違っていないと信じてそれをやり抜くというのも、これはこれで結構難しいものだと思います。
だからこそ、不調なのか実力なのかという見極めが大切になる訳です。

羽生善治氏の教え
結果が出ない時は「不調」なのか「実力」なのかを見極める

物差しを持つ

自分の中に様々な物差しを持つ事が、不調を乗り越えたりや新しいこと始める時に役立つそうです。

この「物差し」というのは、例えば、これぐらいの時間と努力と労力を費やしたら「○○」が出来るようになるという基準のようなものです。
言い換えれば、「物差し=経験から来る予測」です。「成功体験」と言っても良いかもしれません。

自分の中に様々な物差しがあれば、新しいことを始めるときにこの物差しを当て嵌め比較しながら行うことが出来ます。
あの時はあのぐらい時間が掛かったから、今回はもう少し(成果が出るまで)時間がかかるなといった感じです。
逆に、比較できないとどこまでやれば上達するのかといった見通しが立たずに途中でやめてしまう可能性もあります。
だから、様々な経験の物差しを持つことは、好不調の判断や指し手の決断、新しいことへの挑戦などいろんな場面で役立ちます。

羽生善治氏の教え
「物差しを持つ」。それが新しいことへの挑戦や決断する時の手助けとなる

緊張(プレッシャー)はブレイクスルーできそうな時に来るもの

最近はスポーツ選手のインタビューでも、「楽しんでやりたい」という答えが帰ってくる時があります。

羽生九段も、リラックスして落ち着いている時が一番パフォーマンスを発揮できると仰っていました。その次がプレッシャーがかかっている時(緊張している時)、そして一番最悪なのがやる気のない時と付け加えています。

どんな場面でも緊張、プレッシャーを感じずリラックス出来れば良いですが、オリンピック選手でも本番で自分のベストパフォーマンスを出し切ることは難しい訳です。
でも、緊張自体もそこまで悪いものではありません。
何故なら、緊張している時は、やる気はあって良いところまで来ているということ。もう少しでブレイクスルーできそうな時に、プレッシャーがかかりやすいからです。
著書「決断力」の言葉を借りれば、「置かれている状況がその人に取って乗り越えられるか、乗り越えられないかの瀬戸際の時に感じるのがプレッシャー」と表現しています。そもそも、簡単に乗り越えられる局面(仕事など)であれば、プレッシャーは感じないはずです。

だから、プレッシャーがある方が良いこともあります。
例えば、作家が締め切り間近になると筆が乗って良い作品が仕上がったり、スポーツ選手が良い記録を出したり。
リラックス、伸び伸びも良いですが、プレッシャーをうまく活用することで、自分の能力や才能を開花させる手段にもなりえて、自分を高めることにも繋がります。

羽生九段自身は、「公式戦で考えている時(対局している時)」は、「実力を付ける時間」だと思っているそうです。
タイトル戦は言わずもがな公式戦のようにプレッシャーがかかる場面では、そのプレッシャーすらも前向きに捉え、自分の成長の糧になっていると考えてい流ようです。

羽生善治氏の教え
「緊張はやる気があって良いところまで来ていて、ブレイクスルー出来そうなときにかかるもの。緊張すらも前向きに捉え自分の成長の糧にする」

(棋譜や定跡の)記憶は音楽のフレーズと一緒。五感を活用すると記憶に残る

棋士は、定跡や自分の対局、棋譜を覚えていると言われます。

羽生九段曰く、一般の人が「歌を覚えるようなもの」と同じ感覚だと述べています。
例えば、あいみょんの「マリーゴールド」と言われたら、
「麦わらの帽子の君が
 揺れたマリーゴールドに似てる
 あれは空がまだ青い夏のこと
 懐かしいと笑えたあの日の恋」
といった歌詞をスッと口ずさむことが出来るのではないでしょうか?

棋士の方達は、それと同じように棋譜を記憶しているという訳です。
将棋には法則性や連続性といった流れが存在します。
これが来たらこれが来るし、こうなるにはその前にこうなっていないとダメだといったものです。そうした流れで覚えているからこそ、感想戦などで一局丸ごと再現できたりするのです。

一方でルールを覚えたばかりの子供の将棋などでは逆にカオス過ぎて記憶するのが非常に難しいそうです。何故なら、手順、定跡、そういったものは無視した規則性のない指し方だからです。

今は、棋譜もデータベースに大量に保存されているので、見たいものをすぐに取り出して確認できるそうですが、パソコンの画面で棋譜を見ただけじゃ忘れてしまうそうです。

ではどうするかと言えば、「実際に指したり、伝えたりすることで記憶に残る」そうです。つまり、手や耳といった五感を活用することで記憶が正確に残るという訳です。

羽生善治氏の教え
「記憶は音楽のフレーズと一緒。五感を活用すると記憶に残りやすい」

忘れることは仕方がないこと、理解しておけば必要な局面で思い出す

「忘れること」に関しては、「仕方のないこと」だと割り切っていて、その代わり必要な局面で思い出せれば良いと述べています。
その為には「理解」しておくことが大事で、単純な記憶・暗記だけだと忘れたら思い出せないそうです。

資格試験の例で恐縮ですが、確かに理解していれば普段はすぐに思い出せなくても、問題として出された時にそれがきっかけ(フック)となって、その論点の重要な点というものが思い浮かび、その思い浮かんだ内容と問題文を見比べて正誤を判断していきます。
資格試験の勉強も、テキストを読んだり、過去問や予想問題を解いたりと、目と耳(時には口も)を使って記憶の定着を図っていると言えそうです。

羽生善治氏の教え
「忘れるのは仕方がないこと。但し、理解していれば必要な局面で思い出す」

発想には限界がある、ならば人から学ぼう

対局が終了した後、対戦相手と共に感想戦(反省会)を行います。
反省会の名の通り、反省はするが後悔はしない(割り切って引き摺らない)そうです。
感想戦の良いところは、相手の感想を聞くことで違う発想(アイデア)を得られることと、理解・進捗が早まるということでした。
羽生九段も、相手との対局の中で、様々な発見や新たなアイデアが生まれ、楽しさや面白さを味わうことで充実感にも繋がっているそうです。

このように天才と呼ばれる方であっても、一人の発想には限界があることをしっかりと自覚し、相手から学び取ろうという姿勢が伺えます。

羽生善治氏の教え
「一人での発想には限界がある。他人の意見も取り入れよう」

ミスをしないより、ミスを重ねないことが大事

年間60〜70試合対局するそうですが、100点満点の試合というのは年に1回程度。つまり、大部分どこかまずいところがある訳です。

だから、ミスを続けない、ミスを重ねないことが大切だと仰っていました。
ミスを重ねる原因としては二つあります。
一つ目は、どうしようと慌てたり、冷静さを失うから。
二つ目は、(最初のミスによって)これまで築き上げた方針や構想が崩れ、より難易度の高い選択を迫られているから。

こうしたことへの対策は「一息つく」こと。
一貫性、継続性を一旦なしにして(リセットして)、初めてその場面を迎えたものとして一から考えるのが良いそうです。

「見出し:(棋譜や定跡の)記憶は音楽のフレーズと一緒。五感を活用すると記憶に残る」の中でも触れている通り、将棋は継続性や連続性といった流れが存在する競技です。
ミスをして、更にミスを重ねるとその前後で状況は変わっている訳です。だからこそ、一息入れて一旦リセットして考え直すことが重要になります。

羽生九段曰く、ミスをしたから上手くいったということもあるそうです。
自分がミスをして、それがトリガーとなり逆に相手のミスを誘発したり、そうした繰り返しの中で、最終的にミスをした方が負けというのが将棋だそうです。

今や世の中には沢山の情報が溢れています。
良く言えば選択肢が多いと言えますが、悪く言えば後悔しやすい時代とも言えます。

30個の中から1つを選ぶにしろ、3個の中から1つを選ぶにしろ、選べるのは一つだけです。だから、選択肢が多ければ、「やっぱりあっちを選んでおけば良かった」と後悔してしまうことになるからです。

将棋では10手先は予想できるが、本当に起きる10手先は読めないそうです。
だからこそ、仮に一番の手ではなかったとしても、二番の手だったという、方向性を間違わず、致命的なミスをしないことが大切になる訳です。

羽生善治氏の教え
「ミスをしないより、ミスを重ねない」

小さなリスクを取り続ける

「リスク」という言葉には、先の心配を悲観的に捉えてしまうイメージがあります。そして、どこまでリスクを取るか、それはアクセルとブレーキの関係と同じようなものです。

例えば、調子が良い時は、自分の判断でどんどん(リスクを取って)進めますし、調子が悪い場合は慎重になって(リスクを取らず)セオリー通りに進めることもあります。
また、若い頃はリスクを分かってない。だから、知らない間にリスクをとっているなんてこともあります。
一方で、年を重ねるとリスクを取らなくなります。もしくは知らない間にブレーキを踏んでいることもあります。

将棋の世界では、リスクを取らないと少しずつ弱くなるそうです。
何故なら、成功・失敗の体験が積み重なると、ある程度リスクが分かるようになる為、危ない橋を渡らなくなります。その為、勝つためにリスクを取るのではなく、リスクを避けようとしてしまいます。
リスクを取らないということは、安全地帯にいて「変わらない」ということです。周りは変化しているのに、自分はリスクを取らず避けてばかりでは変化していないと、段々と対応出来なくなって弱くなっていくという訳です。

そこで、羽生九段は、小さなリスクを取り続けています。
その方が、一度に大きなリスクを取るよりも安全ですし、小さなリスクでも、一定期間後に改めて振り返るとそれなりに大きなリスクを取れているし、そのおかげで前とは違う方向性や位置に立てていて変化しているそうです。

また、著書「決断力」の中で、リスクを避けていてはその将棋に勝ってもいい将棋を残すことが出来ないので、「積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にする」と自分に言い聞かせて次のステップとしているそうです。

羽生善治氏の教え
「小さなリスクを取り続ける」

感想

将棋の棋士って指す前に何手も読んでいて、ある種自分の想定内の中でスマートに指しているのかなと思っていましたが、実際には五里霧中の中、数ある選択肢の中から「直感」「読み」「大局観」といったどちらかと言えば経験・本能的なものを駆使しながら最善と思える手を打っているんだなと、これまで思い違いをしていたことに気付かされたものです。

羽生九段の「すごさ」はこれまで積み上げた実績もありますが、講演会や著書から分かる通り、羽生九段自身が幾つになっても挑戦し学ぶ姿勢を持ち続けていることだと思います。
現在(投稿時点)49歳です、未だにチャレンジャー精神満載で、公式戦でも「あえてこの形でいくのか」という戦い方を見せてくれています。
そうした姿勢の裏には「負けたとしても、実戦(本番)でチャレンジすることでしか得られないものがある」という考え方があるんだろうなと思います。

ちなみに、講演会自体は、優しい口調で将棋の話を交えつつ、ちゃんと将棋に疎い方でも理解できる内容でした。

まとめ

将棋について私自身は、コマがどのように動くかと言った基本的なルールしか知りませんが、史上初の七冠独占など天才として名を馳せる羽生九段の考え方には興味があったので、同氏の著書も多数好んで読んでいます。
羽生九段の著書(「決断力」「大局観」「捨てる力」「適応力」等)は、将棋をあまり知らなくても読みやすいものばかりなので、皆さんも、興味があれば是非手に取って読んでみて下さい。

【羽生善治氏 講演会「決断力を磨く」のまとめ】
(注意:講演会のメモに加えて、同氏著書「決断力」で書かれている内容の一部を補足として付け加えております)
1 . 「直感」「読み」「大局観」の3つを駆使して決断する
2 .長考に好手なし。調子の良し悪しが良い決断に繋がる
3 .おまけ:3手先の読み
4 .結果が出ない時は「不調」なのか「実力」なのかを見極める
5 .物差しを持つ
6 .緊張(プレッシャー)はブレイクスルーできそうな時に来るもの
7 .(棋譜や定跡の)記憶は音楽のフレーズと一緒。五感を活用すると記憶に残る
8 .忘れることは仕方がないこと、理解しておけば必要な局面で思い出す
9 .発想には限界がある、ならば人から学ぼう
10 . ミスをしないより、ミスを重ねないことが大事
11 .小さなリスクを取り続ける
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