【書評:ビジネス書・おすすめ・目次・感想】部下の哲学(著:江口克彦・PHP総合研究所元社長・松下幸之助の側近)の感想
書籍情報
著者:江口克彦 /元・PHP総合研究所社長
著書:部下の哲学
値段/発行所:419円(税抜き) /PHP文庫
他、「上司の哲学」、「成功の法則」など
購入経緯
著者・江口克彦氏が松下幸之助氏のもとで教えを受けていたことは知らなかったのですが、ある時その事実を知り少し興味が湧いたので購入しました(上司の哲学や成功の法則なども購入済)。
ちなみに、江口氏は元参議院議員で政界にも進出したことがあります。
まえがき
同氏著の「上司の哲学」の姉妹版であり、「部下はいかにあらねばならないか」をまとめた書籍。
優れた部下、信頼される部下、成功する部下になるための指南書とも言える。
また、会社は組織である以上、協力し合い仕事をこなしていく。従って、優れた上司だけでも、あるいは優れた部下だけでもダメで、「啐啄同時」の例え通り、部下と上司が力を合わせ、息を合わせるような関係でなければならないと述べている。この考えに基づき、「部下の哲学」「上司の哲学」という2つの視点・立場からの書籍を出版しているので、自分の役割に応じて選んで頂ければと思います。
目次
この著書も「入社一年目の教科書」(下記関連記事参照)と同じように「目次」を見るだけでも十分気づきを得られる本だと思います。
1 熱意とやる気がある
江口克彦著/「部下の哲学」より(PHP文庫出版)
2 誠実である
3 明るさがある
4 思いやりがある
5 信念と使命感を持つ
6 すぐに行動にする
7 シャープになる
8 聞き上手である
9 叱られ方がうまい
10 他人を立てる
11 “けじめ”をつける
12 工夫する
13 報告・連絡・相談をする
14 プラスαの仕事をする
15 勉強、努力をする
16 記号言葉をうまく使う
17 遅刻、早退、無断欠勤をしない
18 虚勢を張らない
19 素直な心を持つ
20 目標を立てる
気づきと感想
「部下はいかにあらねばならないか」を20個の法則にまとめたものの中から、気づきを得られたものを3点紹介。
「遅刻、早退、無断欠勤をしない」「すぐに行動する」「報告・連絡・相談をする」なども勿論大切ですが、「入社一年目の教科書」で触れていたり、ここでわざわざ取り上げなくても…という部分もあるので、今回は外しています。
「叱られ方がうまい」
育てられ方のせいか、最近の若い人たちは、叱られた時に言い訳がましいことや自分の正当性を主張することが多い、あるいは叱られ慣れていないと言ったことが言われています。
しかし、著書では「例え5%としか自分に非がないとしても、言い訳せずにそれを認めることが大切で、その5%を反省し、次からはその5%をなくせば良い。そうすることが自分を成長させていくコツだ」と言ったようなことを述べています。
私も似たような経験がありますが、例え自分が作成した書類ではなくても(例えばそのうち一部分だけ自分が作成した等)、自分の担当部分を追記し、認印を押して次の決裁者(閲覧者)に回した以上、その書類には責任を持つようにと指導されたことがあります。
仮に指摘を受けた部分が、自分が作成した部分ではないとしても認印を押して次に回すということはその書類の内容を全て確認し、自分で問題がない(上司にも合わしても大丈夫)と判断したものである以上、指摘を受け入れないければならないと教えられました。
もちろん、指摘内容に対して気持ち的には「そこは私が作った資料ではない」「私が書いた部分ではない」と言いたくなりますが、指摘を受けた箇所も含めしっかりと確認、あるいは修正した上で、次の人に回さなければならないということを学びました。また、そのおかげで、ミスや間違いに気づくようになりましたし、そうしたことに気づくためには、これまで以上に知識や経験を身につける必要がありましたから、成長にも繋がったと思います。
叱られた後も大切
上司の心には「部下を叱ったこと」に対して不安が残り、部下の心には「叱られたこと」に対して不満が残ります。
この状態が続くと、「啐啄同時(意味:学ぼうとする者と教え導く者の息が合って、相通じること。)」とは程遠い関係となってしまいます。
そこで著書では、あえて部下の方から「昨日は申し訳ありませんでした。よく分かりました」といった「お詫びの念押し」が必要だと述べています。
実は、というか当たり前というか、叱る側も決して気持ちの良いものではないのです。上司も、そういう気持ちでいる訳だから、叱られた部下の方からフォローしてくれれば非常に嬉しいということです。
叱りやすい部下であること
「そもそも何故叱るのか?」という本質を考えると、そこには「その部下が成長する可能性がある」、「その部下に期待している」と言った気持ちがあるからこそ叱るのです。
上記の関連記事の中でも書いてますが、
「愛の反対は「憎しみ」ではなく「無関心」」です。
期待していない人、自分にとってどうでも良い人には叱りません。
叱ることも、結構な労力(エネルギー)が必要なのですから。
そうした背景もあって、「叱りやすい部下であるべき」だと本書では述べてあります。
「自分に見所があるから、期待してくれているから叱られるのだ」といった気概を持つぐらいの方が良いという訳です。例えば、叱られたら必要以上に落ち込む部下、あるいは叱られる度に何かしら言い返してくる部下、何度言っても同じ間違えを繰り返す部下。そんな部下だと、上司もだんだん叱るのが面倒になってきて、もう放っておこうということになりかねません。重要な仕事などとても任せられないでしょう。だからこそ、叱りやすい部下であるべきです。
また、「叱られたことは学び、同じ失敗を繰り返さない」ことも大切です。
いくら期待しているとは言っても、何度も同じミスを繰り返しているようでは口では「分かりました」「すみませんでした」と言っているが本当は全然反省していない、聞いていないのではないかと疑われてしまいます。
「上司が叱りやすく、また以後同じ失敗は繰り返さない」そんな部下を目指しましょう。
プラスαの仕事をする
会社の中で、新しい業務を任されたり、業務を引き継いだりすることがあると思います。初めは、上司や前任者の言われたやり方をそのままこなすだけだと思いますが、それではいけません。
まずは与えられた仕事を100%こなせる様になることが大前提ですが、更に与えられた仕事に自分なりのプラスαをすることが大切です(100を120、130にするということ)。
プラスαをするということは、仕事を本当の意味で自分のものにする、仕事に対して主体的になるということを意味します。
やらされ感からやりがいに変わることで、初めて与えられた以上の仕事をすることにも繋がります。
これと似たようなことを京セラの創業者である稲盛和夫氏も述べていました。
上司や前任者から与えられた仕事は、いずれ次の人(例えば若手や新入社員など)に引き継ぐことになるのですが、その時にプラスαのことが出来ているかが大切です。つまり、付加価値を付けられていれば、その人の存在価値があったと言えます。会社としても、その人にその仕事を任せた甲斐があったということです。
また、この様に工夫を凝らし、常に期待以上の仕事をしていればいずれ難しい仕事を任されることにも繋がりますし、働きが認められれば自身の出世にも繋がります。だから、例え簡単な仕事であってもプラスαの工夫を忘れてはいけないということです。
目標を立てる
「目標なき人生は後悔が待っている」
これは第20則の冒頭の見出しに書かれている言葉です。
大学を卒業し働き始めると、平日は会社と自宅の往復。休日は日頃の仕事の疲れを癒すため、自宅でゴロゴロ。そんな日々を送っている社会人も多いのではないでしょうか?(私もサラリーマン時代の20代はそうでした)
やはり目標があってこそ、生きがいややりがい、メリハリがついてきます。
「社会の役に立つ」と言った大きな目標でなくとも、個人的な目標を立てる必要性を本書では述べています。
一年後、三年後、あるいは十年後に、自分がどうなっていたいのか目標を立てることで、その目標を達成するために「今、何をしなければならないか」「どんな準備が必要か」という「今、ココ」に焦点が行く様になり、自身の行動にも繋がってきます。
「ただなんとなく過ごす」、「生活費(お金)を稼ぐ」ために会社を往復する毎日で人生を無駄に過ごすのではなく、自分の目標に向かって懸命に追い続ければ、結果がどうなろうと悔いのない人生になるのではないか、ということが述べられています。確かにその通りだと思います。
気づいたら定年間近。
それまでの間、仕事やプライベートで得たものは?と問われた時に、これと言ったものがなく、何も答えられないと、一体自分の人生はなんだったのかと思うのではないでしょうか。
けれど、叶う叶わないは別にしろ、ある目標に向かって頑張ってきたということがあれば、気持ちは違うと思います。
まずは、明日からでも始められる小さな目標を立ててみましょう。目標があると行動が変わってきます。行動が変われば最終的に人生も変わることでしょう。
まとめ
さて、今回は経営の神様・松下幸之助氏の元で長年働き、同氏の経営だけでなく生き方も含め間近で見て感じ学んだ江口克彦氏の「部下の哲学」を書評として紹介しました。
初版が1999年と今から「20年前」の書籍なので、鮮度が落ちる部分、現代と少しマッチしない部分もあると思いますが、新入社員から若手まで十分示唆を得られる書籍だと思います。もし書店や古本屋などで見かけたら、手にとっていくつかの法則を読んでみて頂ければと思います。
なお、姉妹本として「上司の哲学」も出版されていますので、管理職や部下を持つ方はこちらも是非探して見て下さい。