【速報2020年度】第52回社会保険労務士試験合格発表!合格率6.4%(前年6.6%)合格基準も
2020年11月6日(金)
ついに、社会保険労務士試験の受験生が待ちに待った合格発表の日が来ました。
今年も、合格発表の詳細(合格基準点、合格率、合格者の職業別・年齢別・男女別等)を紹介したいと思います。
さらに今回は科目ごとの平均得点もご紹介します。
2020年度の社会保険労務士試験の受験者数は?
2020年度の社会保険労務士試験の受験申込者数が49,250人(前年49,570人)で、受験者数は34,845人(前年38,428人)です。
近年、申込者が約4.9万人、受験者数が約3.8万人で推移していたのですが、今年は新型コロナウィルスの影響からか、受験者数が34,845人と対前年比で9.3%減と大幅に減少しています。
例年、試験申込みから本試験日までの約3ヶ月の間に申込んだものの受験を断念した人が1万人超いるのですが、今年は新型コロナウィルスの感染リスクや十分な学習環境が整えられなかったといった背景もあり、受験を断念した方も多かったのかもしれません。
去年の合格発表の記事の中で[keikou]「(合否はさておき)本試験当日に受験出来るということ自体が、実は大変ありがたいことだ」という資格試験に纏わる名言(?)を紹介しました。
去年の今頃、日本や世界がこのような事態になることは全く想像していなかったことを考えると、まさに今年はこの名言の重みを噛み締める結果となったように思います。
2020年度はコロナ禍での受験
今年はコロナ禍での試験ということもあり、以下のような感染防止対策が施された中での受験となりました。
【社会保険労務士試験における新型コロナウィルスの対応】
・入場時等に検温を実施
・検温に伴い、開場時刻を30分繰り上げ(通常9:30開場が9:00開場に変更)
・座席配置はソーシャルディスタンスを確保(最低1mの間隔)
・試験会場ではマスクの着用(マスクは無地を指定)
・マスクの破損、汚損に備予備のマスクの準備
・マスクの着用と併せて、フェイスシールドを着用も可
感染対策上、どうしてもマスクの着用が必須になるとは言え、受験生の中には、息苦しくて苦手といった比較的程度の低いものから、マスクでアレルギー反応を起こす方と言った程度の重いものまでありますので、対応に苦慮された方もいらっしゃると思います。
また、ただでさえ平常時でも席運(ex.3人掛けで真ん中にならない、周りに貧乏ゆすりをする人やブツブツ独り言を言う人、筆圧が強くて机が揺れるなど)が気になるところですが、今回は周りに咳やくしゃみをする受験生がいないかどうかと言ったことにも気を配らなければならなかったと思います。
(咳やくしゃみが酷い場合は、試験監督官から注意を受けて退出を促された可能性もありますが…)
その他にも、移動時等のソーシャルディスタンスの確保、試験会場内での共有部を触れた際の手の消毒など試験以外の面でも気をつけなければならないことが多く大変だったのではないかと思います。
正直、受験しに行って新型コロナに罹りましたでは洒落になりませんからね。
最悪、自分が試験会場に行くことで新型コロナウィルスに罹ることは覚悟したとしても、その後、周り(職場や家族、両親)に感染させるリスクを考えると、受験することすら断念した方も非常に多かったのではないかと思います。
実際に、受験申込数は例年通りにも関わらず、受験者数は対前年比で9.3%も減少しているのがその証左なのかもしれません。
2020年度の合格基準点は?
2020年の合格基準は、次の2つの条件を満たした者を合格としています。
本年度(2020年度)の合格基準は、次の2つの条件を満たした者を合格とする。
1 選択式試験は、総得点25点以上かつ各科目3点以上
(ただし、労務管理その他の労働に関する一般常識、社会保険に関する一般常識及び健康保険法は2点以上)である者2 択一式試験は、総得点44点以上かつ各科目4点以上である者
引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイトより
※ 上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである。
今年は選択式の「労務管理その他の労働に関する一般常識」「社会保険に関する一般常識」及び「健康保険法」は2点以上と、救済措置(2点以上で足切りを魔逃れる)が入っています。3つの科目で救済措置というのは珍しいかと思いますので、よほど難しかったのだと思います。
択一式では、去年(2019年度)の合格基準が総得点43点以上、各科目4点以上でしたが、今年は総得点44点と1点高くなっています。
(ただ、通常基準点が7割(49点)であることや、2017年・2018年度が45点以上であったことを考えると、択一式も難易度としてはやや難しかったのでしょう)
2020年度の社会保険労務士試験の合格率は?
2020年度の社会保険労務士試験の合格率は6.4%。
前年度の合格率は6.6%であったことを考えると、相変わらず狭き門です。
しかも、今年は、選択式で3つの科目に救済措置が入っていますから、もし救済措置がなければ合格率はもっと低かったということです。
過去10年の合格率の推移は?
過去10年の合格率の推移を見てみると、以下のようになります。
試験回・年度 | 合格率 | 受験者数 | 備考 |
第43回・2011年度 (平成23年度) | 7.2% | 53,392人 | |
第44回・2012年度 (平成24年度) | 7.0% | 51,960人 | |
第45回・2013年度 (平成25年度) | 5.4% | 49,292人 | 受験者数5万人を切る |
第46回・2014年度 (平成26年度) | 9.3% | 44,546人 | 受験者数一気に5千人減少 |
第47回・2015年度 (平成27年度) | 2.6% | 40,712人 | 過去最低の合格率 |
第48回・2016年度 (平成28年度) | 4.4% | 39,972人 | 受験者数4万人切る |
第49回・2017年度 (平成29年度) | 6.8% | 38,685人 | |
第50回・2018年度 (平成30年度) | 6.3% | 38,427人 | |
第51回・2019年度 (令和元年度) | 6.6% | 38,428人 | |
第52回・2020年度 (令和2年度) | 6.4% | 34,845人 | コロナ禍の影響もあり過去最低の受験者数 |
ここ数年合格率6%台で推移していましたが、今年も例に漏れずに6%台の合格率となりました。
一時期(第47回、第48回)は、2.6%、4.4%と受験生の心をへし折るような低い合格率の時もありましたが、今年は選択式で3科目に救済措置が入っていることを考えると、試験の難易度が高く、救済措置がなければ過去最低の2.6%を上回る可能性もあったかもしれませんね。
合格者の職業別の割合、男女比は?
職業別の割合は会社員が58.4%、次いで無職13.2%、公務員8.1%、自営業4.8%となっています。数値的には去年(2019年度:会社員58.9%、無職13.4%、公務員7.7%、自営業4.3%)と大きく変わらず、相変わらず合格者の6割が「会社員」という結果になっています。
(参考:ちなみに、今から15〜20年ぐらい前は会社員4割、無職3割と言った時代もありましたが、段々会社員の比率が高まっている傾向にあります)
男女比で見ると、男性64%、女性36%です。
去年が男性64.3%、女性35.7%ですから、ほとんど変化なしということです。
それでも、行政書士や司法書士などの他資格の女性の割合が概ね20%台と言われているので、社会保険労務士試験の女性の受験比率は高いと言えるでしょう。
合格者の年齢別(世代別)の構成は?
年齢別の構成は、合格者の年齢別の構成は、30代と40代の30.1%を筆頭(*)に、次いで50代の18.7%(前年18.8%)、20代の12.3%、60代の8.8%が続く形です。(*)ちなみに前年の1位は30代で33.1%、2位は40代で31.5%でした。
細かな部分での変化としては、20代の年齢階層別に占める割合が増加していました。コロナ禍の影響もあってか若い人達の中で、手に職をではないですが、資格取得を目指す動きが少なからずあったのかもしれません(あくまで想像です)。
合格者の年齢階層別割合 (2019年度) | 合格者の年齢階層別割合 (2020年度) | |
24歳以下 | 1.0% | 1.8% |
25歳〜29歳 | 7.2% | 10.5% |
学生 | 0.5% | 1.0% |
ちなみに、2020年度の最年少合格者は20歳(前年度も20歳)、最年長合格者は78歳(前年度は75歳、前々年度は84歳)です。
(ちなみに、行政書士試験は年齢や学歴などの受験要件がないので、最年少合格者は15歳(2019年度)ということも起きたりします)
選択式・択一式の平均得点
厚生労働省の発表によれば、第52回社会保険労務士試験の選択式・択一式の平均得点は以下の通りです。
(注意:各回平均点の「太文字+下線」の部分は救済(補正)が入った科目です。
補正により、その科目は選択式なら2点以上(普通は3点以上)、択一式なら3点以上(普通は4点以上)で良いことになります)
今回、残念ながら不合格だった方は、自分が他の受験生と比べてどの科目が取れていないのか、苦手にしているのかと言ったことの確認にも役立つのではないかと思います。
【選択式(平均点)】 | 第49回 | 第50回 | 第51回 | 第52回 【今回】 |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 3.8点 | 2.5点 | 3.4点 | 2.6点 |
労働者災害補償保険法 | 3.3点 | 3.4点 | 3.9点 | 4.3点 |
雇用保険法 | 2.3点 | 2.9点 | 3.5点 | 3.9点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 2.2点 | 2.3点 | 2.5点 | 1.9点 |
社会保険に関する一般常識 | 2.4点 | 2.1点 | 1.6点 | 2.1点 |
健康保険法 | 1.9点 | 3.0点 | 2.8点 | 2.3点 |
厚生年金保険法 | 2.6点 | 2.5点 | 2.8点 | 3.0点 |
国民年金法 | 2.7点 | 1.8点 | 3.3点 | 2.5点 |
合計 | 21.3点 | 20.5点 | 23.7点 | 22.7点 |
合格基準点 | 24点以上 補正あり | 23点以上 補正あり | 26点以上 補正あり | 25点以上 補正あり |
【択一式(平均点)】 | 第49回 | 第50回 | 第51回 | 第52回 【今回】 |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 4.9点 | 4.9点 | 4.7点 | 4.8点 |
労働者災害補償保険法 | 4.6点 | 5.1点 | 5.0点 | 5.2点 |
雇用保険法 | 4.8点 | 4.7点 | 4.2点 | 4.8点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 及び社会保険に関する一般常識 | 4.3点 | 3.7点 | 3.9点 | 4.2点 |
健康保険法 | 4.8点 | 5.0点 | 3.9点 | 4.2点 |
厚生年金保険法 | 3.7点 | 4.5点 | 4.8点 | 4.2点 |
国民年金法 | 4.8点 | 4.1点 | 3.8点 | 4.1点 |
合計 | 31.9点 | 32.1点 | 30.2点 | 31.5点 |
合格基準点 | 45点以上 補正あり | 45点以上 | 43点以上 | 44点以上 |
おまけ:社労士試験の勉強法について
社会保険労務士試験の勉強法等の詳細は、こちらの関連記事をご参照下さい。
まとめ
さて、待ちに待った合格発表の日でしたが、受験生の皆さんの結果はいかがでしたでしょうか。
2020年度は、選択式の3科目で合格基準点に補正が入ったものの、合格率6.4%と相変わらず狭き門となりました。
今年(2020年)の試験では新型コロナウィルスの影響もあり、例年に比べ受験者数が大幅に減少していることが一つの特徴だと言えます。
受験生の皆さんは、受験当日以外でも色々と苦労をされたと思います。
例えば、資格学校が臨時休講したり、生講義もいつもと勝手が違ったり。
或いは感染リスクを懸念して教室講義からWeb講義に変えた方もいらっしゃると思います。中には自習室の座席制限などで勉強する場所が確保出来ないといった方もいたのではないでしょうか。
また、資格学校の講義の休憩中に受講生同士でおしゃべりが出来なかったり、交流の場としての飲み会(親睦会)がなかったりと、モチベーション維持の面でも大変だったかもしれません。
ですから、そうした中で掴んだ「合格」というのは、一際記憶に残るものになったと思います。
しかし、厳しい言い方ですが、どんな環境にあっても合格する方は合格します。
実際、2,200名余りの方がきちんと合格を掴んでいる訳です。
そして、合格を掴むための最良の方法は、本試験当日に後悔しないように毎日コツコツと勉強するしかない、と私は思います。
小さなことを重ねることがとんでもないところに行く ただひとつの道
引用:元・メジャーリーガー「イチロー選手」より
来年度以降、新型コロナウィルスが終息すれば、ある程度受験者数が回復(例年の3.8万人程度に戻る)するだろうと思われますが、合格率に関しては近年の6%台での推移が続くような感じがします(4年連続で6%台で推移)。
しかし、今回は3科目も救済措置あっての6%台ですから、救済措置の有無次第では、第47回、48回のような低合格率(2%や4%台)もないとは言えませんので、気が抜けないところです。
いずれにせよ、どんな問題が出題されても解けるように、自分だけは合格するんだという強い気持ちを持って勉強することが何よりの突破法だと思います。