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仕事や職場で動かない人(社員・新卒、部下・チーム等)を動かす時に役立つ3つの行動心理

 
人を動かしている写真
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経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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今回は、人を動かす時に知っておくと役立つ3つの行動心理について紹介したいと思います。

【基礎編】人間が持つ3つの行動心理

一般的に人間は、

(1)好きか/嫌いか
(2)得か/損か
(3)正しいか/正しくないか

といった判断基準で動くと言われています。
こうした行動心理は、ビジネスやマーケティングの世界やコーチングなどでも使われるものだと思うので、ご存知の方も多いと思います。

さて、皆さんも、改めて自分の行動を振り返ってみると、こうしたことに思い当たる節があるのではないでしょうか?

【応用編】仕事や職場で人を動かす時の考え方(利用の仕方)

好きか/嫌いか

言わずもがな、人間は自分の「好き」な行動の回数は増やし、「嫌い」な行動は減らしたり、そもそも(行動)しない傾向があります。

業務適性(人材配置)

趣味などを想像して貰えば分かりますが、自分の好きなこと(興味のあること)であれば、集中もしますし、その分、成長も早いものです。また、好きなことに対する積極性・主体性も期待出来ます。
それこそ「好きこそ物の上手なれ」という諺があるくらいですからね。
新入社員や部署で燻っている社員がいれば、その社員が「何に興味があるのか」を聞き出し、適材適所の人材配置に役立てましょう。

嫌なことはやりたがらない。だからその嫌な原因を取り除く

経営者やリーダーとして社員や部下に仕事としてやってもらいたい行動があると思います。しかし、人間は「自分が嫌だと思うこと」や「やりたくないと思うこと」はなかなかしたがりません。

これが「会社として望んでいる行動」=「社員が嫌だ、したくないと思っている行動」になっていると生産性という面でも非常にマイナスです。

だからこそ、社員が嫌だと思う要因を取り除いてあげることが大切です。

その原因が仕事に対する不安や責任から来ていたり、やれるだけのスキルがない、やり方を知らない・教えてもらっていない、なぜやらないといけないのかが分からない(納得できない)といったこと等が考えられます。
もしかしたら、「やっても評価してくれない」「やったところで叱責される」「(成果物に対して)必ず難癖をつけられるのが嫌」といった、上司との関係(人間関係・指導方法)から由来している可能性もあります。

望む行動を取らせるために、社員が「嫌だと感じていること」を減らすように根気よく傾聴して対応してみましょう。

逆にやったことで褒められたり、感謝されると人は、その行動を好きになり繰り返すようになる

好きと嫌いは表裏一体の関係ですから、逆にある行動を好きになってもらえば、社員は「またやっても良いな」と思う訳です。

例えば、ある行動をした結果、良い評価を得られたり、褒められたり、感謝されると人はその行動を繰り返すようになります。
職場で「サンクスカード」を使って感謝を伝える場を設けたりするのがこれにあたります。そうした好ましい環境を作り上げることも、良い行動を増やすことに繋がります。

得か/損か

「損得」に関して「損得勘定で動く人は嫌い」とか「悩んだ時は損する方を選べ」なんて使い方をしますが、人間誰しも損得感情でものごとを決めるときってありますよね?
損得の対象も、「お金」だったり「時間」だったり、あるいは「快適さ」さ「雰囲気」だったり人それぞれです。

理念の浸透を通じて、事業の発展に貢献させる

経営者の口から「理念」の大切さが語られたり、ビジネス書でも取り上げられたことで「理念」を掲げる会社が増えています。一方、せっかく理念を定めたものの、理念が社員に浸透せず形骸化している会社もあります。

そもそも理念とは、その考え方に共感し、従業員を一致団結させ、その結集した力のベクトルを「事業の発展」という一つの方向に導かせるものです。

そして事業を行う以上、そこには「利(得)」「利益」が存在します。
個人レベルで見れば、お給料という「得」があるかこそ我々は働くとも言える訳ですが、それだけではなく近江商人の哲学の「三方よし(「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という)考え方で商売を行うこと)」のように、利他の精神で働く方がより大きな満足感を得られます。
そして、近江商人の哲学に限らず、企業の「理念」の中には「自らの事業を通じて、社会に貢献する」といった類のことが書かれることが多いです。

そうしたことも踏まえると、経営者も含め全従業員が、自分はこの会社の事業を通じ社会に対しどのような貢献をしているのかを改めて考えさせるなど、理念の浸透を通じて人を動かすということも大切です。
会社という大きな組織を通じて行うことで、個人レベルでは出来ない規模で社会貢献をすることができるので大きな満足感に繋がるからです。

あえて期限をタイトに設定する

皆さんもご経験があると思いますが、プレゼンの資料なり、提出書類なり、期限が近づいてようやく手を動かし始める方って多いと思います。
所謂、お尻に火が着かないと動き出さないタイプです
私も多かれ少なかれ期限が差し迫らないとやる気が出ない時はあります。

ある種、これも損得勘定が働いていると言えます。
「提出期限を守らない」=「信用を損なう」ことに繋がるからです。

重要な仕事を部下や社員に頼む時ほど、あえて期限をタイトに設定して早め早めにチェックして、提出→修正→再提出というサイクルで質を高めるのもありです。

損だからやらない。一方で、損してでもやる時はある

新規事業への投資の際のExitルールや商取引でのリスク管理など、ある程度損を許容しつつもそれ以上はやらないという考え方も大切です。

「損だからやらない」は、従業員の行動抑制にも使えるものです。

その代表的なものが就業規則等で定める「懲戒処分(懲戒の種類と懲戒事由)」です。
懲戒処分の項目に該当する行為をすれば罰を与えるというものですから、そういうことをしないように動きますし、万が一魔が刺してしようとした場合の抑止力にもなります。
勿論、きちんと就業規則で定めていないと効果はありませんし、どういうことをしたらダメなのかを社員が理解していないケースもあるので、就業規則の説明などは新入社員を採用したときや改訂した時などに合わせて随時説明することをお勧めします。

さて、その一方で「損してでもやる」ということはあります。
この場合は、道理には合わないがやる、義理や人情の世界とも言えます。
「損してでも、ある種の利(得)が得られる」という背景もあります。

例えば、単純にお世話になっている方や仲の良い方からの仕事の依頼などは、他の仕事を差し置いて、超特急で仕事を仕上げてあげるなんていうのもこれに当たると思います。

正しいか/正しくないか

理念にそぐわないからやらない

「得か/損か」の中で、理念の話をしましたが、理念の内容次第では、理念にそぐわないからやらないという判断に繋がることもあります。

例えば、先に述べた「三方よし」の精神が従業員にも浸透していれば、大きな利益が出るからといって、(法違反とは明確に言い切れない)グレーゾーンを攻めるような商売はしないという判断に至る訳です。

このように従業員の日々の判断基準に活かされる理念こそが良いものであり浸透しているものと言えます。

法違反、ルール違反のことはやらない

当たり前のことですが、社会で生きていく以上、法に触れることは正しくないので、社員の行動の抑止力となります。
これは、社内ルールと呼ばれるようなものに関しても同じです。
但し、就業規則の懲戒処分などと連動し、必罰できる環境を整えておく必要は当然あります。

しかし、聖職者と言われた「教師」や、正義の味方・国民を守ると言われた「警察」が犯罪に手を染め捕まるような時代です。
昔も目立たないだけで少なからずあったのかもしれませんが、近年は法規範・社会規範といった意識が低下しているように思われます。

「そんなことをしてはいけないのは当たり前で教えなくても分かるだろ!」と思うようなことでも、平気でしてしまう方々も存在します。
本来ならば、家族や義務教育の中で培われる規範を会社でわざわざ教えないとならない時代がやってきているのかもしれません。
大問題が発生した時に、従業員から「だって、してはいけないと知らなかった。教えてもらってない」なんて反省もしていないような言い訳が返ってくるかもしれません。

【例外】「理念」は時に好きも嫌いも、損得すらも超えて行動させてしまうもの

理念の写真

さて、これまで人間の行動原理とそれを用いてどうやって人を動かすかということについて述べてきました。
最後は例外みたいな話になりますが、前述したように本当に「理念」が浸透している会社では、全社員の日々の行動が理念に基づいて行われます。
だから、理念に沿った行動であれば、「嫌いだからやりたくない」「損だからやらない」といったことを超越して行動に移します
それほど「理念」とは従業員に影響を与えるものです。

しかも「理念」とは経営者が心から望んでいることであり、それを従業員が共感し行動に移す訳ですからその力は絶大です。
もし会社で「理念」を掲げているのであれば、これを機会に従業員へ浸透させることも検討してみて下さい。

無知や理不尽なシステム(業界慣習・組織風土・評価制度)には要注意!

無知故に正しくないことがまかり通っている

今ではインターネットの普及により大分改善されつつありますが、従業員が労働法規や労働条件・労働契約等に無知だったが故に、ブラック企業と呼ばれるような会社に長時間労働、サービス残業、低賃金といった形で搾取される場合もあります。
今回のコロナ禍における休業補償などもその対象となるでしょう。

業界慣習や組織風土で法的にNGなことや損することが普通になっている

人間は「慣習」というものに弱い生き物です。
例え、初め疑問に思ったとしても、「いや、これが業界慣習なんで」と言われると「そういうもんなんだ」と思って、受け入れてしまうことも多々あります。
でも、本来は法的に問題があったり、一方的に損していたり、或いは騙されていたりする、そもそも意味のないものだったりする可能性もあります。
思考を停止せずに、その業界の常識や組織風土が織りなす矛盾に立ち向かうことも大切です。

「好き」だし「利」もあるのに行動しなくなる「理不尽さ」という敵

優秀な人より普通な人の方が給料が良い

「理不尽」とは「筋が通っていないこと。道理に合わないこと」といった意味です。理不尽さは時に「やってられない」「こんなのならやってみやらなくても一緒」という気持ちにさせてしまいます。

社会生活の中では、上司や仕事での理不尽な要求などといった使い方もありますが、「優秀な人より普通な人が給料が高い」といったこと理不尽な事柄の一つです。
優秀な方はたくさん仕事を振られても、上手くやりくりして定時かほぼ定時に近い時間で退社します。
本人も仕事が好きだし、いろんな仕事を任されるのは自分の成長という「得」もあるので、文句言わずに働いてくれたりします。

一方で、優秀ではない普通の社員は、優秀な方に比べれば仕事量は少ないはずなのにダラダラと残業までするため、その残業代を含めると優秀な方より給料が良いということになります。

ましてや「【書評:「承認欲求」「承認とモチベーション」で有名・太田肇の著書】「見せかけの勤勉」の正体(成果主義、やる気主義)」で述べたような、上司の評価が仕事の成果そのものではなく、好き嫌いや長時間労働、遅くまで仕事をしているといった部分で評価されたりすれば、優秀な方は「真面目に仕事をするのがバカらしい」「手を抜いてダラダラ仕事をした方がマシ」という気持ちになって生産性に影響が出たり、そもそも愛想を尽かして会社を退職する可能性すらあります。

成果を求めるあまり、過程(プロセス)を無視してはならない

まず、見出しタイトルの「成果を求めるあまり、過程(プロセス)を無視してはならない」というのは、成果を出すためなら、過程(手段)は何をしても良いという意味ではありません。

例えば、一般の営業職であれば、成果とは売上(成約)であり、過程はお客様に会うための訪問や電話といったことになります。
と、同時に会社では様々な営業ノルマ(目標)が定められます。
例えば、最も重要視されるのは売上(成約件数)でしょう。その次に商談件数、訪問回数、電話回数、DM発送数などのノルマがあるとします。

そうした中、営業担当は、お客様と会うために電話したり、(飛び込み)訪問したり、時には、アポイントが取れて商談できたり。また、商談の一部は成約には至らないこともあるでしょう。

このように頑張って各段階の営業ノルマを達成しても、最終的な成果(売上高、成約件数)が未達になる場合があります。
そのときに、成果が出ていないからといって頭ごなしに叱責してはならないということです。
成果は勿論大切ですが、あくまでプロセスの延長線上に成果があります。
そこで、プロセス(の回数)は達成できているのに、成果が出ていないからと叱責されては、今後は過程(プロセス)すら真面目にやらなくなる恐れもあります。

つまり、成果しか見てもらえず、成果に結びつくプロセスを評価されず、否定されてしまうと、せっかく真面目に取り組んでいたプロセスすらも嫌になり、最終的にはそれすらしなくなってしまうという訳です。

見出しの「成果を求めるあまり、過程(プロセス)を無視してはいけない」とはこういう意味で述べています。
できた部分はきちんと認めてあげて、その上でなぜ成果(売上高、成約件数)が出なかったかの原因を考え、修正していくことが大切です。
社員からすれば、最終的な成果に結びつかなかったものの、途中の過程がクリア出来ていてそれはそれで認めてもらえれれば、次こそは頑張ろうという気持ちになりますからね。

上記関連記事の内容と矛盾する部分がありますが、チームで仕事をするような場合は単純な成果主義で評価するのが難しかったり、成果主義だけで全て片付けてしまうと、多くの社員(優秀ではない普通の社員)のモチベーションが低下してしまう懸念もあるので、一応このような形で言及しておきます。

ちなみに、ある哲学者は、「人間の最も深いところにある欲望は、他人から認められたいという想いだ」と述べたそうです。
報酬や無理に褒めることはしなくとも、その事実(例えば、成果は出なかったがプロセスのノルマをクリアした)を認めてあげるだけでもモチベーションは違ってきます。

まとめ

本記事をまとめると、

【人間の3つの行動心理】
・好きか/嫌いか
・得か/損か
・正しいか/正しくないか

【3つの行動心理を生かして人を動かす】
「好きか/嫌いか」
・好きなことをさせてみる(人材配置・適材適所)
・嫌いな行動なら、嫌いな原因を探り、排除する
・ある行動をした結果、褒められたり、感謝されたり、評価されたりするそんな環境を作ることで、して欲しい行動の回数を増やす

「得か/損か」
・理念を浸透させ事業の発展に貢献してもらう
・あえて期限をタイトに設定する
(遅れると信用に影響するからなるべく早くやろうとする)
・損するからやらない(例えば懲戒事由に該当する行為)。一方で損してでもやる時がある

「正しいか/正しくないか」
・理念にそぐわないことは例え利益が出るものでもやらない
・正しくないこと(法違反、ルール違反)はやらない

「例外:理念」
理念に沿っていることが大前提だが、「好きも嫌いも損得すら超えて」行動する時がある
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経営コンサルタント(中小企業診断士)、人事・労務コンサルタント(社会保険労務士)。福岡生まれの熊本育ち。性格は典型的な「肥後もっこす」。 「ヒト」と「組織」の問題解決(人材教育・育成や組織変革)を専門とする。 また、商社時代に培った経験から財務・会計にも強く、人事面のみならず財務面からの経営アドバイスも行う。 他にも社会保険労務士、中小企業診断士や行政書士など難関国家資格を含む20個の資格にフルタイムで働きながら1発合格した経験を生かし、資格取得アドバイザーとしても活動中。
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