【社長必見】従業員が考える働きやすい職場に必要な条件トップ5とは?-行政アンケート調査
今回は従業員が考える「働きやすい職場」について取り上げたいと思います。
(補足:行政が様々な調査結果を公表しておりますので、厚生労働省が公表している「令和元年度版労働経済白書」の内容を元に今回は記事を作成しています)
厚生労働省が公表している各種資料(厚生労働白書、労働経済白書等)はこちらのページです。
従業員が考える働きやすい職場に必要な条件5つとは?
令和元年度版労働経済白書によれば、従業員が「働きやすさ向上のために重要な労務管理」として以下のようなものを挙げています。
- 職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
- 有給休暇の取得率
- 労働時間の短縮や働き方の柔軟化
- 仕事と育児の両立
- 本人の希望を踏まえた配属、配置転換
つまり、こうした環境が整っていれば従業員は「働きやすい職場」だと感じるということです。
どの条件も今の時代では当たり前!
日本で「ワーク・ライフ・バランス」が意識されるようになったのは1990年代以降という話ですが、より身近に感じたのは2008年頃からだと思います。
(その証拠に、2007年12月改正の労働契約法に「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする」という文言が明記されたことがワークライフバランスのきっかけの一つ)
それから約13年。干支にして一回りの年月が経った訳ですが、前述したトップ5をご覧頂くと分かる通り、上位に挙がったのはいまだにワーク・ライフ・バランスの実現に必要な条件ばかりだということです。
そして、いずれの条件も「問題社員が権利ばかりを主張する」といった類のものではなく、「男性の育児休業」「共働き」「高い有給取得率」「働き方改革」など、今の時代では(会社が出来ている、出来ていないは別にして)当たり前のこと(主張)ばかりが上位に来ている訳です。
同時に、こうした結果は、時代で求められる当たり前のことがまだまだ企業では実践できていないということも意味しています。
従業員が挙げたトップ5の項目に関しての企業側が取るべき対応や考え方
5位:本人の希望を踏まえた配属、配置転換
こうした条件が挙がるということは、逆を言えば「本人の希望を踏まえない配属、配置転換をされるのは嫌だ」と言っている訳です。
従業員にそうした想いを抱かせないために、企業側に意識して欲しいことは以下の3つです。
場当たり的な対応をしない
以前に比べ、転職サイトや転職市場が活況なため従業員の流動性が高まっているのは周知の事実です。
また、それでなくとも中小企業にとって「人手不足」は慢性的な問題となっています。
そうした中、今まで何の問題もなく働いていた(と企業側が勝手に思っていた)従業員や、ようやく一人前になった従業員が急に退職届を出してくることも珍しい光景ではないでしょう。
ですが、人員が一人でも欠けると経営への影響が大きいのが中小企業です。
欠けた人員がすぐに埋まれば良いのですが、「優秀な人材ほど早く辞めていく」と言う格言があるように、欠けた人材(辞めた従業員)の穴を埋めるのも容易ではないことが多い訳です。
そうなると、中小企業が打てる手は「その場しのぎでも良いから社内の人材を当て込む」と言う応急措置的な対処法です。
中でもやりがちなのが、社長や上司等から評判の良い社員を当て込むケースです。
しかし、人材配置には「適材適所」というものがありますから、場当たり的な対応を取ってしまうと社員のやる気を低下させる可能性もあるので注意が必要です。
配置や配置転換の理由をきちんと説明する(説明不足は厳禁)
前述した「場当たり的な対応をしない」にも通ずる部分もありますが、企業側にとって一番大切な対応は「配置や配置転換の理由をきちんと説明する」ということです。
これは従業員側の視点に立てば至極当たり前のことです。
ただでさえ、人事異動は突然知らされるため、日頃から変化(職務転換、勤務先の変更)に備えて心の準備をしている者は少ないです。
加えて異動の発表に伴い、以下のような感情を抱く方もいらっしゃるはずです。
- 今いる場所(部や課)で会社に貢献してきたつもりだったが、会社には必要とされていないのではないかといった自己否定や自信喪失
- 経験のない部門、或いは興味もなかった部門に突如配属される不安
- 自分に合っていると思っていた仕事(天職)から突然外されたことに対する会社への不信
そうしたの中、会社からは碌な説明がなされなけばこうした気持ちに対して折り合いをつけることができません。
仮に自分の中で無理やり抑え込んだとしても、不安や疑念という「しこり」が必ず残るはずです。
そうしたことを鑑みても、会社側からなぜこうした配置・配置転換になったのかをきちんと説明するとともに、異動対象者に会社としてどういったことを期待しているか、なぜ彼を選んだのか、その上で将来どのように成長し会社を支えて欲しいと考えているのかといった将来像も含めて説明することが必要となります。
「人事権」は企業側の持つ強力な切り札。使い方次第で効果は一長一短
「人事権の行使」は企業側が持つ強力な切り札の一つです。
企業が更なる成長をするため、職場環境の改善のため、人材育成のためなど目的は様々ですが、人事権の発動には十分注意が必要です。安易に人事権を濫用すれば、従業員のやる気の低下、不満の原因になります。
例えば、昨今のコロナ禍において、「緊急事態宣言」は感染予防対策の切り札的存在でした。
しかし、4度目(2021年7月)の発出となった緊急事態宣言の効果には疑義(効果がなそう、人出が減っていないなど)が生じているのは皆さんご承知の通りです。
このように切り札は何度も使えば良いというものでもありません。また、仮に使うにしても「きちんと納得のいく説明が必要であること」を今回のコロナ禍で身をもって体感したのではないでしょうか。
企業が持つ「人事権」もこれと似たような位置付けだと考えてみて下さい。
4位:仕事と育児の両立、3位:労働時間の短縮や働き方の柔軟化
厚生労働省が公表している令和2年度版「厚生労働白書」によれば、平成の30年間で共働きの世帯は1.6倍に増加しています(参考:1989年783万世帯(共働きの世帯の割合:42.3%)、2019年1,245万世帯(同:66.2%)。
昔は、専業主婦の割合が過半数を占めていましたが、現在は共働き世帯が約7割を占めているという訳です。ですから、例えば女性の場合、結婚・出産を機に会社を辞めるという流れではなく、結婚・出産後も(同じ会社かどうかは別として)働き続けるというのが当たり前になっています。
ですから、仕事と育児の両立(4位)が必要になるのはもちろんのこと、やっと子供に手が掛からなくなったとしても今度は高齢化社会の影響もあり親の介護との両立(*)も必要になってきます。
(*補足:「仕事と介護の両立」は、働きやすさ向上のために重要な雇用管理では6位に位置)
こうした状況下において、労働時間の短縮や働き方の柔軟化を求めるのは働く側としては自然なことです。
育児や介護の制度が整っていなかった世代や、未婚・出産を経験していない方或いは親の介護が必要のない方にとって、育児や介護で働き方に差があること(業務内容、労働時間、責任の程度に差がある)に納得がいかない、不公平だと感じるかもしれません。
ですが、こうした社会の大きな流れ(次に述べる有給休暇の取得率も含め)に対応出来ない企業は例え求人募集をしても人材が集まりにくいですし、将来的には企業としての競争力のみならず、その存続にまで影響が出てくるのは間違いありません。
後述する「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」にも通ずることですが、働き方の違いを理解してもらうことはもちろん、その違いによる待遇差(金銭のみならず賞賛や褒めるなどの非金銭的な報酬も意識する)を設けるなど、ソフト面のみならずハード面療法を整えることが必要です。
2位:有給休暇の取得率
年次有給休暇については、「【事例から学ぶ】有給休暇の制度、有給の理由を尋ねることや有給の拒否や許可制について」で述べている通り、そもそも年次有給休暇は従業員が普通に働いていれば当然付与される権利です。
ですから、会社側が有給を与える与えないを決めるものではありませんし(時季変更権はあり)、ましてや風邪や冠婚葬祭以外では使えないといったものではありません。また有給の申請理由を書かせる会社もありますが、それも「私的による」といった曖昧な表現で十分なのです(本来、理由を記載する必要もない)。
有給休暇の取得率に関しては国としてもバックアップしている状況です。
働き方改革関連法案のおかげもあり、年5日の有給休暇の義務化がスタート取得率の向上が期待されますが、義務化した5日以上を取ってもらえるように企業側(特に従業員の労務管理を預かる社長や上司などの管理監督者)が年次有給休暇制度の目的と意味を理解し、従業員に有給取得を働きかけていくことが肝要です。
1位:職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
アンケート結果の1位ということはそれだけ従業員からの声も大きいということですが、2〜5位の条件とは少々趣が異なります。
2〜5位は制度(仕組み)を作り、それをきちんと運用できれば形の上では条件を満たすこと可能ですが、1位の「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」は、そもそも多くの企業が長年抱える課題なのでそう簡単にはいきません。
まず、2〜5位に挙がっているような制度的なものは当然備わっていることが要求されます。
例えば、有給も取れず余裕のない状態で日々働いている従業員が他の社員と協力しながら仕事をするのは無理です。ましてや売上至上主義のようなノルマ・数字に追われギスギスとした職場にコミュニケーションの円滑化など土台無理な話だということは想像できるでしょう。
確かにそんな環境にあっても優しい人は優しいですが、多くの人は(お金、時間、心などに)余裕がないと、他の人に目を向けることは中々難しいものです。
制度面以外にも、企業の理念、文化・風土にあった人材の採用や人材育成が必要になるのはもちろん、経営者や上司等の既存社員が社会の変化に合わせて考え方や意識を変えていくことも必要になってきます。と、同時に世代間ギャップやグローバル化による習慣や文化の違いへの理解も示していかなければなりません。
一朝一夕では出来ない大きな仕事は、小さく細切りにしながら一歩一歩進めるのが定石ですから、企業としては難題(職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化)に対するあるべき姿(目標)を定め、それに近づけるべく必要な制度や施策を打って段階的に整えていくことが求められます。
まとめ
さて、今回は厚生労働省が公表している「労働経済白書」のデータをもとに、従業員が考える働きやすい職場の条件トップ5を取り上げました。また、それらに対する企業としての考え方や意識して欲しいことを紹介しました。
1位の「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」はさておき、有給休暇の取得率や、労働時間の短縮、働き方の柔軟化など現代は当たり前として求められる条件については、なるべく揃えられるように制度(仕組み)を作りあげて従業員の働きやすさ向上に繋げましょう。
従業員が考える働きやすい職場に必要な条件トップ5
・1位:職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
・2位:有給休暇の取得率
・3位:労働時間の短縮や働き方の柔軟化
・4位:仕事と育児の両立
・5位:本人の希望を踏まえた配属、配置転換