求人募集前に企業が決めることは「求める人物像(性格人柄)」-学歴・スキルより優先すべし
本記事では、求人募集・採用面接を行う前に企業側が決めておくべきポイントを紹介します。
主に求人者(企業)側のお話となりますが、求職者(就職活動)側であっても採用時における求人者(企業)側の考えを知っておくことは、仕事選びや面接時のアピールに役立つ部分もあると思います。
企業は「人」を求め、人は「職」を求める…そこに生じる違和感
(もしかしたら以前別の記事で触れたことがあるかもしれませんが…)
「求人者」と「求職者」という言葉を見るたびに、いつも思うことは企業側は「人」を求め、人は「職」を求めるという表現が使われていることです。
しばし「入社後に、求人者と求職者との間のミスマッチが原因で、早期離職が起こる」なんて言葉が飛び交いますが、もし文字通りお互いの求めているものが「人」であり「職」であれば、こうしたミスマッチが起こるのも当然なのかもしれません。
今述べたことは、ただ単に言葉の揚げ足を取っただけの話だと切り捨てることもできますが、実際はどうでしょうか。
意外と企業は職(スキルや経験)ではなく、人(性格・人柄)を求めている節がある
企業側は、仕事の出来不出来よりも、その人の性格や周りとの協調性と言った部分を意識的にしろ無意識にしろ求めている部分があります。
もちろん、スキルや得意不得意に関して一定のふるい分けは必要ですが、「未経験でもOK」という求人広告を見れば分かる通り、企業側にも経験がなくとも採用後に教育をし、しかるべき経験を積めば、ある程度出来るようになる(一人前になる)という計算が働いていることは明らかです。
(補足:求職者から少しでも多くの申込みが来て欲しいという狙いから、「未経験者でもOK」という撒き餌をチラつかせている可能性もあります…)
実際、新卒採用では新卒の学生の実務能力は皆無とも言える訳ですから、本人の性格や人柄、考え方といったものが判断基準の大部分を占めているとも言えます。
上記関連記事の中でも触れている通り、人間は「好き・嫌い」と言った感情に左右される生き物です。
企業文化や職場の雰囲気にもよりますが、意外と仕事の出来不出来よりも、真面目さ、一生懸命さ、思いやりや気遣いの有無といった仕事以外の人間の内面(性格・協調性等)を優先してしまうことは多々あるものです。
あなたの職場でも、多少仕事の出来が悪くとも、人懐っこい性格で周りに支えられながら一生懸命働く愛されキャラのような社員がいたりしませんか?
(ただし、ぶりっ子や媚を売る、胡麻を擦るようなタイプは除きます(笑))
一方で、仕事は出来るけれど、人間味がなかったり、周りの邪魔や迷惑をかけたり(騒がしい)、自己中心的(わがまま)な方。
仕事の質やスピードは向上するかもしれませんが、他の社員による陰口が温床となり、職場のギスギス感に繋がる可能性も否定できません。
企業側が求人するにあたり、どんな仕事(職)をさせたいのか、その仕事をするにはどんなスキルや才能、経験が求められるかももちろん大切ですが、職場にあった人(性格・人柄・感性)を選ぶという点も同時に重要だということです。
求める人物像に「性格・人柄」を重視すべき理由
「三つ子の魂百まで」
「三つ子の魂百まで」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
この諺は「幼いころの性格は、年をとっても変わらない」という意味で用いられます。
ちなみに 「三つ子」は「幼い頃」と「百」は「年老いても」という意味で、三歳、百歳と言った具体的な年齢を指している訳ではありませんので勘違いしないようにしましょう。
さて、話が少し逸れてしまいましたが、私が言いたいことは「性格はなかなか変わらない」ということです。
書評レビューやアドラー心理学等でもお伝えしている通り、コントロール出来るものは自分のみであり、他人はコントロール出来ないものと考えるべきです。
従って、他人の性格や人柄を変えること不可能だと思って下さい。
(自分の行動や考え方を変えることで、相手にも変化が現れる場合もありますが、変化が起こらない場合も多分にあります)
きつく言えばこちらの指示に従うかもしれませんが、面従腹背の状態で無理やり従わせている場合、いつまでたっても個であり、組織として力を発揮することは叶いません。
だからこそ、自社の企業文化や組織風土(職場の雰囲気)にマッチする人を採用するということはとても大事なことなのです。
「腐ったみかん理論」
古い話ですが、「腐ったみかん理論」「腐ったみかん方程式」と呼ばれる言葉があります。
武田鉄矢 氏主演のドラマ「3年B組 金八先生」をご覧になったことがある方ならおそらくピンとくると思います。
(注:ドラマ内では金八先生ではなく、米倉先生が話した言葉(台詞)です)
その台詞とは、以下のようなものです。
(引用:TVドラマ「3年B組金八先生」より)
うろ覚えでもこの言葉を聞いたことがある方はそれなりにいると思います。
実は、この言葉に続く台詞(言葉)があり、もっと深い意味もありますが、それはいずれ別の記事で紹介したいと思います。
同じような意味のことわざとして「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉もありますが、いずれにしろ、「悪いものが良いものを圧倒してしまう、悪影響を与える」といった意味で捉えて頂ければ良いでしょう。
つまり、性格や人柄、協調性といった部分に難がある場合は、会社にとって悪影響を及ぼす可能性もあります。個々人で仕事が完結するような場合はまだしも、組織のチームワークが鍵を握るような場合には注意すべき点だと思います。
退職理由や離婚理由からも明らか
一昔前までは「就職はその会社と結婚することを意味する」なんてことが言われたりもしました。
実際、大学卒業から定年(65歳)まで働くとすれば、40年以上をその会社と共にすることになる訳ですから、「就職=結婚」といっても差し支えないほどだったと思います。(もちろん昔に比べ、定年までずっと同じ会社で働くことは難しくなっていますが…)
そうした中で、退職や転職する理由を調べてみると、ステップアップの為、自己実現のためと言った美辞麗句が並びますが、本音を伺うと、給料アップといった現実的な話と同じくらい「上司や職場の人間関係が合わない」という理由も上位に位置しています。
雇われる側においても「職場の人間関係」というのは非常に重要な要素であるということです。
仮に就職=結婚と考えたならば、退職することは「離婚」とも言えます。
ちなみに、離婚原因は「性格が合わない」という理由が一番多くなっています。
(裁判所・司法統計資料:令和元年度:婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所【PDF版】)
離婚の原因はさておいても、その会社の雰囲気にあった人を雇うことは「職場の良好な人間関係構築」の上でも重要な要素だと言えると思います。
採用活動における「学歴」は重要なのか?
採用活動にあたって気になるのが「学歴」だと思います。
特に中小企業の採用担当者などは「学歴で採用を決めてしまう」ケースが多いようです。
「今回は優秀な新卒(中途)が取れた。社長に良い報告ができる」と得意げに語る採用担当者に話を伺うと「有名大学卒/有名企業出身だから」といった根拠があるようで根拠のない理由を話す方もいらっしゃいます。
どうやら頭の中で、「学歴が良い=優秀」という方程式が成り立っているようです。
この方程式の正否については、社会人の方なら皆さんご経験のある通りです。
社内を見渡せば、有名大学卒だからと言って必ずしも仕事が出来たり、出世をしているかと言えばそうではないはずです。
学歴は凄いけどそこまで仕事はできないという社員や、逆に学歴はそこまで良い訳ではないのに仕事が出来る社員というケースを経験しているかと思います。
このようにテストで点数が取れる頭の良さが、それすなわち仕事の成果に繋がると言う訳ではないと言うことです。
例えば、近年、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスでは育成出身の活躍が目立ちます。
ドラフト/育成という入団時の経緯は違ったとしても、プロの世界に入ってからの頑張り次第で育成選手でも一軍レギュラーを掴むことは可能だということです。(もちろん、本人の並々ならぬ努力と練習の賜物であることは間違いありませんが)逆に、ドラフト上位の選手であっても、入団数年後には戦力外やトレードになることもありますから、努力や練習といったものが大切であることは間違いありません。
同じように、社会人も入社してからが本当の勝負です。
「自分に与えられた仕事に関してはプロ意識をもってやらなければならない」と言われるように会社というのもある種のプロの集まりです。
プロ野球のように簡単に戦力外(クビ)にすることは出来ませんが、本来であればクビにならないように自らの能力を磨かなければならない訳ですから、たとえ学歴が良くなくとも、その分努力や向上心を有する人の採用を目指すべきだと思います。
「学歴の良い人」を採用したがる理由は、社長への説得材料と自分の力量アピールにもなるから
おそらく採用担当者も数ある社会経験の中から「学歴が全てではない」ということは理解しているはずです。
ですが、「学歴」という目に見える言葉は強い説得力を持つのも事実です。
例えば、社長から「新卒/中途採用の状況はどうだ?」と尋ねられた時に、「○○大卒の子が応募してきていて、今度、面接予定です」「○○大卒の子を捕まえることが出来ました(内定や正式採用に漕ぎ着けた)」と返事ができれば、社長も「そうか、○○大か。優秀そうな人材が採れたな」と喜色に満ちた声で採用活動の苦労を労ってくれそうです。
このように「有名大学=優秀(だろう)」という謎の根拠は、採用担当者以外にも十分効果を発揮するものです。
「学歴」という皆が客観的に分かり納得出来る指標は、非常に便利な道具とも言えます。だからこそ、採用担当者も「学歴」を頼りがちにしてしまうという背景があります。
「学歴」の比重は会社次第だが、中小企業は現実を見るべき
学歴についてはここまで述べた通り、会社がどの程度重きを置くかに尽きます。
しかし、大企業はまだしも中小企業の場合は、有名大学と呼ばれる学生の応募は少ないはずです。自社の過去の実績からみてもそのことは分かると思います。
しかし、ないものねだりを続けていては、採用もままならないし、有名大学という色眼鏡を外さないとダイヤモンドの原石を見逃している可能性もあります。
自社の社員を今一度見直し、本当に学歴という色眼鏡のふるいが必要かどうかを考えてみて欲しいと思います。
そのためにも、社長や経営層といった会社の上層部が学歴ではなく性格や人柄といったものを重視するという方針を明確に出しておく必要があります。
そうしなければ採用担当者はいつまでたっても「学歴」という目に見える部分だけを頼り続けてしまいます。
人柄を見抜くために書類選考(履歴書)や面接が重要になるが…
会社に合った性格・人柄の人物を選べといっても、学歴やスキル以上に遥かに見えにくいものが、人間の内面(性格・人柄)です。
そこで鍵となるのが、書類選考や面接といった篩い分けなのですが、きちんと準備をして臨んだり、少しでも本人の人柄が垣間見えるように面接時の質疑応答を工夫しているといった企業は案外少ないものです。
経営層の多忙さもあり、事前準備もほとんどなく、とりあえず面接してみてその数十分間の雰囲気や質疑応答で決めている会社も多いと思います。
それこそ、ちょっと話してみてあとは学歴でということもあるでしょう。
しかし、本来は履歴書の何を見て、そこからどのような判断をするのか。
面接時における質問の意図や、質問に対する回答を企業側がどのように受け取りどう判断するか、或いは会社の求める人物像に合っていた場合には、どんな回答が予想されるのか、といったことを考え、少しでも会社の求める人物像に近い方を採用する努力と工夫が必要です。
ほかにも、様々なテスト(適性検査、心理テスト等)を用いる方法もあります。(そうした結果をどの程度重視するかは企業次第ですが…)
本記事ではこの程度の記載に留めますが、面接時に見るべき・聞くべきポイント等は別記事にて投稿する予定ですので、気長に(?)お待ちいただければと思います。
他の採用関連記事
まとめ
・「求人」するのであれば、会社にあった「人(性格・人柄)」を重視しよう
→「三つ子の魂百まで」…性格は中々変わらない
→「腐ったミカン理論」…会社に合わない人がいれば、周りに悪影響を与える可能性も
→「退職理由」…「上司や職場の人間関係」が原因で会社を辞める人は多い
・「学歴偏重」だと優秀な人材を見逃す可能性も
→「有名大学卒=優秀」ではない
→「有名大学卒」が目に見える説得力を持つのも事実
→「学歴」というフィルターを外さなければ中小企業に未来はない