日曜の夕夜に「月曜日仕事に行きたくない」と憂鬱になる社員を防止する為の組織の対策方法
以前、「仕事は人生そのもの。楽しくない、辛い、つまらない、嫌だと悩み考えながら働くのは勿体無い」という記事の中で、「サザエさん症候群」に罹らない会社作りが大事だということを話しましたが、今回はこれを少し掘り下げて考えて見たいと思います。
サザエさん症候群とは
まず、サザエさん症候群について調べてみると、Wikipediaには以下のように記載されています。
「日曜日の夕方から深夜、「翌日(月曜日)からまた通学や仕事をしなければならない」という現実に直面して憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える症状。
引用:Wikipedia「サザエさん症候群」より
同症候群の説明文の中には、「ごく軽度のうつ病又は適応障害の一種とする説もある」といった記述もありますが、多かれ少なかれ誰しも一度は「サザエさん症候」に近い感情を抱いた経験があると思います。ストレス社会の今では、むしろ、こうした感情を持つ方が当たり前とも言えそうです。
組織が提供すべき「3つの感」
さて、サザエさん症候群の説明で気になるのが「しなければならない」という文言です。
この言葉の裏には、「行きたくない」「嫌だ」「億劫だ」「気が滅入る」 といったマイナス感情が含まれているように思います。
学校や職場にしろ、不満が全くないという人は稀だと思いますが、学校でも職場でも出来る限り自宅にいるようなそれこそ「アットホーム」な雰囲気を提供できれば、こうした「サザエさん症候群」に罹る方も減るのではないでしょうか?
そこで「会社に行きたい」或いは「会社にいるのが苦痛ではない」と社員が思えるために、必要な「3つの感」を紹介したいと思います。
安心感
まず、最も重要なのがこの「安心感」です。
ここでいう「安心感」とは、社員が「自分はこの職場に居てもいいんだ」と思えるような状態を指します。
(決して、「楽しても良いとか、サボりやすい職場」という意味ではありません)
パワハラ・セクハラやいじめ、嫌がらせなど、身の危険を感じるような職場に「安心感を抱くことはない」ということは誰でも分かることです。そして、その場所で自分の存在が認められ、安心を感じる環境がなければ、社員が自分の力を十分に発揮することも叶いません。
想像してもらえば分かると思いますが、もし自分が何かする度に、或いは何か意見を言う度に、叱責や無視されたりするようなことが起こる職場であれば、出来るだけ自己主張もせず、身を潜めるように過ごすはずです。
ましてや、新しいことにチャレンジしたり、何かを改善するなどといった本来会社が求める主体的で積極的な動きからは程遠い状況に陥ります。
しかし、非常に残念なことに、「個別労働紛争解決制度」に持ち込まれる労働相談の中で一番多いのが「いじめや嫌がらせ」といったトラブルで、その数は全体の約4分の1(25%)ほどにも上ります。(参照:【職場のトラブル】相談内容のトップは「いじめ、嫌がらせ」)
いかに「社員が安心して過ごせる職場」を提供することが難しいのかが分かると思います。
有用感
「有用感」とは「自分が役に立っている」と感じる状態です。
自分のやった仕事が会社で或いは社会にとって役に立っていると感じることで人は「有用感」を得られます。
ですが、「有用であるかどうか」「役立っているかどうか」というのは、自分だけでは感じにくい面もあります。全ての仕事が表で輝いているわけでもありませんし、やりがい溢れたものでもありません。
会社の組織上、どうしても日陰の仕事と呼ばれるような「単調な仕事や単純な仕事」というのは存在しますし、それを誰かにやってもらう必要があります。
ですから、こうした地味な仕事や、やって出来て当たり前の仕事に対しても、周りから「ありがとう」「助かったよ」と言われるような職場環境が必要となる訳です。
(参照:地味目立たない見えない・やって出来て当り前の仕事も認め評価すればやる気やりがいを持つ)
しかし、売上至上主義やノルマが厳しい職場の場合、自分のことで一杯一杯で周りに感謝する習慣や相手を気遣う風土がないので、有用感を得るのが難しくなります。お互いを蹴落とし合うような個人プレーが中心で、ギスギスした職場などは要注意です。
成長感
幼少期には誰もが「自転車に乗れるようになった」「逆上がりができるようになった」「○○するのが上手くなった」など、自分で出来ることが増えるたびに、喜びを感じたはずです。
逆上がりや自転車などの場合は、「チャレンジしては失敗。チャレンジしては失敗」を繰り返し、それでも諦めることなくやり続け、やっとの思いで出来るようになった時は大きな達成感を得られたのではないでしょうか。
成長し大人になったとしても、やはり「自己成長」を感じることは大切なことだと思います。
ずっと同じ仕事を続けていれば、段々とモチベーションは下がってきますし、実際、毎日8時間も拘束されているのに、全く成長を感じられないという状況も、いささかきついものがあります。
仕事を通じて自身の成長を感じることができれば、「次はあれを出来るようになりたい」「来年はこんなことをやってみたい」といった仕事の意欲も自然と湧いてくるものです。
会社として、社員が成長を感じられるような育成プラン、キャリアプランを考えておくことはもちろんですが、失敗を責め過ぎたり、他の社員と比較しすぎたりしない、といったことも重要です。
自転車や逆上がりが出来るようになる過程では、「失敗して当たり前」「失敗を次に繋げる」という心境でやっていたはずです。ですが、もし「失敗したら怒られる」という状況にあったならば、出来るようになるまであんなにチャレンジすることはなかったのではないでしょうか?
雇用する側としては賃金が発生する以上(タダではないので)、「社歴に応じて求める能力・スキルの基準」というものは存在しますし、「失敗=損失(お金)」という側面もありますが、ある程度「懐の深さ」も見せたいところです。
(本来は、そうした能力差や成果の差に対して使用者側(経営者)が待遇差(賃金差)を付けられるように評価制度があります。しかし、評価基準が曖昧だったり、社歴で一律に評価したり、上司の好き嫌いで評価してしまうために、使用者側に「なんであいつがこんなにもらっているんだ」といった不平や不満が生じてしまっているのです)
(参照:会社の人事評価は好き嫌い相性バイアスで決まる-不満納得いかないどうでもいいが自然の流れ)
また、他人より出来ないからといって必要以上に比較したり、叱責したりすれば、今度は逆に社員の成長意欲をなくすことにも繋がりますので、育てる側(上司や先輩)の力量も重要になります(リーダーの評価項目に「部下の人材育成」を入れておくのはこの為)。「十人十色」「得意不得意」といった言葉が存在する以上、その社員の性格や能力に応じた教育・指導というものが大切になってきます。
最終的には「自己肯定感」につながる
「安心感」「有用感」「成長感」などの要素が揃うことで、段々と自分に自信が持てるようになり「自己肯定感」に繋がります。
自己肯定感とは、その言葉通り「ありのままの自分を肯定すること」です。
ありのままということは自分の短所・欠点なども含めて、「今の自分」の存在や価値を認めて尊重できる状態をいいます。
ビジネスの世界において、自己肯定感が高い人は活躍しやすいと言われています。
自主性が高く行動力があり、自分の長所を生かす傾向があります。また、自分の欠点も受け入れているので、他人の力を借りて自分の欠点を補完ことも苦になりません。
要は、周りの助けを借りつつ、その人の個性である強みを活かして活躍出来る人材であるということです。
まとめ
さて、3つの「感」として「安心感」「有用感」「成長感」そして+αとして「自己肯定感」を紹介しましたが、こうしたことを感じることができれば、職場でのマイナス感情を減らすことができるのではないでしょうか。
もし、ミスや失敗そのものを叱られるのではなく、その社員の人格や能力を否定されたり、必要以上の叱責(ex.暴言・暴力など)を受けるような職場、何かをしても「ありがとう」や「感謝」を伝えてもらえない職場、キャリアプランを示してもらえない、新しい仕事を任せてもらえない職場。
そんな職場で「安心感、有用感、成長感」といったものが生まれることはなく、ましてや「自己肯定感」など夢のまた夢でしょう。
あなたの会社は社員に「3つの感(安心感、有用感、成長感)+α(自己肯定感)」を提供出来ていますか?