2021年第53回社会保険労務士試験合格発表!合格率7.9%(前年6.4%)平均得点も
2021年10月29日(金)
ついに、社会保険労務士試験の受験生が待ちに待った合格発表の日が来ました。
今年は、例年より1週間早い合格発表となりましたね。
さて、去年に引き続き、今年も合格発表の詳細(合格基準点、合格率、合格者の職業別・年齢別・男女別等)、科目ごとの平均得点をご紹介したいと思います。
2021年度の社会保険労務士試験の受験者数は?
2021年度の社会保険労務士試験の受験申込者数が50,433人(前年49,250人)で、受験者数は37,306人(前年34,845人)です。
近年、申込者が約4.9万人、受験者数が約3.8万人で推移していましたが、前年(2020年)は新型コロナウィルスの影響からか、受験者数が34,845人と対前年比で9.3%減と大幅に減少していました(ちなみにコロナ禍前の2019年の受験者数は38,428人)。今年(2021年)は3.7万人台とやや回復傾向が伺えます。
例年、試験申込みから本試験日までの約3ヶ月の間に申込んだものの受験を断念する人が1万人超いるのですが、今年も新型コロナウィルスの感染リスクを懸念したのか、受験を断念した方が13,127名(2020年は14,405人)とやはり例年よりもやや多い水準のようです。
振り返ってみると、受験月である8月は全国各地で軒並み新規感染者数の過去最高を更新していた頃です。
本試験の日のわずか2日前にあたる8月20日には、1日の新規感染者数が25,992人と過去最多となっており、会場への移動や受験会場での感染リスクを懸念したり、或いは家族や会社からの指摘もあり、直前になって取り止めた受験生も多かったのかもしれません。(ちなみに、2021年11月2日現在、2021年8月20日が国内での新規感染者数が最多となった日です)
コロナ禍での受験
今年も、コロナ禍での試験ということもあり、以下のような感染防止対策が施された中での受験となりました。
【社会保険労務士試験における新型コロナウィルスの対応】
- 入場時等に検温を実施。
- 検温に伴い、開場時刻を30分繰り上げ(通常9:30開場が9:00開場に変更)。
- 試験中は必ずマスクを着用。
- 咳を繰り返すなどの体調不良がみられる場合は試験監督者等の判断で受験をお断りされる可能性あり。
- マスクの破損、汚損に備予備のマスクの準備。
- フェイスシールド、マウスシールドのみの着用は認められない。
- 会場内での定期的な換気。(※気温の変動が激しいので調節の効く服装が必要だったと思います)
- 新型コロナウィルスの影響により、一部の試験会場について当初の予定から変更も。
2020年の頃と感染対策は変わっていないとはいえ、当時は新規感染者数が急増、かつ過去最高を連日更新していた訳ですから、会場内では結構ピリピリしていたかもしれませんね。それこそ咳やくしゃみをしようものなら周りから冷たい目で見られることもあったかもしれません。試験以外でも気を使わないといけないというのは、集中力を乱す原因にもなりますし、非常に大変だったと思います。
2021年度の合格基準点は?
2021年の合格基準は、次の2つの条件を満たした者を合格としています。
本年度(2021年度)の合格基準は、次の2つの条件を満たした者を合格とする。
1 選択式試験は、総得点24点以上かつ各科目3点以上
(ただし、労務管理その他の労働に関する一般常識は1点以上、国民年金法は2点以上)である者2 択一式試験は、総得点45点以上かつ各科目4点以上である者
引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイトより
※ 上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである。
今年は選択式の「労務管理その他の労働に関する一般常識」で1点以上、「国民年金法」は2点以上と、救済措置が入っています。労務管理その他の労働に関する一般常識が1点以上ということは、よほど難しかったのだと思います。
あとは細かい点ですが、救済の関係もあってか総得点が24点以上(前年は25点以上)と1点下がっています。
択一式では、総得点45点以上なので、2017年度や2018年度と同程度になっています。平均点的にも2017年度や2018年度並みですので、むしろ前年(2020年)の44点以上や前々年(2019年)43点以上の方が難しくて例外だったと思った方が良いかもしれません。そもそも社労士試験は7割合格と言われていますから、本来なら49点(70点満点)ぐらいは取れてしかるべきものです。
2021年度の社会保険労務士試験の合格率は?
2021年度の社会保険労務士試験の合格率は7.9%。
前年度の合格率が6.4%であったことを考えると合格率自体は上がっていますが、相変わらず狭き門に違いはありません。しかも、今年は選択式の労一に1点以上という救済が入っていますから、もし救済措置がなければ合格率はもっと低かったということになります。
過去10年の合格率の推移は?
過去10年の合格率の推移を見てみると、以下のようになります。
試験回・年度 | 合格率 | 受験者数 | 備考 |
第44回・2012年度 (平成24年度) | 7.0% | 51,960人 | |
第45回・2013年度 (平成25年度) | 5.4% | 49,292人 | 受験者数5万人を切る |
第46回・2014年度 (平成26年度) | 9.3% | 44,546人 | 受験者数一気に5千人減少 |
第47回・2015年度 (平成27年度) | 2.6% | 40,712人 | 過去最低の合格率 |
第48回・2016年度 (平成28年度) | 4.4% | 39,972人 | 受験者数4万人切る |
第49回・2017年度 (平成29年度) | 6.8% | 38,685人 | |
第50回・2018年度 (平成30年度) | 6.3% | 38,427人 | |
第51回・2019年度 (令和元年度) | 6.6% | 38,428人 | |
第52回・2020年度 (令和2年度) | 6.4% | 34,845人 | コロナ禍の影響もあり過去最低の受験者数 |
第53回・2021年度 (令和3年度) | 7.9% | 37,306人 | コロナ禍の中でも受験者数に回復傾向あり |
ここ数年合格率6%台で推移していましたが、今年は7.9%と8%に迫る水準となりました。
一時期(第47回、第48回)は、2.6%、4.4%と受験生の心をへし折るような低い合格率の時もありましたが、2014年度の9.3%を下回るとは言え、7.9%は過去10年の中では2番目に高い合格率となります。
(過去13年(2008年度)まで遡って見ても、今回の合格率を超えるのは、2014年度の9.3%と2010年度の8.6%の2年だけ)
ただ、相変わらず選択式の労一或いは社一はこれからも鬼門となりそうですね。1点以上での救済対象だと、2013年度の合格率5.4%の時以来ですから、今回はよほど難しかったことが伺えます。
合格者の職業別の割合、男女比は?
職業別の割合は会社員が60.4%、次いで無職10.3%、公務員7.8%、団体職員5.6%、自営業4.2%となっています。
前年の2020年度が、会社員58.4%、無職13.2%、公務員8.1%、自営業4.8%、団体職員4.0%ですから、そこからすると例年13%前後で推移していた無職の比率が今年は10.3%と減少しているのが特徴なのかもしれません。
とは言っても、相変わらず合格者の6割が「会社員」という結果に変わりはないようです。
(参考:ちなみに、今から15〜20年ぐらい前は会社員4割、無職3割と言った時代もありましたが、段々会社員の比率が高まっている傾向にあります)
男女別割合を見ると、男性61.7%、女性38.3%です。
前年が64%:36%、前々年が64.3%:女性35.7%ですから、わずかに男性の割合が減少していますが、概ね例年通りと言えそうです。それでも、行政書士や司法書士などの他資格の女性の割合が概ね20%台と言われているので、社会保険労務士試験の女性の受験比率は高いと言えるでしょう。
合格者の年齢別(世代別)の構成は?
年齢別の構成は、以下の通りです。
前年は30代と40代が30.1%と同率1位でしたが、今年は例年通り(?)、30代の35.6%、40代の28.5%を筆頭に、50代16.9%、20代12.8%、60代6.2%という形になってます。
合格者の年齢別構成 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
20歳代以下 | 8.2% | 12.3% | 12.8% |
30歳代 | 33.1% | 30.1% | 35.6% |
40歳代 | 31.5% | 30.1% | 28.5% |
50歳代 | 18.8% | 18.7% | 16.9% |
60歳代以上 | 8.4% | 8.8% | 6.2% |
細かな部分での変化としては、20代の年齢階層別に占める割合が増加していました。コロナ禍の影響もあってか若い人達(学生など)の中で、「手に職を」ではないですが、資格取得を目指す動きが少なからずあったのかもしれません(あくまで想像です)。
合格者の年齢階層別割合 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
24歳以下 | 1.0% | 1.8% | 2.2% |
25歳〜29歳 | 7.2% | 10.5% | 10.6% |
学生 | 0.5% | 1.0% | 1.1% |
ちなみに、2021年度の最年少合格者は20歳(前年度も20歳)、最年長合格者は73歳(前年度は78歳、前々年度は75歳)です。
(行政書士試験は年齢や学歴などの受験要件がないので、最年少合格者は15歳(2019年度)ということも起きます)
選択式・択一式の平均得点(過去5年分)
厚生労働省の発表によれば、2021年度第53回社会保険労務士試験の選択式・択一式の平均得点は以下の通りです。
【注意】
各回平均点の「太文字+下線」の部分は救済(補正)が入った科目です。
補正により、その科目は選択式なら2点以上(普通は3点以上)、択一式なら3点以上(普通は4点以上)で良いことになります。ただし、2021年度の「労務管理その他の労働に関する一般常識」に関しては1点以上となっています。
これまでの傾向から、択一式で救済が入ることは稀で、選択式の科目別の平均点が1点台から2点台前半の場合には救済措置が入る可能性が高いように見て取れます。(2018年度の労一の「2.3点」でも救済が入らない場合もあるので、一概には言えませんが…)
今回、残念ながら不合格だった方は、自分が他の受験生と比べてどの科目が取れていないのか、苦手にしているのかと言ったことの確認にも役立て欲しいと思います。[keikou]合格の秘訣は「みんなが取れている問題(科目)を取りこぼさないこと」です。
【選択式(平均点)】 | 2017年度 第49回 | 2018年度 第50回 | 2019年度 第51回 | 2020年度 第52回 | 2021年度 第53回 |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 3.8点 | 2.5点 | 3.4点 | 2.6点 | 3.3点 |
労働者災害補償保険法 | 3.3点 | 3.4点 | 3.9点 | 4.3点 | 3.3点 |
雇用保険法 | 2.3点 | 2.9点 | 3.5点 | 3.9点 | 2.8点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 2.2点 | 2.3点 | 2.5点 | 1.9点 | 1.5点 |
社会保険に関する一般常識 | 2.4点 | 2.1点 | 1.6点 | 2.1点 | 2.7点 |
健康保険法 | 1.9点 | 3.0点 | 2.8点 | 2.3点 | 3.0点 |
厚生年金保険法 | 2.6点 | 2.5点 | 2.8点 | 3.0点 | 2.7点 |
国民年金法 | 2.7点 | 1.8点 | 3.3点 | 2.5点 | 2.4点 |
合計 | 21.3点 | 20.5点 | 23.7点 | 22.7点 | 21.8点 |
合格基準点 | 24点以上 補正あり | 23点以上 補正あり | 26点以上 補正あり | 25点以上 補正あり | 24点以上 補正あり |
【択一式(平均点)】 | 第49回 | 第50回 | 第51回 | 第52回 | 第53回 |
労働基準法及び労働安全衛生法 | 4.9点 | 4.9点 | 4.7点 | 4.8点 | 4.9点 |
労働者災害補償保険法 | 4.6点 | 5.1点 | 5.0点 | 5.2点 | 4.5点 |
雇用保険法 | 4.8点 | 4.7点 | 4.2点 | 4.8点 | 4.3点 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 及び社会保険に関する一般常識 | 4.3点 | 3.7点 | 3.9点 | 4.2点 | 4.3点 |
健康保険法 | 4.8点 | 5.0点 | 3.9点 | 4.2点 | 4.6点 |
厚生年金保険法 | 3.7点 | 4.5点 | 4.8点 | 4.2点 | 4.6点 |
国民年金法 | 4.8点 | 4.1点 | 3.8点 | 4.1点 | 5.0点 |
合計(70点満点) | 31.9点 | 32.1点 | 30.2点 | 31.5点 | 32.3点 |
合格基準点 | 45点以上 補正あり | 45点以上 | 43点以上 | 44点以上 | 45点以上 |
まとめ
待ちに待った合格発表の日でしたが、受験生の皆さんの結果はいかがでしたでしょうか。
今年度は、選択式の2科目で合格基準点に補正が入り、特に労一と呼ばれる「労務管理その他の労働に関する一般常識」に関しては1点以上(通常は2点以上のことが多い)という珍しい救済条件でした。
救済のおかげもあって、合格率は7.9%と前年の6.4%よりも高くなりましたが、依然狭き門です。
前年に引き続き、今年(2021年)も新型コロナウィルスの感染状況が影響し、例年に比べて受験者数が減少していることも一つの特徴です。特に本試験(8月22日)のある8月に国内の新規感染者数が急増したこともあり、受験するか否かで悩まれた方も多かったのではないでしょうか。
そうした中、今年は合格率が上昇し、近年では多い2,937名という合格者が誕生しましたが、この数字こそが、やはりどんな環境(ex.コロナ禍)にあっても合格する方は合格するという証左とも言えます。そして、合格を掴むための最良の方法は、本試験当日に後悔しないように毎日コツコツと勉強するしかない、と私は思います。
今回は、労一の救済が入ったことで合格率7.9%(前年比+1.5%)と過去10年では2番目に高い合格率となりましたが、救済の入り方次第では、第47回、48回のような低合格率(2%や4%台)になった可能性もないとは言えませんので、「救済頼り」にならないよう、どんな問題が出題されても解けるように、自分だけは合格するんだという強い気持ちを持って勉強することが何よりの突破法だと思います。
(※労一の平均点は「1.5点」ですから、いずれにしろ調整が入ったとは思いますが…)
おまけ:社労士試験の勉強法について
社会保険労務士試験の勉強法等の詳細は、こちらの関連記事をご参照下さい。