はじめて従業員を雇うときに事前に押さえておきたい3つのポイント
この記事は、
「そろそろ従業員を雇ってみようかな」と考え始めている経営者の方に、本格的な採用活動を始める前に押さえておいてほしいポイント
をまとめています。
従業員を雇用する時に一定の手続き(書類)が必要だということは、たいていどの経営者もご存知だと思いますので、今回、説明するのは、手続き面よりも心構えの方となります。
そもそも「従業員を雇う」とはどういうことを意味するのか(3つの義務)
事業を開始して売上が伸びていくと、
「今まで通りに一人で仕事をこなすことが難しくなってきたなぁ」、
「忙しくてなかなか今後の事業の方向性などを考える時間が取れない」
などと感じ始める時期が訪れます。
そして、「よし。そろそろ従業員を雇ってみようかな」と思い始めることでしょう。
経営者側からみれば「従業員を雇う」とは、事業(売上)拡大のための労働力(人手)を得るためだと思います。
また、単純な労働力としてではなく、自分の強みを更に強化するため、あるいは自分の欠点を補うためといった自分の右腕として雇うということもあるでしょう。
ですが、ここではそういった経営者側の主観的な見方ではなく、客観的な見方で考えてみたいと思います。
下の表をご覧の通り、従業員側の視点に立って考えると、雇用に伴い経営者側にはこのような責任・義務がのしかかってきます。
経営者側 | 従業員側 |
賃金を支払う義務 | 労働の対価として賃金を受け取り、生活していかなければならない |
法律を守る義務 | 経営者>従業員という力関係になる以上、従わざるを得ない |
全ての責任を負う義務 | 快適な職場環境で働きたい、仕事で怪我や病気になりたくない、労使トラブル |
こういった覚悟を持たずして従業員を雇ってしまうと、最悪の場合、従業員を路頭に迷わせることになったり、不必要な病気や怪我をさせてしまう可能性もあります。
特に、従業員は様々な法律(労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法など)で守られています。
「法の不知はこれを許さず」といった法格言が存在しているように、法律違反を犯してしまったときに、経営者が「そんなこと知らなかった」では済まされません。
また、労働条件や解雇、会社の法律違反などを原因とした労使トラブルのリスクも内包しています。
だからこそ、経営者は、自分のこと・自分の利益だけを考えるのではなく、従業員のこと、従業員の利益についてもしっかりと考えておく必要があります。
(最近で言えば、吉本興業のゴタゴタは最たる例かもしれません。)
こういったことを理解していれば、京セラの創業者であり、JALを復活させた稲盛和夫さんが経営理念で、
と謳っている言葉に少しはご理解頂けるのではないでしょうか。
人を雇うをとは思った以上に、大変だということです。
従業員を雇う前にこの3つは決めておけ!
さて、「従業員を雇う」ということを考え始めると、
どうしても入社手続きや費用(人件費)といったことに目を奪われがちですが、
実際に採用活動に動き出す前に、少なくともこの3つは決めておくべきです。
これらが決まっていないと求める人材とは違った人を採用してしまう可能性があります。
現在の日本の法律においては、従業員を雇うことは比較的簡単ですが、その一方で辞めさせるのは非常に難しいのです。
だから、求めていた人材と違うからといって、直ぐクビにしてまた違う人を採用するなんてことは難しく、そういった点からみてもこれら3つを決めておくことは大変重要なことです。
1.どういった仕事(内容・範囲)を任せようと考えているのか
2.どのくらいの費用(人件費)が負担できるのか
3.どういった人材(人物像)を求めているのか
どういった仕事(内容・範囲・量)を任せようと考えているのか
はじめて従業員を雇うときであれば、経営者が抱えている仕事を代わりにしてもらうということが主目的になると思います。
まずは、自分しか出来ない仕事と従業員に任せたい仕事を区分して、仕事ごとにかかる作業時間やその手順を整理しておきましょう。
従業員に任せたい仕事に関しては、それらの仕事をこなす上で、必要な知識、スキルを洗い出しておいたり、事前に作業マニュアルを作成しておくといったことも非常に大切です。
なぜなら、いざ従業員を雇ってみたものの、従業員のスキル・能力不足で頼もうとした仕事が任せられないといった可能性も起こり得ます。
自分では簡単な作業だと思っていても、案外他の方では出来なかったりすることも多々あります。
(そういったことが起こらないよう採用面接の段階からその点について注意を払っておく必要があります。)
また、人を雇ってはみたものの、従業員教育に十分な時間が取れない可能性もあります。
そういったときに、事前に作業マニュアルを作成していたりすれば、教える時間を短縮できて効率的です。
また、1-2.にも関係してきますが、任せたい仕事内容や仕事量がはっきりしていれば、フルタイムでの採用か、週●日のアルバイト・パート等の採用で大丈夫なのか、といった雇用形態(正社員、アルバイト・パート、派遣等)の決定にも役立ちます。
どのくらいの費用(人件費)が負担できるか
現在の事業の収支からみて、どの程度の費用(月給や時給ベース)を負担できるかを考えましょう。
高い給料を支払えるからといって、必ずしも優秀な人材がやって来る訳ではないですが、良い人材を集めるには必要条件となるでしょう。
この項目については別の投稿で詳しく触れますが、従業員を雇うには、給料以外にも社会保険料や労働保険料等の負担が必要になります。
それ以外にも、会社で支払いを決めたのであれば、ボーナスや福利厚生の費用等も必要となります。
くれぐれも、「従業員を雇う」=「給料分を払えばよい」ではないということを認識しておいて下さい。
また、1-1.の最後で触れたように、負担できる費用によっては、従業員の雇用形態も再考しないといけないこともありますのでそのこともお忘れなく。
どういった人材(人物像)を求めているのか
本来、この項目を一番重要視したいのですが、経営者にお尋ねしても、意外とはっきりとしていないことが多いのがこれです。
ポイントは抽象的な表現ではなく、なるべく具体的な表現を意識することです。「コミュニケーション力がある」と言った表現では実はまだまだ具体的とは言えません。
事業方針や将来的な展望なども加味して、一緒に働きたいと思える人物像を明確にイメージしておきましょう。
基本的には、経営者の経営理念に共感してくれる人材が理想の人物像になると思います。
どうしても求める人物像がはっきりしない場合は、逆に、一緒に働きたくない人物像を列挙してみると良いでしょう。
例えば、社会人としてのマナーが身に付いていない(時間にルーズ、挨拶が出来ない)、思いやりに欠ける、不真面目、コミュニケーション能力に欠ける、何でも他人のせい(他責)にするなど。
そうやって考え始めると色々と思い付くはずです。
人は成長するものです。確かに技術やスキルは時間をかけて伸ばすことは出来ますが、性格、マナー、考え方というのはなかなか変わりません(本人のやる気次第)。短い時間での面接だからこそ、最低限、雇い入れたくないタイプ、性格などを事前に列挙しておき、面接の時にうまく利用しましょう。
こういったことを明確にしておくと、採用面接の時などに応募者を見るべきポイントがはっきりしてより良い人材の確保にも繋がります。
まとめ
このように従業員を採用するにあたっては、実際の採用活動に移る前に色々と準備に時間がかかるということを押さえておきましょう。
先ほども述べましたように日本では、従業員を雇うことは比較的簡単ですが、辞めさせることは非常に難しいというのが現状です。
慌てて雇っても失敗する可能性が高くなりますから、覚悟や考えが決まってから採用活動を始めても遅くはないでしょう。